【歌詞批評】 0と1の中で続く葛藤: acidman『シンプルストーリー』/尾崎豊『僕が僕であるために』

 Acidmanの「シンプルストーリー」、尾崎豊「僕が僕であるために」の両曲は、共に夢における葛藤を鮮やかに描く傑作である。

 「シンプルストーリー」では、結果が出るか否かの不安感、すなわち「0と1」の間で揺れる感情の緊張感を見事に描いている。

 「透明度落ちる夜空に怯えていたから」

 不確実性と恐怖の感情を象徴している。
 「透明度落ちる夜空」は未知への恐怖を示し、その暗闇の中に直面する不確実性を浮き彫りにする。


 「「未だ花は咲いていますか」と
「その手で抱いていますか」と」


 希望と絶望の狭間で揺れる人間の状況を表している。花は希望や夢を象徴し、その花が未だ咲いているかという問いは、希望や夢がまだあるのかを確認する。「その手で抱いていますか」という問いは、それらの希望や夢を守り続ける力や意志があるのか、という問いを投げかけている。

 「0と1の中で続くストーリー」は、成功と失敗の二項対立の中で生きていることを示す。
 これは夢は結果や評価に縛られ、その成功(1)または失敗(0)として定義されるというメッセージを含んでいる。


「行こう、次の世界へ 僕は爪を剥がして空を掴んで」


 夢の不確実性、恐怖心と闘いながらも、自己の可能性と希望を信じて前進する決意を描く。
 「爪を剥がして空を掴む」という強烈なビジュアルは、目標達成のための痛みや困難さを示し、それでも新しい世界へと進む決意を強く表現している。

 「僕が僕であるために」においても、結果が出し続けなければならないというプレッシャーを見事に描かれている。

「僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない」

 「シンプルストーリー」における「0と1の中で続くストーリー」のように、一人の人間が「自分らしさ」を保持して社会で生き続けるためには、勝ち続けること、つまり成功することが必要であるという視点である。

「君が君であるために勝ち続けなきゃならない」

 他者も自分と同じように「その人らしさ」を保持して生き続ける必要を表現している。
 これは、「シンプルストーリー」の「その手で抱いていますか」と同じ意味であると理解できる。

 「シンプルストーリー」「僕が僕であるために」の両曲ともに、夢の不確実性における内面的な葛藤を見事に描く優れた作品である。

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