プライマリ・ケアでのエビデンスの社会実装について思いをはせつつ、個人レベルの振り返り。

研究でエビデンスが出てから、社会実装implementationされるまでは、17年かかる。介入試験などでエビデンスが蓄積されたものと、実際に社会で行われていることの間に差がある。これをevidence-practice gapと呼ぶ。
それを埋めるために、なぜ実装されていないかを解き明かす実装科学implementation scienceという研究分野がある。

今回は自分が普段意識しているエビデンスを主観的に実施できているか、実施できているかどうかを客観的に測定できるかどうかについて、考えてみる。

エビデンスがあるもの

各疾患の管理

・主観:ガイドラインを頭に入れつつ、多疾患併存との兼ね合いや性格や状況に応じて緩急つけてやっているつもり。
・測定方法:
各疾患の管理目標の達成状況は測定できそう。
ただ、薬での管理には限界があり、各患者の生活習慣(喫煙、飲酒、食事、運動)の影響がある。
生活習慣についての介入について考えると、行動変容がkeyではあろうが、医師対患者の個人レベルでの指導には限界があるか。実際に行動変容が起きたかどうか、どう測定したらよいのかは、軽く検索してもあまり見つからなかった。もうちょっと詳しく考えたい内容。

エビデンスが患者のもとに届くまでに減衰してしまう図https://www.researchgate.net/publication/270711187_The_paths_from_research_to_improved_health_outcome

継続的なケア

ケアの継続性にはinformational, managerial, and relational.に加え、longitudinal, interpersonal, geographic, and familial continuityがある。


 Continuity of Care: A Primer for Family Medicine Residencies PMID:38055847

1. informational continuity
カルテなど情報の継続性、エピソードとプロバイダーの間の関係で、患者との関係は含まない
2. managerial continuity
チームとしての継続性。interdisciplinary or team-based continuityを含む。
3. relational continuity
患者との関係の継続性のこと、以下の2つに分けられる
 -longitudinal continuity 1人の臨床医が長く関わること。多くの家庭医がこのパターン
 -interpersonal continuity 患者と医師が信頼・尊敬のパートナーシップを築くこと。家庭医の究極の形。
4. family continuity
家族、何世代化にわたってのケア
5. geographic continuity
病院、自宅、外来、施設などで同じ患者を継続性

・主観:私の地域・体制ではすべての種類の継続性を行えていそう。
・測定方法:
あんまり統一された測定方法はないらしい。
Jee SH, Cabana MD. Indices for continuity of care: a systematic review of the literature. Med Care Res Rev. 2006;63(2):158-188.
Usual Provider of Care (UPC)が有名ではある、1年間に何度主なプライマリケア医の診察を受けたか。

予防医療の提供・推奨

USPSTFに基づくもの+胃がんは日本独自で考える必要あり


・主観:自分の慢性疾患外来テンプレがあり、喫煙、飲酒、健診受けているか、日本の主要がん検診(胃癌、肺がんXp、便潜血、乳癌、子宮頚癌)は項目を埋めるようにしている・市町村健診の時期の前に薦めるようにしている。人間ドック受けている人は、エコーの大動脈瘤あるか確認している。保険医療適応がある人(慢性肝疾患のエコー)ついでに大動脈瘤スクリーニングはやっている。保険診療適応がない人への自費検査ルートはまだ作れていない。(取り組むルートを作りたい。)
・測定方法:実施率?
一方で、予防医療・検査を行うことの不安が強くなったり、検査自体を患者が望まなかったりする。定量的な評価が個別化の評価は難しそう。
カルテレビューして実施率をまとめたりしてもいいかもしれない。

患者中心の医療の方法

第4版がでたんですね。
Stewart, Moira, et al. Patient-centered medicine: transforming the clinical method. CRC press, 2024.

良いアウトカムに繋がる
• Enhances patient satisfaction
• Improves patient outcomes
• Has a positive impact on health care utilization costs
• Is associated with positive benefits for health professionals such as greater job satisfaction
• Is associated with fewer malpractice claims

・主観:一応実践しているつもりではある。
・測定方法:
patient experienceの測定?
Japanese version of Primary Care Assessment Tool(JPCAT)
プライマリ・ケア外来なので、JPCATによるpatient experience測定。他に診療科を選ばないpatient experience測定もあり。測定してみたいが時間あるか?研究費とか取ってデータ集計委託できないか?


https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27001107/

プライマリ・ケアでのevidence-practice gapの原因についてのレビューのシステマティックレビュー。
取り上げられていたレビューにはガイドラインの実施、新しい役割の統合、技術の実施、公衆衛生、予防医学など、幅広い項目があった。

そもそもの自分が意識しているプライマリ・ケアエビデンスを振り返るのにもよいかもしれない。
医師個人のみの観点で振り返ってしまったので、もう少し上の論文中の阻害因子の図のように幅広いコンテクストで振り返ったら良かった。

なんだかまとまりがない文章になってしまった。
文章をまとめる能力も鍛えたいですね。

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