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EMDR/2回目

前回を振り返る

EMDRについてもっと知りたいと思い、先日こちらの本を読んだ。

EMDR治療の生みの親である、シャピロ博士の書かれた本だ。
どのような時にEMDR治療が効果を発揮するのか、眼球運動ができない人や子どもなどに対して工夫や応用を行った例など、豊富な事例が載っていた。

ここまでくると「心」というよりも「脳機能」の問題になる。それにしても、人間の心の傷になる物事というのはさまざまだし、避けられないものも多いのではないかと思った。

さて。
今回の治療の前に、前回のEMDRを受けての振り返りをした。
足元と頭の中のフワフワした感覚、眠気などや感情の揺れ幅が激しいと感じたこと、見た夢などを話した。

前に書いた中国へ旅行する夢は、どうやらさほど重要な夢では無さそうとのこと。ただ、数日前に見た夢で激しく感情を揺さぶられて泣きながら目が覚め、起きてからも1時間近く泣き続けた日があった。目が覚めても泣いてしまう夢を見るのは、子ども時代以来かもしれない。
感情や記憶の処理が行われていると、そういった感情がドバっと出てくる夢を見ることがあるらしい。


恥の感情は人を孤立させる

そして、今の自分について改めて話をした。何が問題なのか、自分の中にある感情はどのようなものなのか、両親についてなど。

記憶を話すうちに、母は自己愛の強いタイプだったのではないかとセラピストに指摘された。私の話は聞かずに自分の話をする、自分はいい母親で小さい頃から特別ないい子だったという話を繰り返しする、私と比べて過去の母はこんなにすごかったし美しかったなどなど。今になって思い出してみると「自分の子どもにこんなことばっかり話すか?」というようなことが多かった。

でも、そうやって母に対して疑問を持つことに罪悪感が付き纏う。
「お母さんはいいお母さんですごいお母さんだし、私は悪い子で困らせてきたのだから、そんなはずはない」という声が頭の中に響く。

成育歴を聞くに、かなり過酷な環境だったこともあるので、そうやって罪悪感や自己否定や恥の感情(トラウマを持つ人に特徴的なのが自己否定や恥の感情らしい)を持っているところに、自己愛の強い母からの「母を肯定し、娘(私)を否定する言葉」を繰り返し聞かされていると、洗脳に近い状態になった可能性があるとのこと。特に私は聴覚優位なので、耳からの情報は入ってきやすい。

記憶を処理していくと、こういった「洗脳」も無くなっていくと言われた。本当なのだろうか。

そして、恥の感情。
最近は圧倒されずに自分の中を観察できるようになってきた。私は「わかってほしいのにわかってもらえない」という感情も強いので、対人関係や社交的な場ではいつもこんな感じになる。

私のことをわかってほしい

わかってもらえなかったような気がする、私はダメなんだから当然だ

そうやっておかしな行動をした私をみんな笑ってるんじゃないか

恥ずかしい(その後はこの感情を強化するかのような1人反省会を開催)

20代にお酒で紛らわした時期があったのも、こういう感覚を麻痺させるためだったんだなと今ではわかる。こんなものできることなら感じたくない。
今の私にはこういう自分がいちいち見えているので、そんな自分に多少疲れてしまう。この感情を感じてもそれを上回るほどの楽しいことだったらいいけれど、そうでもないのなら関わらなくてもいいのかなと思ってしまう。

1人で過ごしていれば、反省会も必要ないし恥の感情も感じなくて済む。1人で楽しく過ごすことは私にはお手の物だし、むしろ楽だし安らぐ。

こういうことを話していたら、セラピストに「恥の感情は人を遠ざけて孤立させます」と言われて刺さった。確かに、どんどん1人になろうとしている。それが辛くはないから困ってもいないのだけど。


5歳の私と、過去の記憶を処理する

今回の治療からは、ターゲットにした記憶を処理する。
前回と同じ場所に誘導されたら、前回と同じく5歳の私が待っていた。そう、待っている。5歳の私は今の私が来るのをずっと待っていたのだなとわかる。
その子と私とセラピストで話し合い、ターゲットにする記憶を決めた。
私が治療するところに、その子も一緒にいてくれるように頼んだ。私のインナーチャイルドなのかはまだわからないけど、その子はとても協力的だし割とフレンドリーな感じだ。興味津々というようにも見える。

「叔母の家に母と私と弟(赤ん坊)で泊まりに行くことになり、父が車で見送ることになった。車中でいつものように両親が激しく喧嘩をして、母がどんどん錯乱状態になり、叔母の家に着いた時には泣き叫びながら叔母に連れられて行った(弟は母に抱っこされていた)。私は助手席で固まっていて母に付いて行くこともできず、叔母も私のことを忘れていた様子だった。父が少しして私に怒った声でどっちに付いて行くのかと言ったので、私は父に付いて行くと答え、そのまま車で帰った」という5歳ぐらいの時の記憶をターゲットにする。

この時の感情は「怖い」「私は要らないんだな」というものだった。
数値で出すとかなり高めだった。この場面でどう考えたら自分が安心できるだろうかという肯定的な認知は「私は大切な存在だ」というものだけど、最初はかなり低い数値でしか自覚はできない状態だった。

この記憶はこれまでにも何度も振り返り外在化して、感情にも向き合ってきた。とにかく固まって感情を表に出さないようにしていた記憶がある。

1セット治療を行うごとに、見えたイメージについて話す。そのうち感情が出てきた。記憶の中の固まっている私に、今の私と5歳の私で「私は大切な存在だ」と声を掛けて、記憶の中の私もそう声に出すように励ましたら、当時の私も助手席に座ったまま「私は大切な存在だ」と声に出すことができた。そうしたら、感情がドバっと出てきた。そのまま数セット繰り返す。怒りも出てきたので出し切った。

私はできるのならその場から自由になってどこかに逃げたかった。でも子どもなのでできない。ただ、「今の私」ならどこにでも行けるしじゅうぶんな力がある。
という訳で、途中で記憶の中の私を、安全なイメージに連れて行った。怖かったよね、もう大丈夫だよと声を掛けながら、一緒にシャボン玉を吹いた。
5歳の私も一緒に吹いた。子どもの私たちは2人とも笑顔だった。
(その過程でも治療は続いている)

ふと、こうやって辛かったり怖かったりした後に、大人に優しくしてもらって安心したことが無かったし、(治療の中のイメージではあるけど)今回が初めてだな、と思った。そして、子どもの私の気持ちになり、次にお父さんとお母さんが喧嘩した時にも、大人の私がこうやって慰めに来てくれたらいいのにな、それなら頑張れると思った。

こうやって書いてみると、「何書いてんだこいつ」状態に見える。でもこのイメージがものすごく私自身の救いや癒しになった経験になったのは確かだ。ああ、こういうことかと思った。浮世離れしているが、安全なイメージに子どもの私たちを連れてきた場面は、今思い出してもホッとして涙が出てくる。


何だこれは

治療を何セットも続けていくうちに、驚いたことに「自分は大切な存在だ」ということが実感として感じられるようになった。父と母があんな状態だったとしても、それはそれ。「私は要らないんだな」ということにはならないよなあという気持ちにもなった。肯定的な認知の数値は高く、否定的な認知の数値はゼロになった。

嫌な記憶ではあるし、父や母の私に対する扱いはひどかったし悲しかったのは変わらないのだけど、だからといって「自分は要らない」にはならないよね、というのが自然に信じられる。何だこれは、という感じだった。

この記憶を思い出しても、圧倒されなくなった。
うわあ、変わった!とかそういうのではなく、淡々と元のあるべき所に収まりました、という感覚だった。

何より、今の私が子どもの私を受け止めて優しくしてあげることができたのと、子どもの私がそれに救いと癒しを感じたということが大きいように思う。笑顔を見られて本当によかった。
セラピストには「子育てを経験しているので、子どもの自分に対する扱いも上手にできていると思います」と言われた。

子どもの私は、話を聞いてほしかったし見てほしかったんだなと思う。
「○○ちゃんはどう思う?」と、すごくすごく聞いてほしかった。そして、どんな話でも「そう思ってるんだね」とただ聞いてほしかった。子どもの私はそれにとても飢えている。今の私なら、それに答えてあげられると思う。そうして欲しかった気持ちは、すごくよくわかる。私も時々、誰かにそうしてもらいたいと切実に思う時がある。


ヘルシーなアダルトの姿が見えてきた

私はセルフヘルプでスキーマ療法をやっているのだが、スキーマ療法では「自分の中のヘルシーなアダルトが、傷ついた子どもの自分を受け止めて養育していく」というのが最終的な目的になっている。

ただ、これまでは「ヘルシーなアダルトってナニ?」というところで停滞していた。なんか、説教臭い物わかりのいい大人みたいになってしまっていた。

でも、今回で何となく見えてきたように思う。徐々にヘルシーなアダルトを私の中で強く大きくできるかも知れない。とても嬉しい。


お勧め本を教えてもらう

治療後も脳の中では処理が進んでいる。今回も、前回ほどではないがフワフワしている。EMDR治療では「般化」といって、今回のターゲットの記憶以外でも同じような種類の記憶も処理を進める効果があるらしい。

最後に、今読んでいるトラウマ治療の本の話をして、お勧めの本を教えてもらった。私と近い状態の事例が載っているとのことだった。早速読んでみたい。
そして、次回の予約を取って終了。やはりあっという間の2時間だった。




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