【歌詞批評】本当の言葉と他者との関係における葛藤: メレンゲ『タイムマシーンについて』/Mr.Children『口がすべって』

 メレンゲの「タイムマシーンについて」とMr.Childrenの「口がすべって」の両曲は、本心と他者との関係における葛藤について巧みに描く傑作である。

「ボクの「本当の言葉」は
たぶん人を嫌な気持ちにする
でも「嘘の言葉」で
君や誰かを頷かせるのは嫌だ」
(メレンゲ『タイムマシーンについて』)

 この歌詞は、自己表現と対人関係の間の緊張を描いている。この行間には、自身の感情を正直に表現することが他者を不快にするかもしれないという恐怖がある。
 しかし、その一方で、自身の真実を犠牲にして他者を満足させる偽りの言葉を使うことを嫌う。これは誠実さと他者との調和との間で揺れ動く人間の内面の葛藤を的確に捉えている。


 一方、

「でも間違ってないから 謝りたくなかった」
(Mr.Children『口がすべって』)

 こちらは、自己正当化と他者との関係の矛盾を強調している。自身の考えが正しいと信じ、それを保つために他者との対立を引き受けることを描く。
 しかし、その行動が他者を傷つける可能性があることを理解しつつも、それに直面する強さとプライドを描き出している。


 両曲は、本当の言葉と他者との関係における葛藤を鋭く掘り下げている。自己と他者との間に存在する微妙なバランスと、言葉によるコミュニケーションの複雑さを見事に描く傑作である。

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