見出し画像

トラウマ関連の読書記録⑧「トラウマ治療の前準備的なワークブック」

非常に珍しい「本物の」ワークブック

トラウマ関連の本を読むと、本の中に別の本が紹介されていたり、訳者が同じ別の本が気になったりと、数珠つなぎで読みたい本がどんどん出てくる。そんな感じで本能のままに本を読み漁ってきたが、ジェニーナ・フィッシャー博士によるトラウマ回復に向けたワークブックが出ていることに気づいた。

フィッシャー博士は、ベッセル・ヴァン・デア・コーク博士やパット・オグデン博士(センサリーモーターサイコセラピーの提唱者)と交流があり、巻頭の賛辞にも2人が言葉を寄せている。というか、トラウマ治療分野のコミュニティで、皆さんそれぞれつながっているのだなと思った。

ちなみにフィッシャー博士の本は、前にこちらを読んだ。


このワークブックは、当事者とセラピスト両方へ向けて書いたものになっている。セラピストがセラピーの際にクライアントと共にこのワークブックを使いながら進めるのもアリだし、当事者が1人で読み進めるのもアリだと書いてある。

ただし。
これを読んだだけで回復できるということではない。当然だけど。そんな簡単なものなら、みんなこのワークブックを使えば解決してしまう。それについてはフィッシャー博士もワークブックの中で書いている。

このワークブックは「トラウマとその身体や脳への影響についての最新の理論を、セラピストとサバイバーにわかりやすく説明するための本です」とある。

トラウマからの回復には、心理教育が欠かせない。なぜ自分はこんな風に感情に圧倒されているのか。苦しいのか。私がおかしいのではないか。私がダメな人間だから悪いことばかり起きてしまうのではないか。そういった考えを「違うんだ、私は何も悪くなかった」と気づいて自分の内面に好奇心を持つようにしていく必要がある。
このワークブックはそういった心理教育の役目を果たしてくれると思う。

大きさはA4で、薄い。図も使われていて、章ごとにワークがある。1日1章で8日間。もっとゆっくりでもいいと思う。
フィッシャー博士も書いているけれど、トラウマ治療を受ける前準備として読むのもとてもいいと思う。

とにかくほぼ全部載っている

さすがとしか言いようがないが、トラウマの知識がわかりやすく網羅してある。
私が読んだ限りで書いてあるとわかったのはこんな感じ。

・トラウマとトリガー
・脳の仕組み
・神経系の仕組み(ポリヴェーガル理論)
・耐性領域(耐性の窓)
・自己調整
・気づきの脳とコーピング
・愛着
・断片化と解離
・内的家族システム療法(パーツワーク)
・ヴァン・デア・コーク博士による「トラウマ回復のプロセス」
・自由への4つのステップ
・ジュディス・ハーマン博士による「トラウマ治療の段階」
などなど。

読み進めると、自分に必要なものがなんとなくわかるようになる。私にはアルコールや薬への依存や自己破壊行為は無いが、耐性領域を広げたいとか、愛着の部分にもっと注目したいとか。ただ、自分自身で見てもわからない部分も多いので、これだけで決めつけないようにはしたい。


本を読み漁る私への言葉


ワークブックの最初に、使い方についての提案が書いてある。そこにこの本はゆっくり読んでください、とあるのだが、その後に続く言葉が私を刺した。
「急いで読まなければならないと焦りを感じるのは、おそらくトラウマが関係しているのだと考えてください。」

…まさにそれだ。
私がこうやって本を読み漁るのは、読みたいし知りたいという知識欲と好奇心もあるし、突っ走る性格というか特性もあると自覚しているし、それと変な言い方ではあるけれど「読む能力があるから読んでいる」。

ただ、それに加えて「読まなきゃ」となっている面もある。どこに向かっているのかは自分でもはっきりしないが、自分を少しでもいい方向に進ませたいと切実に思っているからだ。
いいことのように思えるが、それで自分を縛ったり自分をせき立てたりしているのを自覚している。この辺りはトラウマが関係しているのだろう。
そろそろ読みたいと思うトラウマ関連の本が尽きてきたぐらいには読みまくっているし、いい加減自分をせき立てない、追い詰めないことを優先していかなくては。

で、私にはどんな意味があったのか

このワークブック、内容的にはほぼ私は知っていることが書いてあった。でも読まなければよかったとは思っていない。

ワークで自分のこととして考え気づくことができるのが非常によかった。
「トラウマ的アタッチメントのパターン」というチェックリストや、そのパターンを変えていくとしたら、というワークや、自分の回復段階を知るワーク、パーツについて理解を深めるワークなど、「あーそうか私はこういうところあったな」「パーツの言葉で話すってこういうことか、これだと自分は巻き込まれないで気づくことができるな」というのを実践しながら理解できたように思う。

あと、しつこいけど本当によくまとまっている。このワークブックをまず読んで、気になることについてはそれに関する本で深く掘っていくというのも面白そうだなと思った。私はパーツワークがやはり気になるので、もっと知りたい。

あとは、トラウマ関連の本ではどれもそうなのだけど、本当に優しいのだ、口調が。寄り添うってこういうことかといちいち気付かされる。泣いてしまうこともある。読むたびに癒され、自分自身にも思いやりを向けることができる感じがする。

数珠繋ぎの偶然でこの本に出会えてよかったと思えたワークブックだった。おすすめです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?