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高野山に「大秦景教流行中国碑(だいしんけいきょうりゅうこうちゅうごくひ)」がある謎~景教と空海~

割引あり

 高野山と言えば、真言宗の総本山であり、日本屈指の仏教聖地の一つ。その高野山の中に、「大秦景教流行中国碑だいしんけいきょうりゅうこうちゅうごくひ」という、中国で景教けいきょう(ネストリウス派キリスト教)が流行ったのを記念して建立された石碑のレプリカがあるのをご存知でしょうか?
 仏教の聖地に、どうしてキリスト教の石碑があるのか、この奇妙なつながりについてお話ししていきます。

唐代のキリスト教

 2010年と少しデータが古いのですが、全世界のキリスト教徒数は約21億7000万人。そのうち中国国内のキリスト教徒は約6700万人です。政治的な問題で自由に信仰するのは難しい状況であるにも関わらず、中国国内の信者数は上昇傾向にあり、2030年には世界最大数のキリスト教徒を抱える国になる可能性もあるそうです
 そんな、「隠れたキリスト教大国」でもある中国ですが、普及のきっかけは16世紀(明代)、マテオ・リッチらイエズス会の宣教師によるによる伝道活動がきっかけでした。しかし、それ以前にも、一時的ではありますが中国国内にキリスト教信者が多数存在していた時代がありました。
 それが唐代です。

 中国に初めて伝わったキリスト教は、ネストリウス派の流れをくみ「景教けいきょう」と呼ばれていました。
 その景教を伝えたのがソグド人。ソグディアナと呼ばれる地域出身のイラン系民族です。このソグディアナは、今のウズベキスタン共和国にあるサマルカンド州やブハラ州、タジキスタン共和国のソグド州辺りになります。
 ソグド人は、商人として有名な民族でしたが、それだけでなく各地にコロニーを作り、様々な国家に文化や宗教、政治など多方面に亘る影響を与えました。彼らの信仰していた宗教は主に三つ。ゾロアスター教(祆教けんきょう、マニ教(明教みんきょう、キリスト教(景教)で、これらを総称して三夷教さんいきょうと呼びます。
 この三夷教の一つ、景教が今回のテーマです。

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