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アイアンボスを飲んだら史上最強になった話

西暦2020年3月17日、ウェルネス前の自販機にヤツは突如現れた。
250ml、うっすら割高感を残した140円。
アイアンボス、サントリーは彼をそう呼ぶ。

「強くなりたい。いまちょっとだけ。」
そう思った私はポケットから140円を素早く取り出し自販機にぶち込んだ。
その時、私の入金は音を置き去りにした。
その様子を、タバコをふかしながら横目で見ていた男が呟く。
「おそろしく速い入金 俺でなきゃ見逃しちゃうね」
私は無視した。

" Stay home "
私の中の都知事が警鐘を鳴らす。
" Yes , your highness "
本能(都知事)の声に従う事にした。
私はアイアンボスを慎重にエコバッグに入れるとウェルネスを後にした。

家の扉を開けるや否や丁寧に手洗いうがいをすませ、エコバッグからヤツを取り出す。
「もう我慢できない。」
思わず生唾を飲み込む。
私は今まで長男だから我慢できたけど次男だった我慢できなかった。
しかし、その我慢もいよいよ限界だ。
プルタブに指を引っ掛けた後は速かった。
プシュッという音がまだ消えいらぬ内に一気にヤツを胃に流し込む!

刹那、1000mgのアルギニンの暴力が私の体を貪ろうとする。
自我とアルギニンの激しい攻防の中!次第に虚ろになる意識の中!私は走馬灯を見ていたーー

最強に憧れ電気の紐にボクシングする私
赤い髪の人から麦わら帽子を貰った私
エクスカリバーを岩から引き抜く私
鷲巣麻雀を挑み血を抜かれ戦う私


私!

ハッと目を覚ました時、私は完成していた。
" I'll be back "
妻にそう告げる。
私は無視された。
ツラい。
アイアンボス化しても心は生身だという事を気付かされた。
力試しに空になったアイアンボスを握ってみる。
すると、まるでアルミ缶のようにいとも容易く握り潰せた。
かくして私は、史上最強の1歩を踏み出したのだった。
P.S
アイアンボスはスチールでは無くアルミ缶でした。

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