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トラウマ治療について⑮「安心したい」

周りに安心を求める以外にできること

「安心したい」というのは、どんな人でも切実に思っていることだと思う。どうなったら安心なのか?配偶者が優しくて話を聞いてくれることなのか、子どもがすくすく育っていい学校に行って頑張ってくれることなのか、お金がたくさんあることなのか。

否、である。
自分の内側に安心感が無く、安心させてほしいと周りに求めているうちは安心できない。人生なんて何が起こるかわからない。そのたびに自分の安心感が乱高下して振り回されるのは真っ平御免だ。私はこれまでそうやって生きてきたのだから、もうここで止めるのだ。

その「安心」はどうやったらできるのかというのが、この本のテーマになっている。自分の内側で安心を感じる仕組みと、そのためのワークがたくさん載っている。著者はこれまでに読んだトラウマ関連の本の訳者として何回も名前をお見かけした浅井咲子さんだ。


「安心」とは

同じことが起きても、ドーンとしていられる人と心身のバランスを崩すほどに振り回される人がいる。傍目には満ち足りた生活に見えていても、ずっと不安で苦しい人もいる。外部の状況には「絶対こうなったら安心」など無いのだ。それは、私自身がこの1年で嫌というほど実感してきた。

「安心」について、こう書いてある。
「そもそも個人の主観に基づく、人との関係性や環境への信頼感覚です。あくまでも感覚的なもので、客観的に外側の条件で示される『安全』とは異なります。」

そして続けてこれである。ドーン。
「『安心』を神経の観点から言うと、身体の内部の感覚である内受容感覚と自律神経の予測性がある状態と言うことができます。」
はい、出ました自律神経。

そして「不安」について。
「起こりうる危険に対して生じる感情で、危機的な状況から自分を守るために欠かせないものです。
この不安の感情は、実は身体の内側の”不快な感覚”から起こります。
”不快な感覚”とは、自律神経の予測がつかない状態であるとも言えます。」

自律神経が整っていないと安心感を持てずに「漠然とした不安」に支配されてしまう。発達性トラウマがあると、自己調整機能が発達していないので、自律神経もうまく調整できないというのはこれまでに学んだ。繋がっている。


神経への負荷で身体にも症状が出る

神経の緊張と疲労のパターンにより、身体に症状が出たりもする。
私の場合だと胃腸の症状(お腹を壊したり便秘なども)、偏頭痛、肩こりや腰痛などだ。それ以外にもアトピーやじんましん、喘息、PMSなどにも関わっているとある。

自律神経を整えると、安心感を持てる上に身体のしんどい症状も軽くなる。「私は大丈夫だ」と思えるようになる。自律神経の調整は、トラウマからの回復にも欠かせない。
心身に出ているこういった症状を、ポリヴェーガル理論をもとに科学的に解決していくための本になっている。


ワークは優しいし簡単なものばかり

前半でポリヴェーガル理論や自律神経の仕組みを優しく解説してから、後半のワークに進む。ワークは「バックスイッチ(背側迷走神経)への刺激」と「フロントスイッチ(腹側迷走神経)への刺激」に分かれている。

順番としてはバックスイッチからだ。本を読めば分かるが、神経の土台の基礎になっているのはバックスイッチで、これを刺激することにより「自分1人で気を遣わずに安心して心身をメンテナンスすること」ができるようになる。その次に人とのつながりを求めるフロントスイッチの刺激に移っていく。

ワークを全部やらなくてはならないということではなく、やってみたいものやその日に気が向いたものを「日常的に取り入れる」「対症療法的に取り入れる」ことで継続していく。

私はまだバックスイッチのワークに取り組んでいるところだ。腎臓タッチや脳幹タッチは気持ちがいい。何もしないでボーっとするというのがなかなか難しい。SE(ソマティック・エクスペリエンシング)でもこの辺りのことに取り組んでいくはずなので、ぼちぼち気長にやっていきたい。


「喉の奥の詰まった感じ」に名前があった

ワークは途中だが、本は全部読み終えた。フロントスイッチのワークの中に「自律神経に負荷がかかっていると、『咽喉頭異常感症』という、喉がつかえるような症状が出る場合があります。食事のときよりも、ストレスがかかったときなどに感じるのが特徴です。」とあった。私のことではないか。ヒステリー球というのは聞いたことがあったが、名前が付いていたのかと驚いた。ちなみにこれは「凍り付きモード」に入りがちであるというサインらしい。シャットダウンということだ。

シャットダウンすると気管も閉じてしまう。ここ数年声が出しづらい(実際に出ている声は変わらない)と感じることがあるのだが、耳鼻科などでは異常は無い。こういうことなのか。


これだけでトラウマが回復する訳ではないけれど

ヨガもこういったワークも、これだけで回復できるということではないと思う。ただ、自律神経の調整がうまくいくようになることは回復に欠かせないと思っている。そして「トラウマの眼鏡」を外した自分自身のためのナラティブを持つことができるようになること。結局いくつかのアプローチを経て回復に向かうのだろう。

こういったワークをすることで、心理療法を受ける下地作りをすることができるのではないかと思っている。私は自分自身で安心を作り出すことができる。私は大丈夫だ。

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