【歌詞批評】何の事情も知らない人からの優しい言葉: BUMP OF CHICKEN『ベル』

 BUMP OF CHICKENの「ベル」の歌詞は、傑作である。
 何の事情も知らない人からの優しい言葉が、孤独感を一時的に和らげる力を見事に描いているからである。

「重い体を 最終列車に乗せて」
「疲れた心を 毛布で隠して」

 具体的に描かれた日常生活の一部を通じて、孤独や疲れを感じている主人公の感情が示されている。

「話したい事は 山程あるけど
なかなか言葉になっちゃくれないよ」

 そんな感情をうまく言語化できない無力感が見てとれる。


「僕の事なんか ひとつも知らないくせに
僕の事なんか 明日は 忘れるくせに
そのひとことが 温かかった」


 事情を完全に理解していない人からであっても優しい言葉に触れることで、安心感や救いを得る経験が描かれている。
 これは本質的な理解を求める深い願望が満たされなくとも、一時的な優しさを見つけることで孤独感が和らぐ効果があるということを示している。

 「ベル」は、何の事情も知らない人からの優しい言葉の力を巧みに描いているという点において優れた作品である。

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