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化粧直し

あんなに嫌いだ。と思っていた両親と別れる時。
何も言えなかった。
いつもうわべのことばはすらすら出てくるのに
今何を言うのが正解かなんて考えてなかったし
考えていたとしても分からなかった
今も分からない。

でも1人になってしまえば案外何も無かったかのように落ち着いている自分もいて
どうしようもなく手持ち無沙汰になった。

だからといってなみだがとまったわけでもなく
なぜ止まらないのだろうと思った。気がする。

家を出る前、母は沢山のことを言って聞かせてくれた。
心配してくれていたと思う。
私はその外骨格だけを受け取って、中身を全部こぼしてしまったような気がする。

人と話す時
互いの言葉が相手に届くまでの間
なにか抜け落ちてしまう

なんて悲しい

悲しいのだろう

きっと

今自分は新しい街に向かっている
それは確かだと、思う

私はどこへ向かっているのかよくわからなくなっている
新幹線を降りたら、
いつもの家に辿り着きそう
新幹線を降りずにずっとこのままかもしれない

でもきっとそんなことはなくて
気づいたら友人との付き合いが6年を越していたように
気づいたら新しい部屋にいて
気づいたら明日になっていて
気づいたら次の町に向かっているかもしれない

化粧をしたのに崩れてしまった
化粧直し用のメイクセットはもう仕舞ってきてしまったのに

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