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トラウマ関連の読書記録⑤「勇気とは、絶望していないことではなく、むしろ絶望しながらも前に進む力である」

とても分かりやすい実践ガイド

前回に引き続き、複雑性PTSDについての本である。回復を目指す人に向けて書かれたこちらの本を読んだ。

前回の④で読んだ本と内容的にはほぼ同じことが書いてある。どちらかだけにしようかと迷ったのだが、どちらもレビューが良いので両方読んでみることにした。

こちらの著者はアリエル・シュワルツ博士。この方もトラウマ治療の専門家である。シュワルツ博士はソマティック(身体的な)・アプローチやマインドフルネスを基本として臨床を行っている。

この本も「当事者向けの実践ガイド」になっていて、複雑性PTSDについての心理教育や症状、回復に向けての段階が、簡単な事例と共に順を追って書かれている。

まあとにかくわかりやすい、読みやすい。フォントや紙質が個人的に好みのものだというのもあるが、それ以上に混乱しがちな当事者に向けて、順序立てて読みやすい構成にしてあると思う。


親の役割とは

この中にも自分のことを否定する「批判者」や、恥の感情、自分への思いやり(コンパッション)を持つことなどが書いてある。
重要なこととして、やはり回復には時間がかかるので、焦らずがっかりしないでねということ、そして専門のセラピストの力を借りてほしいということが重ねて書いてあった。

それから、感情を受け入れること。
幼少期のトラウマがある人は、親が感情的に圧倒されていることが多い。そうすると、感情をコントロールする方法を親から学べない。ということは、社会的・感情的知性が発達しないままになっているということになる。
そして大人になっても、感情が爆発したり、逆に感じないように切り離したりすることを続ける。
こちらの本には「耐性の窓」についても解説があった。

「親の仕事とは、子どもが十分に安全を感じられ、不快な感情を表せるようにすることです。」
この文が刺さる。これって、世の中の親でできている人の方が少ないのではないか?

私は最近、子どもの頃の自分の気持ち(喪失感や絶望感)を感じて、子どもの自分に対して悲しくてたまらないのだけど、それと半年ぐらい前までの「過去の出来事で辛いことがあったので涙が出る」のと、悲しみの種類は違うとはっきりわかるのだけど、その答えがこの本にあった。
「悲しみの中に沈んで自己憐憫に浸ることと、悲しみを十分に感じることは異なります。」
子どもの自分が悲しんでいたことに対して、思いやりを持っているという感覚なのだと気づいた。


身体的な感覚とマインドフルネス

トラウマ治療では、身体的な感覚を重視する。
この本にも、呼吸法や身体の部位に注目することなどがセルフケアの方法として載っている。
そして、またもやマインドフルネスだ。自分の感情や身体の状態に意識を向けてじっくりと感じることは本当に大事なことなのだ。

今思うと、こうやって取り組む前の私は自分がどんな状態なのかを全く気にも留めていなかった。それよりも周りのことばかりが気になっていたなあとしみじみと思い出す。辛かった。もうあんなのには戻りたくない。


自分1人ではやはり厳しい

この本は本当に読みやすく、当事者向けの他の本と同じように本当に思いやりに溢れた文体で優しさが沁みる。あっという間に読み終わった。

でも、この本の全体の過程は、おそらく年単位で取り組むものだと思う(著者も時間がかかりますと何度も書いている)。
私としては、この本を手元に置き、何度も気になる箇所を読み返したりセルフケアをやったりしつつ、この内容をトラウマ治療専門のセラピストと話したりするという方法がベストだろうと思う
(もちろん、それは④の本についてもそう思っている)。

読んだだけでは「そっか、そうかもしれない」という自覚はできても、そこから回復に自力で取り組むのは厳しいと感じる(でも自覚だけでもできたら、それだけで回復への道をだいぶ進んだことになると思う)。

ちなみに表題にしたのは、この本の中で引用されていた、心理学者のロロ・メイ博士の言葉だ。
とても感銘を受けたので、使わせていただいた。


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