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大阪と名古屋


はるばる大阪まで好きなバンドのライブを観に行き、ライブ後の疲れた身体で松屋に入ると店員さん同士が初対面の挨拶を交わしていた。はじめまして。○○と申します。よろしくお願いします。2人が同時にぺこぺこお辞儀をしている。何気ないけれど人生の本質のようなシーンだと思い、それがなぜだか嬉しかった。

大阪にもわたしのように靴ひもを結び直したり、ペットボトルのキャップを落としそうになったりする人がきっといる。旅先では生活を俯瞰できる。新幹線のちいさな窓から、高速で過ぎ去っていくどこかの住宅街を見つめた。



2日目は名古屋に移動。ライブの前にともだちとプラネタリウムに行き、春の名古屋から見える夜空、カストルとポルックス、宮沢賢治の双子の星、連星などを学んだ。視界いっぱいの星空に飲み込まれそうになる。賢治の双子の星では、主人公のチュンセとポウセが一晩中笛を吹くおかげで宇宙の星たちは輝ける。ふたりが笛を吹かないと、宇宙は真っ暗闇になってしまう。

わたしはライブ中だけ、星になった。核融合反応を起こす恒星になった。自ら輝き続けた。

ホテルまでの帰り道、曇り空で車通りが多く、星がひとつも見えない名古屋をぼんやり歩く。街もわたしも暗闇を抱えている。そして何度でも笛の音を探す。あなたが笛を吹き続ける限り。

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