![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/122969866/rectangle_large_type_2_94fc906982798abccc090c88cd843062.png?width=800)
君と僕の行方 ~Prologue~
___恋とは、苦しみだ。
しかしそれを得たことのない者は不幸であると思う。
___そして、それを失ったことのない者もまた...不幸であると思う。
――――――――――――――――――――
『ごめん、〇〇の事は好きやけん...友達以上には考えられない...これからも友達じゃ...だめ?』
脳内で何度もフラッシュバックする言葉。
今日、ずっと大好きだった人に告白した。しかし結果はこの通り惨敗。
思い描いていたものとかけ離れていた彼女の答えが与えたダメージは想像以上に深刻だった。
〇〇:...好きなのにだめって...どういうことだよ...
ベッドの上で呟く。返答などあるはずもない。
__嗚呼、この世は無情だ。欲しいもの一つ手に入らないとは。
________________
君と僕の行方
~Prologue~
________________
翌朝。いつも通り登校し、ある場所へ向かう。放送室だ。
放送委員である僕の朝の仕事。鍵を開け中に入り、機材を操作して音楽を流す。
この空間が好きだった。昨日までは。
〇〇:...そろそろかな。
時計を見るのと同時に背後の扉が開く音がする。
____彼女だ。
ひかる:...おはよ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/122980505/picture_pc_aca4c99d57e0666448df6365c1582e7f.png?width=800)
〇〇:...おはよう。
彼女は森田ひかる。同じ中学校に通う同級生で、同じ放送委員。
__昨日告白して惨敗した相手だ。
ひかる:今日も寒いね...来る時大丈夫やった?
彼女はそう言うと僕の隣に腰かけ、ヒーターに手を翳し、こちらを見て微笑んだ。
〇〇:うん...今日は厚着してきたから。
いつもの何気ない会話。まるで昨日の事などなかったかのように進む時間。
今の僕には苦痛でしかない。
ひかる:...昨日はごめんね?
そんな僕の気持ちを悟ったかのように彼女が言う。
ひかる:...恋人にはなれないけど...〇〇の事は大好きやけん...本当だよ?1番の友達やと思っとる。
〇〇:うん...分かってるよ...
彼女の言葉が嘘でないことなど分かっている。
分かっているから、辛いのだ。
ひかる:...〇〇にはきっと、私なんかよりもっといい人が見つかるけん、きっと大丈夫。
これを本心で言っているのなら逆に悪意だ。もちろん彼女はそんな人ではないが。
〇〇:ひかるよりいい人なんて...いないよ...
思わず口をついて出た言葉に彼女は困ったように笑う。
ひかる:〇〇...
〇〇:...ごめん、困らせるつもりはなかった。ただ本当にそう思っただけ...
ひかる:ふふ...いいんよ?その気持ちは嬉しい。
彼女には1番の友達ではなく...恋人であって欲しかった。しかし彼女がそう思えないのなら仕方ない。燻る気持ちを必死に抑える。
予鈴が鳴る。そろそろ朝礼の時間だ。
ひかる:...行こっか。
〇〇:うん。
僕達は放送室を後にし、教室へ向かう。
席に着くなり、隣が騒がしい。
??:おっ、〇〇おはよ!今日も仲良く登校か?
ニヤニヤしながら話しかけてきたのは親友の京介。幼稚園からの幼馴染だ。
〇〇:別に...そんなんじゃない。
京介:おいおい...そんな顔すんなよ...冗談だって...それより隣のクラスの✕✕、藤吉さんに告白してフラれたらしいぜ!
〇〇:まぁ...藤吉さんは鉄壁だしな...
京介:✕✕モテるからいけるかと思ってたんだけどなー。ところで、そういうお前はどうなのよ?
〇〇:何が?
京介:とぼけんなよ...森田と最近どうなの?
〇〇:どうって...別に普通だよ。
平常心を保てた自分を褒め讃えたい。今1番聞かれたくない話題だ。
京介:普通ってお前...毎日一緒に登下校して、あんなに仲良さそうにしてて、付き合ってないって...正直変だぞ?
〇〇:いいんだよ...このままで。
変だよ。そんなこと僕が1番わかってる。
実際僕は彼女のことが好きで、告白してフラれているのだ。悲しい事この上ない。
京介:まぁ...お前がそれでいいならいいけどさ...
つれない返事に飽きたのか、京介は大人しく席につく。ちょうど先生が入ってきて、朝礼が始まった。
___今日も退屈な一日が、始まる。
_________________
授業も終わり、放課後。僕は1人放送室にいた。もちろんこれも放送委員の仕事なのだが、部活に所属していない僕は放課後ここで本を読むのが好きだった。
いつもならひかると2人で談笑したり、オススメの本を教え合ったりして過ごすのだが、今日は僕ひとりだ。鍵のかかっていない扉を開け、中に入る。
機材を操作し、下校の音楽を流す。もの寂しい音楽と雰囲気のせいで、昨日のことがまた思い出される。
〇〇:...何が足りないんだろうな...
ひかる:...何か足りないん?
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/123513993/picture_pc_128c6f4ab6ebf1e6c4e0d572173d219d.png?width=800)
〇〇:わっ!?ちょ...いるなら言ってよ...
物陰からひかるがヒョコっと顔を出す。
ひかる:びっくりさせようと思って。
〇〇:おめでとう...大成功だよ。
ひかる:...えへへ。
彼女は嬉しそうに僕に抱きついてくる。これは幼稚園の頃からずっとそう。嬉しい時も悲しい時もこうしてくる。
しかし、思春期真っ只中の中学生男子にこれはなかなかキツい。しかも彼女には昨日フラれている。
ひかる:...そう言えば、言わないけんことあるの。
〇〇:なに?
彼女は僕に抱きついたまま、少し俯く。
ひかる:...私...その...彼氏...出来た。
〇〇:...えっ!?
__僕の心臓は今までで1番大きな音で鳴った。
_____________be continued.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?