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長崎にて

本当にあった不可思議な話シリーズも、今回が最後となります。

小学校の図書室で起きた奇妙な体験、そして『お花畑の次郎さん』から教えられたことを、十年経って見も知らない人から同じように言われる。
こんな体験をしていてもごく普通に生活してきました。

ずばりと言い当てた霊媒師?に心酔したり、スピリチュアルなことに傾倒していくこともなく、年を重ねるごとに少しずつ金縛りも減っていきました。

あれほど多く体験していたデジャブも数年に一度あるかないか……そんな頃にまた不思議な体験をしたのです。



両親が聞いてきた『守護霊が強い』という話から十数年、結婚して新しい生活を始めることになりました。
式は東京で挙げたため、義父の出身地である長崎の親族へお披露目の場を設けることとなり、初めて長崎を訪れたときのことです。


お披露目は地元の伝統料理、卓袱(しっぽく)料理で有名な料亭をお借りして行いました。
その歴史は古く、宴を開いた大広間には坂本龍馬が付けたといわれている刀傷が床柱に残っています。

異変は建物が見えたあたりから始まっていました

近づくにつれ「うわっ、ヤバイ……」といった思いが湧きあがってきます。
金縛りが起きる前と同じように。

二十代のころ、家に帰って部屋へ入ると「あ、今日は来るぞ」という何とも言えない不思議な感覚を覚えたことが何度もありました。
聞こえない音の圧を受けるというか、部屋に入った瞬間、いつもと空気が違うのが分かるのです。
その夜は決まって金縛りが起きました。


もうこんな感覚はしばらくなかったのに、しかも自分の部屋以外の場所で感じたのは初めてでした。
でも引き返すわけにはいきません。
親類たちが待つ場に義父母と妻とともに顔を出したときには、気分が悪く脂汗をかいていました


恐怖、は感じなかったけれどとにかく気持ちが悪い。

座っている頭の上から、いくつもの圧を受けて頭が揺さぶられる感じ。

後になって思えば、決して攻撃的ではなく、むしろ友好的でざわつきながらはしゃいでいるような……。

ただ受け手の私がそれに耐えられなかったのかと。


はじめのうちは何とか歓談にも応えていたのですが、途中からはどうしようもなくなってきました。
私の様子がおかしいことに妻も気づいたようなのでざっくりと話し、別室で横になって休ませてもらいました。
彼女には「霊感がある」程度のことは伝えてあったので変に思うこともなく、飛行機酔いしたみたいでとお茶を濁してくれていたそうです。


しばらく休んでみたものの、広間へ戻るとやはり気持ちが悪い
そこで親戚の子たちを連れて庭に出てみました。
外に出るとかなり収まって楽に過ごせます
結局、その後は宴が終わるころまで庭で過ごさせてもらいました。

理由を知らない義父母や親類たちを前に、うまくその場を取り繕ってくれた妻には感謝です。


全て終わって料亭を離れると、先ほどまでの不快な思いが嘘のように何もなくなっていました



二十歳の頃に聞いた、「守護霊が強いから地縛霊などを引きつけてしまう」という話を思い出したのは言うまでもありません。
ただ残念だったのは、有名な卓袱料理にほとんど手を付けられなかったこと。
気分が良くなったのと同時に、お腹が空いたことを実感していました。


このような体験は後にも先にもこれ一度きり。
今では金縛りも忘れたころに起きる程度で、予感は全くなくなってしまいました。

 
年齢により感覚が衰えたのか、それともそもそもが妄想だったのか。
答えを知るのはいつのことになるのでしょう。

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