見出し画像

ロマンポルノと対峙した日々(「あの頃、文芸坐で」外伝)【19】年末番組、藤浦敦監督の温泉ポルノ「快楽温泉郷 女体風呂」

81年末、12月12日。正月番組前の当時のブロックブッキング制度の邦画は各社ヒットするアテもない映画が公開されていた。正月番組に力を入れる前の師走の中で安っぽい番組が流れていたと言ってもいい。それは、ロマンポルノも同じであった。この日は、なぜか封切り作品を「池袋北口にっかつ」で観ている。番組は「快楽温泉郷 女体風呂」「女教師を剥ぐ」「ドキュメントポルノ 指いじめ」で、後の2本はピンクからの買取作品だ。多分、三崎奈美と夏麗子の主演作ということで時間もあり観に行ったのだと思う。夏主演の方は高橋伴明監督、もう一本が鴨田好史監督だったのも大きかったかもしれない。とはいえ、当時の評価を見ると、藤浦監督の温泉ものは最悪だったみたいだし、他も評価はいまいち。ロマンポルノというのはそういうことが多かった。ただ、当時としては堂々と女性の裸体をみられるところだったので興行が成り立っていたということなのである。

「快楽温泉郷 女体風呂」(藤浦敦監督)

藤浦敦監督といえば、温泉ものか、海女ものというイメージである。地方ロケのこれらシリーズは季節ものでそれなりにお客さんは入ったようで、ただのコメディであることが多いのだが、それにしても作品の質は常に低空飛行だった。あらすじを見ると、埋蔵金が眠るとの噂で温泉地に人が集まってきて、温泉の買収話も絡んでの大騒動という話。脚本は、この頃よく出てくる伴一彦。なんとなく記憶があるが、他の映画と混じっているのは確かだ。主演の三崎奈美は、温泉に来た心中カップルの片割れ。旅館の女将が風間舞子という布陣。まあ、私的には三崎奈美がみられればよかったのだろうと思う。それ以外の興味で、今になって見返したい映画でもない。伴一彦といえばこの前、亡くなった田村正和主演の「パパはニュースキャスター」が出世作であったりして、このお仕事はその前のお仕事なわけで、古い話ですね…。でも、この辺りの習作があって、伴さんはヒット作の脚本家になられたわけですよ。

「女教師を剥ぐ」(高橋伴明監督)

男性経験がない女教師、夏麗子をめぐる話らしい。ピンク映画に関してはプレスがまともに存在していないせいもあり、作品自体がほとんどちゃんと調べられない。夏以外の出演者は、竹村祐香、忍海よしこ、山路和弘、中根徹と、まあ当時のピンク映画の若手陣というところ。伴明監督の映画はそれなりに記憶に残っているものが多いのだが、この映画については、夏麗子のポスターのいでたち以外は覚えていない。まあ、つまらなかったのだろうと思う。

「ドキュメントポルノ 指いじめ」(鴨田好史監督)

鴨田監督の作品が買取の三本目としてついているときも、よく劇場に足を運んだ気がする。それなりのテイストを保っていた監督だったからだ。水月円主演ということで、なんとなく観た覚えがあるが、全く話は覚えていない。だいたい、この当時、「ドキュメントポルノ」と名のつく映画が多いのだが、ドキュメントであるわけもなく。大体が、女が騙されたり、犯されたりすることで事件が起きて、性的なもの取り憑かれていく男女みたいなものが描かれていることが多かったよね。そういう点では、ピンク映画の方が、色も少ないロケ撮影だし、リアルに裸を見るみたいな体感はあったのかもしれませんね。あくまでも、当時の映画館は女性の裸体を見せる場所だったと思いますので。

とにかく、この年末にこんなプログラムで封切りを見に行ってるわけで、次の年にはもっと多くのロマンポルノを観る流れになる私である。まあ、その記憶がかなり曖昧なわけだが、記憶を掘り出して、この連作は続けていきたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?