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紅井良男の休日 # 6

☆サイドマン時代 1928

小稿#5まではベニーグッドマンの初期でも比較的入手し易い音源を紹介してきたが、今回からはレアな音源をピックアップして紹介してゆくことにした。
針音、ノイズが割と生々しく残るアメリカ・サンビーム社リリースのベニーグッドマンのクロノジカルシリーズは1972年昭和47年にはアナログBOXで最初の完成型をみた。
グッドマンのレコード記録を全て網羅するという偉業を成し遂げたのは、アランロバーツである。
このアナログシリーズを小生は神田神保町のトラッドジャズ専門店TONY RECORDSで初めて見つけて以来足繁く通い、当時の店主 西島経夫氏に様々な音源を紹介して頂いた。

この店は他のミュージシャンのレコードは多少歯抜けでもベニーグッドマンのクロノジカルシリーズだけは常に揃えてあるほど、西島さんのベニーグッドマンへの思い入れは深かった。
若き日にTONYさん詣でをして2階の狭い店内から帰ろうとすると太った西洋人が、…TONY SAN HOW I YOU! と言いながら入ってきて、鰻の寝床だった店の出入口をその西洋人に完全に塞がれてしまった小生はそれから更に1時間ほど軟禁状態になってしまった!
兎に角、海外のユーザーにも愛されていたトニーさんは大のスヌーピーファンでもあった。
現在の店主 真尾くんもトニーさんの亡くなる直前まで見舞っていた人だが、入院先の病室内も本人のたっての希望で、病室内にはスヌーピーの関連グッズが所狭しと並んでいたと言う。

本日はそんなTONYレコードで買ったベニーグッドマンのザ・レアBG (SB-112)の中から1928年昭和3年に録音された音源に絞ってお送りすることにしよう。

何せオリヂナル盤にはベニーグッドマンのベの字も入ってないものばかり。
仮に記録は全て網羅出来ても音源を記録通りに集めたのは本当に難作業であったと思う。
本日はそんな先達らにも敬意を表したいと思う。
まずはジョニーマービンと言う当時のアメリカでもジーンオースチンと人気を二分するほどの流行歌手、
そんな彼のレコードのバッキングにも参加してきっちりとソロも取れている、と言うことはベニーが既に楽界でもその実力が認められていたことの証左に他ならない。
本日お送りする音源は全て他人名義なのにその一曲一曲にベニーのソロが入っていることを予め言っておこう。
1曲目の♫エンジェル そして2曲目の♫マイペット
は共に当時のノベルティソングで特に1曲目の方は1950年代にもカバーされ時代を超えたスタンダードとなっている。
2曲目の方は白人モダニストの創始者と目されるビックスバイダーベックの名高いレコードでも知られている。
まずは2曲続けてどうぞ❗️

https://youtu.be/v3mYbALF1WI

ジョニーマービンの人気曲は↑ココをタップする

ただいまのジョニーマービンの録音から約半年後の1928年10月25日にニューヨークで録音されたイパナトラバドウズ名義の一曲♫ドゥユー?ザッツオーライウォントトゥノウ にはベニーのほか後年のスイングブームでベニーと人気を二分することになるトロンボーンの名手、トミードーシーも参加、後半でトミーらしいフラットなソロを吹いている。
早速聴いてみよう。

https://youtu.be/ZxsOV5HVvIc

イパナ・トラバドウズの演奏は↑ココをタップする

次の2曲は前曲の翌月11月に録音されたが日にちのクレジットが記録されていなかったらしく同日録音かどうかまでは不明である。
しかしバンド名は別だが同一のバンドであることは確かなようだ。
1曲目はランバージャックス、2曲目がミルスミュージカルクラウン名義だが演奏しているのは紛れもなくベニーグッドマン達、旧ベンポラック楽団のメンバーである。
前年の1927年に一旦ベンポラックの元を去った腕利きミュージシャン達は一年経っても都合の良いバンドにはあり付いて居なかった。
本日のおびただしい楽団名はオーナーの都合で短期のダンスバンドのサウンドをレコードで出す為のものであり、これらのレコードはダンスに興じる為の間に合わせのアイテムに過ぎなかった。
ベニー達はそんな自分達の立ち位置も折込済みでショートのレコーディングをこなした。
基本は4拍子のリズム音楽でたまにジャズ的感興が昂った気の利いたソロを取っても狭い業界内のほんのひと握りの人にしか評価されない侘しさを、この頃から頭角を現わしていたベニー達はイヤというほど見に染みていたに違いない。
次の2曲はそんな彼らの鬱憤を晴らすような見事なジャズナンバーである。
体裁はダンスミュージックだが途中のベニーのソロや多分ジミーマクパートランドだと思われるミュートを掛けたバッバーマイリー張りの黒っぽいソロ、そしてその直後にはアルハリスのオープンでのソロが日頃の鬱憤を爆発させているかのような明るく乾いたソロで鮮やかだ。
ラリービンヨンのテナーのソロは或いはバドフリーマンでは?とアランロバーツは注釈を入れていたが、たしかにバドの様なビブラートの充分効いたソロである。
2曲目の♫ベイビー の真ん中で聴こえるトランペットは前曲のミュート演奏とは比べ物にならないほどのスマートなもので同時代のマニークラインの様な技法である。
ジミーが1曲目はバッバーマイリー風、2曲目はマニークライン風、と洒落込んだのかも知れない。
お楽しみください。

https://youtu.be/hgyWdvmIZT8

♫ウーピーストンプ ♫ベイビー は↑ココをタップする

同じ11月の次の2曲は22日に録音された事が分かっている。
全ての録音がやさぐれ気分だった訳ではなくたまにはこの盤のような人気歌手のバッキングもあった。
今度はアネットハンショウと言う所謂、トーチシンガーの1人である。
甘いラヴソングを扇情的に表現する女性シンガーでありその代表格は1950年代にドリスデイ主演によって映画化された映画「情欲の悪魔」の主人公だったルースエッティングで有ろう。
実は、ベニーはこの人のバッキングもこなしておりそれはそのドリスデイの映画でもカバーされていた♫10セントでひと踊り と言う実に迫力があるナンバーだったが、そのオリヂナル盤でベニーがクラリネットで入っている。
1930年のレコードなのでそれはまた次回に持ち越すが、本日はそんなトーチシンガーの1人、アネットハンショウの後にマリリンモンローが歌って未だにCMでも使用されている不朽の名曲♫あなたに愛されたいのに
のオリヂナル盤ともう一曲♫イズ ゼア エニシング ロング イズ ザット? 此方も聴きものである。

https://youtu.be/3FIdV662BBM

アネットハンショウは↑ココをタップする

再び同日録音で別名義のバンドパターンである。
クリスマスイブイブの日に録音されたのは前出のグループ名義ランバージャックスが1曲目、曲は♫ブルーリトルユー 後半僅かながらベニーのアルトサックスで4小節、ジミーマクパートランドのオープンコルネットで4小節と非常に短いが、逆にジャズファンはいつ出るか?いつ出るか?と言うスリルを味わえる。
2曲目の♫ハングリー フォーラブ はキャロライナーズ名義であるが、1曲目で出番の無かった名手ジャックT ガーデンがやはり後半の4小節とベニーのクラリネットで4小節といった具合である。

https://youtu.be/N208T2GAk7I

♫ブルーリトルユー と♫ハングリーフォーユー は
↑ココをタップする

本日の大ラスはやはりベニーグッドマンソロを、それもチョット変わったフルートのソロである。
これは中々無いと思う。
珍盤と言ってもいいと思う。
1928年12月26日の録音からどうぞ。

最後までお付き合い下さり有難う存知ました。

次回もお楽しみに(^^)/~~~

https://youtu.be/ZJt4MVC6J1s


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