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スキーマ療法③「スキーマモードとモードワーク」

モードアプローチに入る

前回までで、早期不適応スキーマを同定した。

ここからはスキーマモードについて学んでいく。
「スキーマモード」とは、「今・ここ」で自分がどんな状態だったり反応をしたりしているのかを表すものである。

前回私が同定したように、自分の持っているスキーマは複数ある。そして、その時々の状況で活性化されるスキーマは異なってくる。
場面や状況によって「恥ずかしいスキーマ」が活性化されたり「わかってもらえないスキーマ」が活性化されたりする。あるいは、その両方やもっと複数のスキーマが活性化されることもあるかもしれない。

そのスキーマが活性化されて、まさに「今・ここ」で自分に表れている状態や反応が、スキーマモードである。
自分が持っているものがスキーマ、その持っているスキーマの組み合わせによって出てくる状態がスキーマモード。

モードの違いは「コーピング(対処)」によっても異なってくる。
スキーマ療法提唱者のヤング博士は、活性化されたスキーマに対するコーピングとして「服従」「回避」「過剰補償」の3種類を挙げている。
スキーマが活性化→それに対して「服従」「回避」「過剰補償」のいずれかの対処をする→その時のスキーマモードとなる。

例えば私は「恥ずかしいスキーマ」があるが、ある場面でそのスキーマが活性化された場合、コーピングとして「回避」した場合にはお酒を飲んで紛らわせたり、スマホで旧Twitterを延々と見たりするかもしれない。
「服従」した場合は、「その通りだ、私はなんて恥ずかしい人間なんだ」とスキーマに従ってしまい、自己否定に陥って凹むことになるかもしれない。
「過剰補償」とは「スキーマとはあたかも反対であるかのような態度を取る」ということだそうだ。逆張りである。その場合は、私は「恥ずかしい人間なんかではない、周りの方が無能で恥ずかしい奴らなのだ」と周りを見下したりするかもしれない。
…と、同じスキーマが活性化しても、コーピングの種類が異なるとその時のスキーマモードも全く違ってくる。

なかなか複雑になってきた。



スキーマモードの種類

という訳で、スキーマモードはその人と状況と対処によって無数にあるのだが、種類は以下の4つに分けられる。
ちなみに、スキーマモードの専門書や治療家向けに書かれた本ではもっと細かく専門的な名称になっているが、私の取り組んでいるワークブックにある分かりやすい名前でここには書いておく。

  1. 傷付いた子どもモード

  2. 傷付ける大人モード

  3. いただけない対処モード

  4. ヘルシーモード

1の傷ついた子どもモードとは、自分の中の子どもの部分が傷付いている状態のモードだ。悲しい、恥ずかしい、怒り、怖いなどいろんな感情がある。インナーチャイルドの感情ということだろう。

2の傷つける大人モードは、自分のことを傷つけた大人の声が内面化されたモード。「内なる批判家」と同じことだと思う。

3のいただけない対処モードは、コーピングモードだ。「服従」「回避」「過剰補償」だとわかりにくくて混乱するので、ワークブックでは「せっかくスキーマに対処しているのだけれども、それが結果的に自分助けにつながらず、かえってよろしくない方向に向かっている状態」と書かれている。
例えば、お酒に走る、先延ばし、自傷行為、ネットに没頭する、買い物しすぎ等々。

4は「幸せな子どもモード」と「ヘルシーな大人モード」に分かれる。自分の中の子どもが幸せでいるモードと、モードワークの鍵となる「ヘルシーアダルトモード」である。この「ヘルシーなアダルト」が他のモードと対話をして、受け止めて対処する。「ヘルシーなアダルト」が大きく強くなると、自分で自分を幸せにできるようになっていく。



モードマップで自分の中が見えた

自分がしんどくなったり辛くなったりする時の内面って、だいたいパターン化されている。それをチャートや図にして、モードマップを作ってみる。
私の場合は「恥ずかしい」&「わかってもらえない」と「安心したい」というスキーマが強いので、2種類マップを作ってみた。
スキーマがあり、そのスキーマが活性化するとどんなモードが出てくるのか。傷ついた子どもモードも、傷つける大人モードも、いただけない対処モードも、だいたい決まっている。この時に幸せな子どもモードはいない。ヘルシーな大人モードもとても力が弱い。

このマップを作ったことによって、自分の内面がどんな風になっているのかという「地図」のようなものが見えた。
これまではあまりにナチュラルに自分を否定していたので、傷つける大人モードなのだとラベリングされると、とてもスッキリした気持ちになった。カオスのようだった自分の中を交通整理した感覚だった。

いただけない対処モードを外在化したことも大きかった。私はこんな風に回避したり服従したり過剰補償しているのか、と目から鱗だった。意識してラベリングして外在化するって大事なことなのだと実感した。

このモードマップをもとに、日常生活の中でセルフモニタリングをして外在化を続けてみる。
「あ、今は恥ずかしいスキーマが活性化してる。それで、このスキーマで傷ついた子どもモードが自分を恥ずかしく感じていて、傷つける大人モードが辱めて責めている。今の私のいただけない対処モードは、何も考えないようにしようとしていたから、感情を遮断するモードだな」という感じで。

いったん気づくとセルフモニタリングがしやすくなってくる。何度も繰り返すと、「私ってば今いただけない対処してますなあ」などと気づくことも増える。本当に日々少しずつという感じだ。



ハッピースキーマとヘルシーなアダルトで停滞する

自分の中のモードマップがある程度できたら、次はヘルシーなアダルトを作っていく。何と言っても、自分の中のヘルシーじゃないモードたちと対話をするヘルシーアダルトモードがしっかりいてくれないと、モードワークは厳しい。という訳で、まずは自分の中の「ハッピースキーマ」を見ていく。

  1. 自分の過去のポジティブな体験や未来に対する思いを外在化して、それをもとに自分の「ハッピースキーマ」を外在化してマップにする

  2. このハッピースキーマと自分のスキーマサイド(早期不適応的スキーマ)の対話のワークを行う

  3. もう一度ハッピースキーマとマップを作る

  4. ヘルシーな大人のイメージを外在化して、自分の中のヘルシーアダルトモードを作る

ワークブックにも「そんなに簡単にハッピースキーマを作れるものではない、時間とエネルギーが必要」とあるが、まさにそうだった。
早期不適応的スキーマは自分の中にあるものを探して引っ張り出すだけなので、しんどいことはしんどいが、それなりに簡単ではあった。
ハッピースキーマは、自分の中のわずかなリソースをもとにして、自分の中の早期不適応的スキーマに太刀打ちできるものを発見し、作らなくてはいけない。
最初に取り組んだ時点では「物わかりのいい綺麗事ばかり言う大人」みたいなヘルシーアダルトになってしまい、しばらく停滞していた。

結局、EMDR治療を受けたりトラウマ治療や回復に向けての本を読み、自分の中のリソースが増えたり、安心感が増すことでようやく作ることができた。本当に、ここが一番難しかった。



モードワークで対話を進める

ヘルシーアダルトモードを作ることができたら、それを使ってモードワークを行う。
傷ついた子どもモード、傷つける大人モード、いただけない対処モードの各モードと、ヘルシーアダルトモードが対話をする。
この時、傷ついた子どもモードには「癒す」、傷つける大人モードには「撃退する」、いただけない対処モードには「導く」という姿勢で対話を進める。

ちなみに、幸せな子どもモードに気づいたときは、対話などはせずにそのまま見守るようにするとのこと。
傷つける大人モードが出てきたら、子どもモード達を守らなくてはいけないというのが大事な基本になる。

このヘルシーなアダルトが取る態度は「養育的な態度」なのだ。親がこうやってくれたらよかったんだろうなと思う関りをしていくことで、自分で自分を癒したり導いたりしていく。
これは難しい。そんなに簡単にできることではない。スキーマ療法をセラピストと行う場合は、最初の内はヘルシーなアダルトのイメージがしづらいので、セラピストがヘルシーなアダルトになって手本を見せることが多いみたいだった。そうやってセラピストが養育的な関わりをクライアントと持つことによって、クライアントが癒され自分の中のヘルシーなアダルトを育てていけるようになる。

モードワークについての治療者向けの本を読んだら、セラピストがヘルシーなアダルトをになる場合、傷つける大人モードには徹底して厳しく撃退する様子が書かれていた。それこそ、傷つける大人モードが座っている(と見なす)椅子を部屋の外に放り出して追い出してしまうなどもしていた。そうやって、クライアントの傷ついた子どもモードを守っていた。

思ったことなどを書いたり、これまでを振り返るレッスンなどもあるが、このモードワークでとりあえずスキーマ療法について学ぶことは完了となる。
当たり前だが、新たに学ぶことが無くなった=終わりではない。モードワークを繰り返し行い、セルフモニタリングやマインドフルネスをこつこつと続けていくことで自分の中が癒されていく。一生続けるつもりでやっていく、とあった。そりゃそうだ。

④では感想を書いてみたいと思う。



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