夢女子絵師と夢対応男性Vtuberが出会い、去り、あとには荒野が残った

夢小説というジャンルがその昔あった。今もあるのかもしれないが、あまり調べに行きたくない。ウェブサイトがJavascriptにだいぶん頼って動いていたころ、かなり流行っていたように思われる。あのころはなりきりチャットやオリジナルキャラ設定公開など、痛々しくもみずみずしい自己表現がよく見られた。みんな夢想の世界でたった一人の特別な自分になりたかったのだ。

さて、問題の夢小説とは「あこがれの2次元キャラと『私自身』もしくは『私のオリジナルキャラ』の恋を描いた小説」と定義されている。トップページにアクセスすると、「あなたの名前を入力してください」と出る。そこでわたしが「ゆうか」と入力したとする。名は自動入力で小説の要所にはめ込まれ、ヒロインゆうかと大好きな架空の男性キャラとの、次元を越えたラブストーリーが語られるのだ(おお、恐ろしい。ーわたしは架空の異性に「ハマる」という経験がなかったため、こんな感想を持ってしまう自由を許してほしい)。物語に介入するどころかそのコアとなり、「私」と「彼」以外を排してしまうこの趣味嗜好は、こっそりと楽しまれるものであったはずだ。夢小説を愛する女性は、「夢女子」、または「夢女」と呼ばれた。この記事では以下「夢女」、もしくは架空の夢女キャラとして「夢子」と表記することにする。

ここから先は

9,204字 / 2画像

¥ 500

ありがとうございます サポートへのメッセージには個別にお返事を差し上げています でも Twitchをフォローしていただけるのがサポートとしてはいちばんうれしいです https://www.twitch.tv/rurune お金は大事にとっておいてください