メンヘラ・ダイエット 第二章(修正版)

一夫一婦制という庭の中
盛りを過ぎた花は
次世代の種を育てるのに勤しみ
花びらは水気を失い色が褪せ
ひびのように皺が入り
その輪郭にはぎざつきが

BMIは25を越え
体脂肪率は36%に突入

このまま次世代さえ花開けばいいと思っていた雌花は
水面下に凍り付いていた磁石を
不意に出会った雄花に
溶かされ

互いの凹凸は埋められる

 まだ咲き誇れる

その日を境に
雌花は雄花が放つ小さな塩粒を探す病に冒され塩が塗られる度に傷口は開き
涙も塩辛い

名字が変わっても変わらぬ体質

ああ
通い婚の古より手弱女は
熱り(ほとほり)の見えぬ益荒男のため
その浮き身を窶してきたのか
次世代の芽生えを横目に
独り過ごす長い夜

フライドチキンも
ポテトチップスも
ケーキも
チョコレートも
クッキーも
今はいらない

やがて
BMIは20を切り
体脂肪率は20%台に突入

恋痩せた雌花は
鏡の前でほくそ笑む

ダイエットは順調
次会う時あなたには
メンヘラの色をした笑顔を捧げよう

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