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【文学】理不尽な愛の選択: 平野啓一郎『かたちだけの愛』

「縦から見ても、横から見ても、自分より患劣としか思えない男を、好きになった相手が選ぶというのは、幾らでもあることだった。
本当に愛されるのはこちらなのだと、万人が同意してくれたとしても、当の相手が、それでもあっちの方がいいと言うのなら、理屈を説こうが、実利を説こうが、誠意を説こうが無駄な話だった。」

 平野啓一郎「かたちだけの愛」のこの一節は、愛と理性の間にある断絶を巧みに表現している。愛はしば

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