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スキーマ療法②「成育歴の棚卸し→スキーマの同定へ」

成育歴の棚卸し

前回までで必要なお膳立てを終わらせて、セルフケアや内観も板についてきたかな?という段階で、次は成育歴の棚卸しに入る。

生まれてから20歳ぐらいまでの記憶を表に書き出して「それがどんな出来事なのか」という自分の感想もそれぞれに書く。年齢はだいたい20歳から25歳ぐらいまででいいけれど、自分で必要があると思えばそれ以降の年齢のことも書き出す。いい思い出も傷ついた思い出も。
後になってから思い出した記憶があれば書き足していく。

ここでかなり時間を使うと思うが、私は既にカウンセリングで成育歴の洗い出しをしていたので、割とすぐに終わった。ただ、ここで新たに思い出した記憶や気づいたことがあったので(自分自身の恥の感覚など)、あらためて棚卸しをしたことは本当に大きな意味があった。


中核的感情欲求とスキーマ領域

これまでの成育歴と傷ついた体験をあらためて振り返りながら、自分の早期不適応的スキーマを検討する。
自分がどんな体験で「中核的感情欲求」を満たされずに傷ついたのか。
「中核的感情欲求」とは、ワークブックに「人間が当たり前に持って当然のごく正当な欲求」とある。
子どもが親(養育者)に対して持って当たり前の欲求で、これが満たされないことが傷つき体験になる。

中核的感情欲求は以下の5つになる。

  1. 愛してもらいたい。守ってもらいたい。理解してもらいたい。

  2. 有能な人間になりたい。いろんなことがうまくできるようになりたい。

  3. 自分の感情や思いを自由に表現したい。自分の意思を大切にしたい。

  4. 自由にのびのびと動きたい。楽しく遊びたい。生き生きと楽しみたい。

  5. 自律性のある人間になりたい。ある程度自分をコントロールできるようになりたい。

これが「満たされて当然の欲求」だということに驚いた。こんなに求めてもいいものなのか。自分の子どものことを思うと当然の欲求だと思えるのに、自分自身に対してはこれが当然なのだという気持ちには最初はなれなかった。わがままだという気持ちになってしまっていた。

この中核的感情欲求のうち、私が自分の成育歴と照らし合わせて満たされていなかったと思うのは、1から4だった。自律性に関すること以外はほぼ全てということだ。

この中核的感情欲求は、それぞれ5つのスキーマ領域になる。

第1領域:人との関わりが断絶されること
第2領域:「できない自分」にしかなれないこと
第3領域:他者を優先し、自分を抑えること
第4領域:物事を悲観し、自分や他人を追い詰めること
第5領域:自分勝手になりすぎること

私は第1から第4領域に該当するスキーマが形成されているということになる。さて、ここから自分の中のスキーマを仮定していく作業に入る。


自分の早期不適応的スキーマを仮定する

スキーマは5つの領域に全部で18個ある。
初めて18個あると知った時は「多い…」と思ったが、結局はどれも「あるよなあ」というスキーマだと思った。
(以下は伊藤絵美さんの著書から引用しているが、ワークブックではもっとわかりやすいスキーマ名称にしてある)

これらのスキーマと自分の満たされなかった中核的感情欲求、傷つき体験から見ていって、それぞれに数値を付ける。

第1領域
①見捨てられ/不安定スキーマ:80%
②不信/虐待スキーマ:50%
③情緒的剥奪スキーマ:100%
④欠陥/恥スキーマ:100%
⑤社会的孤立/疎外スキーマ:60%

第2領域
⑥依存/無能スキーマ:10%
⑦損害や疾病に対する脆弱性スキーマ:80%
⑧巻き込まれ/未発達の自己スキーマ:0%
⑨失敗スキーマ:40%

第3領域
⑩服従スキーマ:90%
⑪自己犠牲スキーマ:10%
⑫評価と承認の希求スキーマ:100%

第4領域
⑬否定/悲劇スキーマ:50%
⑭感情抑制スキーマ:70%
⑮厳密な基準/過度の批判スキーマ:80%
⑯罰スキーマ:0%

第5領域
⑰権利欲求/尊大スキーマ:0%
⑱自制と自律の欠如スキーマ:0%

結構気の長い作業だった。スキーマ療法はもともと時間がかかるものなので仕方がないけれど、根気強さやコツコツ続ける覚悟が必要だと思う。
ただ、自分の中がだんだん見えてくる感覚はかなり気持ちがいい。

上に付けた数値が高ければ高いほど、自分に当てはまっていると感じていることになる。①③④⑦⑫⑭⑮…多い…。でもこれが私なので仕方ない。

これはこの時点での自分の評価なので、これから先に進めていくに従って、評価が変わったりすることもあるし、それはその都度書き換えていくのだそうだ。だから「仮定」なんだなと納得した。

ワークの中で、自分のスキーマを文章でまとめたり図にしてわかりやすくするなどして、自分の中で整理を付けた。

私には「自分がダメで恥ずかしい」「自分を見てほしい、分かってほしい、でも分かってもらえない」「今いる場所は安心できない」「自分のこだわる部分はきちんとしなくてはならない」「怒っているところを見せてはいけない」というスキーマがメインなのかなという感じ。


本を読みまくる

次はスキーマモードの作業に入るのだが、ここで本を読みまくった。スキーマ療法やモードワークをもっと理解したいと思ったのだった。

伊藤絵美さんの著書。理論と事例が細かく載っていて、素人でもとてもわかりやすい。特に最初の事例で回復の過程を読んでいて、何度も涙ぐんでしまった。ブレインストーミングの方法や過程なども載っていて、自分で取り組む際の参考になった。

実は付録のスキーマモード質問紙目当てて購入した。内容は分かりやすいし事例も載っていたが、他の本とかぶる内容もあったので、必須ではなかったかなと思っている。

専門書で360ページあったが、豊富な事例とモードワークについて詳しく書かれていて、あっという間に読み終わった。

とにかく「脆弱な子どもモード」には共感と受け止めと癒しを、「懲罰的大人モード」と「非機能的コーピングモード」とは徹底的に戦うということを学んだ。子どもの私の欲求は満たされて当然のものであり、何も悪いことはない。その当時の周りの大人が満たしてあげて当然のものだったし、そうされなければいけなかったということが腑に落ちて涙が出た。

怪しい自己啓発本のような題名で、スキーマ療法のスの字も無いので見逃すところであった。スキーマ療法の生みの親のジェフリー・E・ヤング博士の書いた「Reinventing Your Life」の翻訳本だとたまたま知ることができた。

前書きをアーロン・ベック博士(認知行動療法の生みの親)が書いていてびっくりしたし、なんだか胸熱だった。

スキーマ療法を一般の人にわかりやすく「性格の癖」と名前を変えて説明している。360ページの大容量に加えて小さな文字で読みごたえがある。豊富な質問紙と事例と対策とチェックリストで、この先何度も読み返したくなる。ただ、執筆当時はまだスキーマが10個しかないので、そこが残念なところかもしれない。

次はスキーマモードに入っていく。③に続く。




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