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Paris-Brest-Paris Randonneur2023 顛末記8

  8月23日PC8ルデアック(復路)    

        〜 8月24日 GOAL ランブイエ

    8月23日午前4時40分、 PC8ルデアックを出発。
    借金1時間30分。
    初めて借金を背負ってPCを出発します。

    午前6時20分、832㎞地点の街、イフォー(Illifaut)。  
    ステンドグラスが美しい教会の前を走り抜け

イフォー( Illifaut)

    明るくなった午前7時、サン-メアン-ル-グランの街にお洒落なパン屋さんを見つけ、ここでパン朝食をとることにしました。

パン屋さん  Crêperie Pizzeria Mévennaise

    店の前で立ち転けを極めた後、気を取り直して店内に入るとショーケースの中に美味しそうなパンが沢山並んでいました。ミツバチが一匹、タルトの蜜を集めていましたが、誰も気にする様子なく、長閑な雰囲気です。

パン朝食

     パンを3個購入。店先で2個食べ、1個はサドルバッグに入れ補給食に。美味しいパン朝食で元気回復、コース復帰します。

    今朝は霧です。霧の向こうに木々の影が浮かび上がり幻想的。蜃気楼の中に吸い込まれていくよう。

 幻想の世界

    メドレアックという町を抜け

霧のメドレアック

    午前8時50分 、PC9タンテニアック到着。
    867.3km地点。思惑通りルデアックから21km/hで走ることができ、貯金1時間。

PC9タンテニアック

とりあえずパンとバナナを補給。
    ドリンクは水とオランジーナとカフェオレかな。

PC9タンテニアックでの補給

    午前9時35分、タンテニアックを出発。      
    滞在45分。
    緩やかな坂を下って、登ってを繰り返し

下りの先に上り

    午後0時30分 928.2km PC10フジェール到着。
    往路でも訪れた体育館に万国旗のPCです。貯金1時間50分。
    すぐに食事をとります。

PC10フジェール 

    牛乳2杯、100%オレンジジュースと 定番のバナナ、クロワッサン。補給はしますが三大栄養素すべてが不足していて追いつかない感じ。
    食事を終えると貯金は1時間ちょっと。
    眠気を感じたのでPCの芝生に寝っ転がって30分ほど昼寝しました。暖かくてよく寝られた。

    午後1時45分、フジェールを出発。
    滞在1時間10分、貯金40分。

フジェールを出発

    走っていると途中で人だかりが。ここは名物の私設エイドらしい。興味はあれど、人多すぎでスルー。

名物私設エイド

    3日目の今日も暑い。 水が欲しいけど、やっぱり自販機はありません。
    そこに、少年が「cold water!」と叫びながら、お母さんと一緒に冷えた水を配っていたので分けてもらいました。

冷えた水をいただく

    ゆるゆると続く登り坂を登っていると、ベロモービルがコクピットを開けて登坂。閉めるとサウナ状態なのかな、前見えるのかな、などと考えつつ追い抜きます。

 頑張れー

    このあたりで、若い日本人ランドヌールと抜きつ抜かれつを繰り返していたような。

    午後5時30分を過ぎ、そろそろ夕時の補給時間。
    次のPC11 ヴィレンヌ・ラ・ジュエルの食堂は混んでるかもなぁ、などと考えていたところ、ちょうど大きな私設エイドが現れたので、そこで補給して行くことにしました。

大きな私設エイド

    ハムサンドとラザニア的なものを補給。
    コーラーワーラーオランジーナに飽きてしまったので、遂にビールを投入。(ノンアルです)

 私設エイドで補給

    補給後はまた草原の道です。
    この辺りは北海道の美瑛みたいで綺麗でした。
    美しい丘陵を抜け、

綺麗な丘陵の風景

    午後7時、1117㎞、PC11ヴィレンヌ・ラ・ジュエルに到着。71時間経過、貯金2時間15分。

PC11ヴィレンヌ・ラ・ジュエル

    ここは、街中が熱烈にランドヌールを歓迎してくれる街として有名です。よく、「ゴールと勘違いするほどの声援」と例えられますが、本当にそんな感じ。

老若男女、皆んなが歓迎

    塀の上に子供が大勢!と思ったら、子供ではなく全員、お年寄りでした。

お年寄も子供のように応援

    施設内をウロウロしているとボランティアの少年が駆け寄ってきて、「お手伝いすることはありませんか?」と声を掛けてくれました。

PC11ヴィレンヌ・ラ・ジュエル

    施設の奥でひっそり仮眠を取ろうと横になると、ボランティア少女が心配そうに、「大丈夫ですか?」と気に掛けてくれます。ボランティア少年少女への教育が徹底していて感心しました。「大丈夫、寝たいだけだよ」、と身振り手振りで伝えつつ入眠。
    1時間ほど寝られました。
    寝起きに売店で牛乳とジュースを補給。
    それから、フランスからの帰路に搭乗するエミレーツ航空に輪行箱持ち込みの事前申請をしていなかったことを思い出し、エミレーツの窓口に電話しましたが、応対した担当者から、「あなたの英語は分かりません」と言われ、事前申請を断念。

    午後8時50分、ヴィレンヌ・ラ・ジュエルを出発。
 滞在1時間40分。貯金30分。
    ここからランブイエまでは201km、所謂、あと1ブルベです。旅は終盤に入ります。
 Q組の制限時間は翌24日の午後2時なので、201kmを17時間で走ればいい。そう思えば時間内完走が現実的に見えてきます。

     4回目の夜を迎え、淡々と夜道を登り下りしますが、このあたりになると睡眠不足がジワジワと効いてきます。眠い。道路脇には仮眠のランドヌールがゴロゴロ転がっていたので、私も登坂途中の道路脇で仮眠を取ることにしました。
    自転車を横にして、その隣にゴロンと寝転がり、「ああ、寝られる」と幸せな気持ちになり、うつらうつらしていると頭の上を通り過ぎて行ったトレインから、「He is crazy!」と言う声が聞こえました。
    あ、頭が車道ギリギリでした。危なかった。
    これで少し目が覚めてしまいました。

    また走り出します。
    この後、後ろから追いついてきた日本人ランドヌールと一緒に走ることに。
    そのランドヌールは前回のPBPにも参加されたそうで、前回は眠気で路肩に突っ込んで危なかった、などという話をしてくれました。
    私もついさっき、危ない経験をしましたが...

     この区間は坂が多かったような記憶があります。
     PCも長い坂を登りきった上にあったような。

    8月24日午前1時20分、1099㎞地点、PC12 モルターニュ・オー・ペルシュに到着。
    経過時間77時間15分、貯金3時間50分。

PC12モルターニュ・オーペルシュ
PC12の食堂

    食堂ではPBP名物の、床の上のごろ寝。硬い床の上ですが、皆さん気にせず寝ています。

食事&ごろ寝

     私は食堂で寝るのは気が引けたので、PC建屋の外で仮眠を取りました。
    このPCでのQ組のクローズは4時7分。3時半まで寝て、クローズギリギリの4時に出発することにしました。
    ヘルメットを付けたまま入眠。1時間40分ほど寝られました。少し寒かったけど。
    起きてからカウンターバーでホットコーヒーとタルトを購入。

賑わうカウンター

    あったかいコーヒーがありがたい。
    タルトも美味しかった。
    こんな深夜にまでボランティアしてくれるおばちゃんたちが、ありがたく思えます。

美味しいタルトとあったかいコーヒー

    ちなみに、このPC 12が、往路で休憩したWP1モルターニュ・オー・ペルシュと同じ場所だということは帰国してから気付きました。往路とは全く雰囲気が違ってたもので。 
    午前4時、PC12 モルターニュ・オーペルシュを出発。
    滞在2時間40分、貯金0時間10分。

PC12モルターニュ・オーペルシュを出発

    ゲートを出たところでボランティアのおじさんが右に行くよう指示してくれます。メルシー。
   
    静まり返った町を抜け

 

    森林に入り、真っ暗な中をアップダウン。
    寒い.....明け方の冷え込みと補給不足で体温が上がらない。さっきのPC12で、もう少し食べておけばよかったなと反省します。

    その時、暗闇にオアシスが現れました。
    大きな私設エイド!
    午前6時25分、このエイドにピットイン。

オアシスのエイド

    この私設エイドでは、温かいコーヒーやカフェオレを無料でいただきました 。しばしボーっと休憩し気持ちをリセット。このエイドで生気を取り戻せました。

    走り出すと、ほどなく夜明け。
    4回目の夜明けです。

この瞬間が最高

    やっぱり太陽は偉大。

    午前7時、印象的なレンガ壁沿いの道を走ります。

レンガ壁の道

    ここはPBPに参加したランドヌールのブログなどによく登場する場所です。独特の雰囲気があります。

 午前7時20分、ご来光。

朝日に向かって走る

 ひたすら草原を駆け

四角の藁積み 

    そして、さらに草原を駆け、

草原しかない

    この辺りになると、周りのランドヌールの皆さんも完走を確信し、充実感を漂わせながら走っています。

    街が近づいてきます。
    即席のトレインでドルーへ突入。

即席トレイン

    午前8時、1176.0㎞地点、PC13 ドルーに到着。
    貯金2時間30分。
    ゴールに向けて、しっかり補給するつもりでしたが...

PC13 ドルーの食堂

    ドルーのレジではクレカが使えませんでした。そして運悪く現金がほとんどない。ここまで大概の場所でクレカが使えたので、「クレカさえあれば何とかなる」と油断していました。

 ドルーの食事

    これだけしか買えませんでした。
    お金がない中で、あえてメロンを買ったのは例によって食物繊維不足のためです。それだけ食物繊維不足は深刻。ブルベ中にメロンを食べるのは初めてです。

    午前9時、ドルーを出発。
    滞在1時間、貯金1時間30分。

PC17 ドルーを出発

  ドルー駅前を通り

 ドルー駅
駅前を快走

    郊外の草原へ

気持ちいい下りを快走
そして上り
上り
緑の中を登る

    ゴールのランブイエが近づいてきます。
  
    ああ、ゴールしちゃうと、この先、二度とフランスの地を走ることはないんだろうな。

平原

    ゴールしたいけど、いつまでも走っていたい。

ゴールに向かって

    残りの僅かな距離を噛み締めながら走ります。
    1200km走り、他のランドヌールの皆さんも疲労困ぱいのはずなのに、穏やかな雰囲気が漂っていました。達成感、充実感。

    そして気が付くと、右側に長い塀が現れます。
    長い長い塀。
 ああ、この塀はランブイエ城公園の塀か。

ランブイエ城公園の塀

    帰ってきたんだな。
    旅の終わりがやってきました。   
    ランブイエ城公園に入り、砂地の道をゆっくり走り、

    午前11時12分、ゴール。
    経過時間87時間12分。
    ボランティアのおじさんにブルベカード最後のチェックとサインをもらい、そして、念願のPBPの完走メダルをいただきました。

PBPの大きなメダル

    1219kmを共にした愛機にメダルを掛け記念撮影。

ありがとう愛機

    本当に素晴らしい1200km、87時間でした。

ホテルへ

    さて、ゴールの余韻に浸りたいところですが、明朝、ホテルを発たなければならないので、すぐにからホテルに帰ります。
    ランブイエ駅から各停に乗るところを急行に乗ってしまい、ホテル最寄駅の一駅先のベルサイユ駅まで乗り越してしまいました。電車を乗り換えて戻るのも面倒なので自転車でベルサイユからホテルに戻ることにしました。

ベルサイユの街並み

    駅を出ると、ゴージャスな街並みです。ベルサイユ宮殿の敷地沿いの道を通ったので、宮殿が見えるかなと思い壁の隙間から覗いてみましたが、見えませんでした。
    学生時代、金閣寺の敷地沿いを通ったときも同じようなことをしたな。

    午後1時30分、ホテルに再チェックイン。
    シャワーを浴び、妻に完走の報告をします。
    このまま寝たいところですが、まだ寝てはいけません。ドロップバッグの回収に行かなければならないから。
    小雨模様だったのでホテルにタクシーを呼んでもらい、午後5時ころ、ホテル ベストウェスタンでドロップバッグを回収、乗ってきたタクシーでとんぼ返りし、ホテル近くのスーパー Lidl で降ろしてもらいました。LiDLで独り祝賀会用のビール、パン、ドリトス、m&mチョコを買い込みホテルに戻ります。

スーパーLidl

    ホテルでドリトスを摘みながらビールを飲み、ボーとしながら、ようやく完走の余韻に浸ります。が、明朝の帰国準備をしなければなりません。特に愛機を分解して輪行箱に詰める作業は今日中に済ませておかねば。
    その前に晩ご飯を食べよう。ドルーでの朝食の後、ご飯を食べていません。ホテル近くのアジア料理店にでも行くかな、などと考えつつベッドにゴロンと寝転びます。寝るつもりはありません。ちょっと横になるだけです。しかし2秒で猛烈な睡魔に襲われます。「寝てはいけない...晩ご飯を..輪行箱に..自転...」。

その9に続く








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