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トラウマ関連の読書記録㉔「パーソナリティ障害」

ちょっと毛色が違う本だけど

今、職場である案件の調査チームに入っており、その関係者の中心人物に誰がどう見てもバリバリに自己愛の強い人がいる。私が直接関わる訳でも無いし他人事ではあるのだけど、いちいちびっくりするような言動をするので、興味が湧いてこの本を買ってみた。

パーソナリティ障害になる原因として挙げられている中に、幼少期からの親との関係やトラウマについても言及がある。各パーソナリティ障害の特徴を読むと、複雑性PTSDの症状にも被っているように思える。結局、幼少期のトラウマや保護者との関係の結果生じたものなので、視点や症状の表れ方、呼び方が違うだけなのかもしれないと思った。


独りよがりな他者との関係

トラウマが無い人はいないように、どんな人でもその人の性格の特徴や傾向がある。何も無い無色透明な人なんてありえない。そして「この人はこれ」と区別などもできる訳もなく、スペクトラム状になっている中でどこに位置しているかということなのだと思う。実際複数のパーソナリティ障害が併存している人も多いとある。

パーソナリティは「対人関係のパターンや生き方そのものとして現れる」が、パーソナリティ障害は「偏った考え方や行動パターンのため、家庭生活や社会生活に支障をきたした状態」とある。
「思い通りにならない他者を、別の意思と感情を持った存在として認められない」
「その人の心に、本来の意味での他者との関係が育っていないため、自分の思い通りになる存在だけを愛し、思い通りにならない存在は、攻撃の対象になってしまう」
「過剰な自分への期待と、それゆえに生じる傷つきやすさ」

とにかく自分、自分、自分になっている状態なのだ。それは自分に対する思いやりとか、そういったことからは一番遠い状態だ。自分に強いこだわりを持ち、自分に囚われていて、自分と言う強迫観念から逃れられない状態だ。そしてとても傷つきやすく、それを防衛するための言動でますます自分も周囲も苦しくなっていく。辛い。

ちなみに「パーソナリティ障害かどうかのポイントは、本人あるいは周囲が、そうした偏った考え方や行動でかなり困っているかどうか」ということらしい。ただ、「本人は案外困っていないことも少なくない」とあるのだけど、やはり自覚が無い人の方が多いのだろうなと想像がつく。
「パーソナリティ障害とは、バランスの問題であり、ある傾向が極端になることに問題がある」


ある意味子どものままで生きている

その人が「傷つきやすい自己愛に由来する生きづらさ」を補うための適応戦略としてのパーソナリティ障害であるとも言える、とある。
「こうした誤った生存戦略は、まだ幼かった頃、満たされなかった欲求を、紛らわすために不適切にも身につけてしまったものなのである」
「パーソナリティ障害の人は、たいていどこか子供っぽい印象を与えることが多い。それは、彼らが子供時代の課題を乗り越えておらず、大人になっても、子供のような行動をとってしまうためである。人はそれぞれの段階の欲求を十分に満たし、成し遂げるべき課題を達成して、はじめて次の段階に進めるのである」

第二章ではパーソナリティ障害の原因について、幼少期のアタッチメントや親との関係性(溺愛されすぎることも好ましくない影響を与えるとある)、虐待などによる心的外傷についても触れている。親との関係は本当に大事なのだとしみじみ思う。
「こうした間違った子育てが起こりやすいのは、親や保護者の側に、傷つきや強い不安がある場合が多く、余計子育てをバランスの悪いものにする」


10種類もあるんですか

この本の中で解説されているパーソナリティ障害は10種類だ。そんなにあるのか。初めて見る名前もあった。書き留めておく。

境界性パーソナリティ障害:
対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性の広範な様式
自殺企図とそれによる心理的コントロール、親に対する深いこだわり

自己愛性パーソナリティ障害:
誇大性(空想または行動における)、賞賛されたいという欲求、共感の欠如の広範な様式
他人の気持ちに無関心で乏しい共感性しか持たない、肥大した自己愛性

演技性パーソナリティ障害:
過度な情緒性と人の注意を引こうとする広範な様式
他人を魅了しなければ自分が無価値になるという思い込み

反社会性パーソナリティ障害:
他人の権利を無視し侵害する広範な様式
他者に対する冷酷な搾取、社会的な規範や通念を軽視したり敵視する

妄想性パーソナリティ障害:
他人の動機を悪意のあるものと解釈するといった、広範な不信と疑い深さ
人を心から信じることができない、過度な秘密主義

失調型パーソナリティ障害:
親密な関係では急に気楽でいられなくなること、そうした関係を形成する能力が足りないこと、および認知的または知覚的歪曲と行動の奇妙さのあることの目立った、社会的および対人関係的な欠陥の広範な様式
遺伝的要因の関与が比較的大きい、浮世離れした雰囲気

シゾイドパーソナリティ障害:
社会的関係からの遊離、対人関係状況での感情表現の範囲の限定などの広範な様式
対人接触を求めない、自我の殻がデリケート

回避性パーソナリティ障害:
社会的制止、不全感、および否定的評価に対する過敏性の広範な様式
失敗や傷つくことを極度に怖れる、何らかのトラウマ体験が原因

依存性パーソナリティ障害:
面倒をみてもらいたいという広範で過剰な欲求があり、そのために従属的でしがみつく行動をとり、分離に対する不安を感じる
自分の主体性を放棄し他者に委ねている、赤ん坊型(受動的な依存)と献身型(能動的な依存)、孤独が苦手、ノーと言えない

強迫性パーソナリティ障害:
秩序、完全主義、精神および対人関係の統一性にとらわれ、柔軟性、開放性、効率性が犠牲にされる広範な様式
絶えず何かしていないといられない、リラックスが苦手、こだわりに対して融通が利かない、枠に囚われがち

どれもこれも度を超すと非常に厄介だし生きづらいだろうという感じだ。有名人を事例として紹介しており、それぞれの特徴の説明が分かりやすく「あーそういう人いるわ」「私にもそういうところあるわ」「これはしんどい」といちいち膝を打った。

本の中にもあったが、強迫性パーソナリティ障害の親の子育ての結果として子どもが回避性パーソナリティ障害になるというのは、巷にあふれかえっているように思う。2つや3つのパーソナリティ障害が併存するというのもわかるし(特に自己愛性と演技性はかぶりそうな感じがする)、これは全部「どうにかして生き延びよう」と(無意識に)頑張った結果なのだと思うと切ない。


巻末には自己診断シート

そして最後に自己診断シートが付いていたのでやってみた。今の私は全体的に得点が低くどのパーソナリティ障害の判定基準にも引っかからなかった。トラウマ治療前だったらどうだっただろう。

引っ掛かりはしなかったものの点数が一番高かったのは、シゾイドパーソナリティ障害であった。1人の行動が好きとか他人が気にならないとか、そういう部分なので納得した。私は1人が好きだ。でもシゾイドではないように思う。

おかげさまで、件の職場の自己愛強力さんに対する解像度が上がった。人様のパーソナリティのことを勝手にあれこれ判断するのは気が引けるが、周囲に多大な迷惑と被害を生んでいるので仕方ない。まさに「性格ではない、症状なのだ」という感じがする。その人が怒って叫んでいる時など、小さな子どもみたいだなと思っていたのだけど、あながち間違っていなかったのだな。この案件を無事に終えて、温泉でも行ってのんびりしたい。








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