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映画『シライサン』感想など

私が人生で1番たくさん本を読んでいたのが中学生〜高校生の頃でした。

オタクだった私の愛読雑誌は「ファンロード」。この雑誌は読者が投稿したアニメや漫画に関する葉書やイラストで形成されており、そんなファンロード内に、読者がオススメの本を紹介するコーナーがありました。

そこで乙一さんの『夏と花火と私の死体』が紹介されていたので興味を持ち、読んでみたのがきっかけだったような記憶があります。


説明も要らないぐらいに有名な作品ですが、この『夏と花火と私の死体』という作品は死体である主人公の目線で物語が進んでいくというユニークな作風と、その内容の面白さ、そしてそんなやばい作品を作者の乙一さんはなんと16歳の若さで書き上げたというとんでもないものです。


これがあまりに面白くて衝撃を受けた私は、それから乙一さんの作品を地元のBOOKSなかだをはしごしてコツコツ集め、最初に出たものと文庫版で内容が変わっているものなら両方とも集めて読み比べたし、雑誌版と単行本で内容が違うものは国立国会図書館で雑誌のバックナンバーを読ませてもらったし、とにかく狂ったように乙一さんの作品を読み漁りました。

(乙一さん以外では、高校の図書室で”きたのじゅんこ”さんの美麗なイラストに惹かれて読んだ『囁きシリーズ』をきっかけに、綾辻行人先生の作品も好きになって読んでいました。)



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(コレクションの一部)


乙一さんの作品が好きなところは、まず読みやすいのでするする読める、面白いので夢中で読んでしまう、苦手なグロシーンがあってもそれを凌駕する満足度、予想を裏切る大どんでん返しや見事な伏線回収に「やられたー!」となるのが気持ち良い、あとがきが愉快なところなどです。



特にやっぱり「やられたー!」感を味わえるのが毎回楽しみで、しかしそれが楽しみということはつまり「来るぞ…来るんだろ?」とどうしても身構えながら読んでしまうんですけど、大抵「ラストのどんでん返し!」などと言われて観た映画はそのせいでオチが読めてしまうのに乙一さんの作品はそんな事を考える隙がないぐらい夢中で読んでしまうし、仮に「何か来るぞ」と分かっていてもそれを超えたものを見せてくれるので毎回しっかり楽しめるし安心してびっくりできるのです。


面白いお話は伏線の張り方がうまいし、全てのシーンに意味があって最後にそれが一つに繋がるのに、それぞれの仕掛けがわざとらしくなくて自然に描かれていて、それでいて後からハッとなるよう、しっかりと印象に残る描き方をしているので凄いなぁといつも感動しちゃいます。



前置きが長くなりましたが、今年の1月に、そんな私の大好きな乙一(安達寛高)さんが監督・脚本を務めるホラー映画『シライサン』が公開されたので、舞台挨拶を観に行って参りました。(東京だけかと思っていたら、大阪にも来てくださって本当に嬉しい!ありがとうございます🙏✨)


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(以下は、私なりの感想ですが、素人なので解釈違いや記憶違いなど色々あるかもしれません。単なる感想としてお手柔らかに読んでいただければうれしいです。)(核心的なネタバレは避けますが、微バレご注意下さい。)




ジャンルとしては『リング』のような呪いが伝播していく系統のお話なんですが、乙一節や現代的な要素も散りばめられていてさすがの面白さでした!キャストの皆さんもとても良い✨



この恐怖を伝播させたいけど見る人の初見の面白さも奪いたくないので、ネタバレに気をつけつつ上手く宣伝をするのが難しいのですが…(笑)
この作品はスクリーンの向こう側からこちら側の世界も巻き込んでくるところが非常に上手くて、観た人はこの作品を広めなくてはいけなくなる仕掛けがあるんです。



キャッチコピー通り、シライサンさんに会ってしまったら、この恐ろしいシライサンから目を逸らすと死ぬのです。最初はシライサンの顔が怖すぎて、映画を見ている私は目を逸らしちゃうんだけど、話が展開して「目を逸らしたらダメ」って判ると映画を観ている自分もつい目を逸らさないようシライサンをガン見しちゃう。そういう画面の中と外の境界を取り払う仕掛け(?)が色々あるように感じられて、凄いんです。



それから今の時代ならではの、SNSだったり承認欲求だったり、そういうものも上手く絡めてあって、ただ何も考えずに観ても普通にホラーとして楽しめるけど、そういう細かなところにも色々「おっ」て思いながら観ると尚楽しかったです。



そして今回も、どことは言えませんがしっかりやられてしまって、「そうきたかー!やられたー!悔しいー!気持ちいいー!!」ってなりました。最高。



その他見どころとしては、せつなさやシュールさ、伏線の巧みさなど、安定の乙一節が楽しめます。(吊り橋効果のくだり、大好きです…笑)
そして暗闇から幽霊ドーン!キャー!でなく昼間でもシライサンは現れます。監督曰く、キャストが悲鳴をあげることで恐怖を発散させてしまうのを避けたかったそう。





その後、映画を見終わったので、『シライサン』の小説版を読みました。読んだら更なる「やられた〜!」を味わってしまった😭‼️

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私的には映画を観て、「やられた〜!」を体感してから小説版を読むことをオススメしたい!映画では分からなかったことも判るし、映画と異なる展開もあるので是非読んでほしいです。(更なる謎もあるけどそれもまた良い…)


…と、ネタバレなしで言えるのはこれぐらいですが、とにかく最後の最後までしっかり堪能して、観終わったらみんなに広めて欲しい!(願わくばヒットしてもらって続編が観たい!)と思います。



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DVD、Blu-rayも発売されたので、見逃した方も是非!

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