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古典の中の「ひと」

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歴史物語や日記などの古典作品には、歴史上の人物たちの素顔が生き生きと描かれています。 その中でとくに面白いと思ったものをより抜いてマンガ化しました。
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2023年6月の記事一覧

大貴族の庶子に転生したので蓄財と趣味を極めてみた【橘俊綱の話】

藤原頼通(道長の嫡子)の次男、橘俊綱(たちばな の としつな)の話。 『今鏡』掲載のエピソードが元になっています。 俊綱の前世がお坊さんで、転生して生まれ変わったという話は『今鏡』以外の古典にも取り上げられています。 そんな話がまことしやかにささやかれるくらい、俊綱が印象的な存在だったということでしょうか。 『今鏡』は俊綱の境遇に対して、わりと同情的な書き方をしています。 支配者層の頂点にいる頼通の子として生まれたにもかかわらず、俊綱は他家に養子に出されてしまい、大臣や納

王朝ご長寿列伝【藤原彰子、佐理女の話など】

87歳まで生きた藤原彰子昔の人は現在よりも寿命が短かったといわれますが、平均寿命についてはそのとおりであっても、長生きする人も当然いました。 平安時代、『源氏物語』の作者・紫式部が仕えた上東門院(藤原道長の娘・彰子。一条天皇中宮)は90歳近くまで長生きしました。 後の人からは「めったにない幸運の人だが、あまりにも長生きをしすぎたのが玉に瑕(きず)だった」などと言われたり、彰子自身も子に先立たれた時に、「『長生きしすぎたからこんな憂き目にあった』と周りから思われているだろうこ