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Missing 第3話
ひ・天:おはようございますー!
夏鈴:おはよー、朝から元気やな2人共。
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天:夏鈴ー!会いたかったでー!
あの信じられない出来事から3日が経ち、今日は天と私、そして同じグループメンバーの藤吉夏鈴の3人で雑誌の撮影だ。
夏鈴:んもぅ...天!あんまひっつかんといてや...
天:えへへー、そんなこと言って嬉しいんやろー?
あの日から天は前以上に元気だ。
私も、悪夢に苛まれることがなくなり、穏やかそのもの。
夏鈴:もー!ひかるも笑ってないで助けてや...
ひかる:ふふっ...私も会いたかったで?
勢いに任せて私も夏鈴に抱きついてみた。
夏鈴:うー...ひかるまでホンマにどうしたん!?さてはなんかいい事あったやろ?
夏鈴は鬱陶しそうにしつつも笑ってる。こういう時はグイグイいっても大丈夫。
ひかる:あ、いや...3人のお仕事久しぶりだなぁって思ったら嬉しくて...
誤魔化したように聞こえたかもしれないけどこれは本当。
"櫻坂46"としてデビューして間もない頃は、仕事は殆どこの3人セットだった。
夏鈴:まぁ、ええわ。私も楽しみやったし、頑張ろな?
私たち3人は顔を見合せ、笑顔で現場へ入る。
あの頃より少しだけ成長したお互いを讃え合うように__
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第3話
遭遇
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その後撮影は順調に進み、予定通りに終了した。
天:終わったぁー、お疲れ様でしたぁー!!
夏鈴:あのさ、2人共この後暇ならご飯行かへん?久しぶりやし。
おやおやこれは珍しい...夏鈴様からお誘いになるなんて。
天:えっ!?珍しいやん夏鈴が誘ってくれるなんて!もちろん行く!
ひかる:私も行くよー。
そんな訳で、3人で食事に来たわけなんですけども...
??:あ、3人ともお疲れさまぁ〜。
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お目当てのお店の前に、よく知る予期せぬ人物。
天:え!?れなぁ!?なんでここに?
夏鈴:ウチが呼んだ。
ひ・天:...ほ?
そう、そこにはグループメンバーの守屋麗奈がいた。
麗奈:とにかく中入ろ?予約してあるから!
突然のことに少し混乱したが、メンバーだし不自然ではないよね。
夏鈴が呼んだってのがちょっと気になるけん...まぁいいか。
予約してもらっていたらしい個室の席に座り、注文を済ませたところで、私の気持ちを天が代弁してくれた。
天:...で、なんでれなぁがおるん?
麗奈:ふふ...それはねー?夏鈴が話してくれるよ?
"夏鈴"...?麗奈ちゃんって夏鈴の事呼び捨てしてたっけ?
嬉しさを隠せない、といった表情の麗奈ちゃんとは対象的に、夏鈴は俯いて、
夏鈴:...実は私達.........その...付き合っ...た...。
とんでもない一言を絞り出した。
ひ・天:.....えーーーーっ!?
私達は目を剥いた。さっきから予想外のことばかりだ。
麗奈:うふふっ...そういうこと♡
ちょちょちょ...ちょっと急過ぎん!?しばらく会っとらん内に何があったと!?
...まぁ落ち着きなさいよひかるさん。何も悪い知らせじゃなかよ?
頭の中で2人の自分が会話しているような気がした。その通りだ。一旦落ち着こう。
ひかる:...ていうか、お互い好きだったことすら知らんかったけん...驚いたわー...でもおめでとう!
素直に祝福の気持ちを口にした。もちろん本心だ。
天:ね!ホンマにびっくり!2人ともおめでとーーー!!!じゃあ今日はお祝いや!!
お祝いムードの中、とてもいい雰囲気で食事が進む。それにしても...
天:それにしてもさ...どっちからアタックしたん?
また天が私の気持ちを代弁してくれる。
麗奈:夏鈴が猛アタックしてくれたの♡
夏鈴:ちょっと麗奈...恥ずかしいやろ?
麗奈:えー?だって本当の事だもん!もしかして照れてるのー?可愛いー♡
耳まで真っ赤になる夏鈴の腕に抱きつき、幸せそうな麗奈ちゃん。夏鈴の肩に頭なんか載せちゃって。
...えっ...ちょっとラブラブ過ぎん?こんな顔真っ赤な夏鈴初めて見た...
天:えー!夏鈴から!?意外!
ひかる:そういうタイプじゃないと思っとった...。
夏鈴:言われると思ったわ...
そう言うと、夏鈴は私たちの前にスマホを掲げた。
ひかる:...!?
天:...え?そのストラップ...
既視感と共に恐ろしい違和感が私と天を襲った。
夏鈴:...笑わんで聞いてや?実はその...このストラップ...恋愛...成就?のお守りなんよ...これ買ってから...ちょっとずつ距離縮めれたような気が...する。
麗奈:可愛いでしょー?麗奈もお揃いで持ってるよ♡
2人の持っていたのは小さなうさぎのストラップ...
それはあまりにも...ストラップの姿のピーターにそっくりだった。
ただ一つ違うのは、夏鈴たちが持っているストラップのうさぎは、黒だった。
今年の干支は卯だから、デザイン自体は何ら不思議ではないんやけど...
そのストラップを見た瞬間、とても嫌なものを感じた。言葉では説明出来ない。何か...その空間が澱んでいくような嫌な空気...
ひかる:...そっ、そうなんや...可愛いね...
私は2人にバレないよう天に目配せする。少し不安だったが伝わったらしい。
天:あ!そうだひかる、お手洗い行かへん?
ひかる:あっ、ちょうど私も行きたかったんよね、ごめん2人とも、ちょっと行ってくるけん。
夏・麗:はーい。
上手くその場を離れ、私たちは一旦店の外に出た。
天:ひかる...あのうさぎ...
ひかる:うん...あれは何かちょっと嫌な感じがした...
天:やっぱりひかるも!?しかもピーターにそっくりやったし!
ひかる:...うん。何なんかな、あれ...
ピ:...どうやら私の出番のようだな。
私の鞄からピーターがひょっこり顔を出す。
ひかる:ピーター!?着いてきてたん!?
ピ:色々と聞きたいことはあると思うが、とにかく今は時間がない。私の言う通りにしてくれるか?
ひかる:わ、わかった...
天:うん...
ピ:まずは今すぐこの場を離れろ。
天:えっ?でも...
ピ:もちろん状況は分かっている。その上で言う。ここから離れるんだ。
ピーターの語気が強くなる。私たちは只事ではないと感じ、帰り道へと歩き出した。
幸い、お互い荷物は全部持ってきている。焦燥感が湧き上がり、自然とお互い早歩きになっていた。
天:でも...一体何が起きてるんだろう...
ひかる:わからん...でも今はピーターを信じよ?
15分ほど歩くと、ピーターの声が。
ピ:...ここまで来れば大丈夫だろう...まずは2人とも、すぐに状況を説明出来ず、すまなかった...思ったよりも危険な状態だと判断した為だ。
ひかる:それは大丈夫やけん...何があったか説明してくれるんよね?
天:私にも分かるように簡単にお願いします...
ピ:あぁ...もちろんだ。
私たちは近くの公園のベンチに腰掛ける。そろそろ日が沈み始めることもあり、人気は無い。
ピーターは鞄から飛び出し、私の膝の上に乗った。相変わらずもふもふで気持ちいい...じゃなかった。今はそれどころじゃない。
ピ:...簡潔に言おう。先程まで食事をしていた君達の友人が持っていたもの...あれはとても危険なものだ。
そう言われて、やっぱりか、と思った。私だけでなく天も感じていた違和感。
ピ:初めて私と会った時"サクラ"というものについて話したことを覚えているか?
私たちは無言で頷く。ピーターの話を遮らないように。
ピ:私たちの世界では"サクラ"は伝説に近い存在だと言ったな?では具体的にはどんなものなのかをまずは話しておく。
彼はそこで一呼吸置いた。
ピ:その正体は、"高純度のエネルギー体"だ。対象に無限の力を与えるもの。
...簡潔に言うなら"願いを叶える力"と言ったところか...。もちろん先程も言ったように、伝説に近いもので、私も実際目にしたのは君たちに出会ってからだ。
私は7つ集めると何でも願いを叶えてくれる玉の話を思い出した。もちろんこれはアニメの世界の話だが。
ピ:"サクラ"は本物の絆が生まれた時にだけ現れると、私は考えているが、どこにでも誰との間にでも生まれるわけではないとも考えている。
君達のケースは極めて稀だったという訳だ。
しかし事実として、君達の絆が生んだ"サクラ"の力によって私は少しではあるが力を取り戻した。あの時は私の"力を取り戻したい"という具体的な願いに反応したのだろう。
...話を戻すぞ?君達の友人が持っていたあの黒いうさぎ...あれは私と同じように異世界から来たものだ。
ひかる:...
もう黙って頷くことしか出来ない。
話の内容は大方理解出来たとは思うけど、問題は、何故夏鈴と麗奈ちゃんがそれを持っていたのか...
ピ:ここからは私の推理でしかないが、あれは"サクラ"を手に入れ、自分のものにしようとしている...この世界の人間達の中で強い絆を生みそうな人間を探し、"サクラ"が現れるのを待っているのだと思う。
ひかる:それが、夏鈴と麗奈ちゃんだったってことね...
ピ:...微弱ではあるが、あの二人から君達に似た不思議な力を感じた。ただ少し歪な気配も感じたがな...
天:...でもさ、夏鈴が麗奈のこと好きやったなんて、ひかるも私も知らんかったやん。
私たちは夏鈴にお互い相談してたのに...ちょっと納得いかん。
天は口を尖らせる。でもこれには私も賛成。
夏鈴がいくら奥手で恥ずかしがりだとしても、今まで誰にも気付かれなかったのは不自然だし、そもそも麗奈ちゃんにアピールなど出来ないはず。
ピ:それなんだが...恐らくあの黒いうさぎは、好意を持った人間同士を強く引き合せるよう仕向けている。そうして絆を生ませ、我がものとする算段なのだろう。
そうか...だから夏鈴は"お守りで勇気出た"って言ってたんだ...
もともと麗奈ちゃんの事が気になっていたが、勇気がなくて近付けなかった夏鈴をあの"お守り"は利用した...
ひかる:でも夏鈴はどうやってあのお守りを手に入れたんやろ...
天:...どこかで買ったって言うとったな。だとしたらそこの人めちゃくちゃ怪しいやん。
私も天も夏鈴に会うのは久しぶりで最近の動向を掴めていない。
ピ:...確かめに行くか?
ひかる:えっ...?どうやって?
ピ:度々すまないが、説明している時間がない。2人とも目を閉じてくれ。
天:...ひかる...
ひかる:言う通りにしよ?大丈夫、2人なら。
不安げな天の手を取り、私は目を閉じる。
次の瞬間、私たちは目を瞑っていても分かるほどの強い光に包まれた__
ひ・天:...!!!!!
ひかる:...ん...
天:...ここは?
目を開けると、見覚えのない場所にいた。目の前に大きな赤い鳥居。
ここは...神社?
ピ:ここは2日前のとある神社だ。
ひ・天:...へ!?
ピ:...私の力で君達を過去へ飛ばした。この地点からあの邪悪なものの気配が生まれている。
おそらくあの少女もここに訪れるはず...
天:えっと...つまり私たちその...タイムスリップしたってこと!?
ひかる:...信じられんけんそうみたいやね...
慌ててスマホを見ると、2日前の日付が表示されている。
前回の時もそうだったが、ピーターは時間を操るような力を持っているみたい...まさにファンタジーだ。
天:...で、ここに夏鈴が来るの?
ピ:恐らく...。目につかないところに隠れよう。見つかると面倒なことになりかねない。
私たちは神社の脇の茂みに身を隠す。なんかマンガみたいな隠れ方だな...
天:...結構バレバレな感じするけど、大丈夫なん?
ピ:ある程度身を隠せていればあとは私が何とかするから問題ない。
天:...ピーター割と万能よね...
そうこうしていると、足音が聞こえてきた。
ひかる:...!!夏鈴...ホントに来た...!
ピーターの言う通り夏鈴が一人でやってきた。辺りの様子を何度も伺っているみたいだ。
夏鈴はキョロキョロと周りを伺いながら神社の本堂に近づき、賽銭箱にお賽銭を投げ入れ手を合わせる。恐らく恋愛成就を祈願しているのだろう。
しばらく経つと、右手の方から人影が。
??:ずいぶんと熱心に祈願なさっていますね。
奥にあるお守りなどを売っている小さな建物から出てきた人影。服装からして巫女さん...マスクをしているので顔までは分からない。
夏鈴:...
巫女:...当神社には縁結びの神がいらっしゃいます...何か恋のお悩みですか?
ピ:...どうやら"あれ"が元凶のようだな...
ピーターの声がいつもより少し緊張しているのが分かる。確かに、あの巫女さんが出てきてから、
場の空気が一気に変わった。重苦しい...?何かが
絡みついてくるような嫌な空気。
巫女:...あら、私としたことが初対面の方に馴れ馴れしくしてしまい申し訳ございません。これにて失礼させていただきます...どうか祈願が成就しますように...
夏鈴は先程から何も話そうとしない。突然のことに驚いているみたい...?
巫女:...当神社自慢のお守り、ご用意しております、もし宜しければごらんになっていってくださいね。お代はお気持ちで結構ですので...
巫女さんは去り際にそう言って微笑む。こちらを見ているような気がしているのは気のせいではないと思う...やばいんやない?これ...
ひかる:...ピーター...私たちバレてるかも...
ピ:...だろうな...2人とも、いつでも走れるように準備しておいてくれ。
ひ・天:...え?
ピ:...決定的な瞬間を確認するまでは、彼女が元凶だと断定は出来ない。気付かれるのは覚悟の上で限界まで見届けるつもりだ。君たちを危険な目には合わせないと誓おう、安心してくれ。
天:...いざとなったら守ってや?ピーター。
そんな会話をしている内に、夏鈴は吸い込まれるようにお守り売り場へ行き、何かを手に取った。
ひかる:...!あれって...!!
そう、夏鈴が手に取ったのはあの時見せてくれた黒いうさぎのストラップ。
ここで買ったものだったんやね。
夏鈴は代金を払い、何だか落ち着かない様子で神社を後にした。その手から黒いうさぎのストラップが2つぶら下がっているのが見える。
ピ:...さて、来るぞ。2人共覚悟はいいか?
ひ・天:...!!
巫女:...あら...随分可愛らしい侵入者ですこと...
無理やり身体を動かされたような感覚に顔を上げると、私たちは先程隠れていた茂みの中ではなく、神社の中心に立っていた。
5メートル程先に"彼女"が現れる。文字通り『何も無いところから』。
巫女:...念の為確認しておきますが、迷子ではありませんよね?
私は圧倒的な威圧感に後ろに倒れそうになるのを必死にこらえた。背中を汗が伝う嫌な感触。
巫女:...どちらにせよ、見られてしまったのなら生かしては帰せません...無関係なら少し気の毒ですが...仕方ありません、よね?
次の瞬間、彼女の周りに黒い靄が現れ始める。
突如襲ってくる寒気?身体の底から湧き上がる恐怖...?やばい、これ、動けんかも。
ピ(...かる、ひかる!走れ!)
ひかる:...っ!!!...天!逃げるよ!
天:...!!
頭に突如ピーターの声が響く。私は天の手を引き神社の出口、鳥居へと走る。境内に響くあの巫女さんの笑い声。しかし追ってきている気配は感じなかった。
鳥居をくぐると、私たちはまた眩い光に包まれ、先程の公園に戻ってきた。
ひかる:っ!!はぁっ...はぁっ...
天:...さっきのは...何?
息も絶え絶えで浮かぶ疑問の数々。しかし頭に酸素が回っていないのか何も思い浮かばない。
私たちは安堵から、その場にへたりこんでしまった。
ピ:...ひとまず無事でよかった。まさかあれほどとは...危ない目にはあわせないと言っておきながら、怖い思いをさせてしまってすまなかった...
ひかる:ううん、あそこで声掛けてくれんかったらどうなってたか...ありがと...
天:怖かった...一体何が起きてるの!?
ピ:どこか落ち着ける場所で話そう。
ひかる:...じゃあ私たちの家まで帰ろうか。
天:...さっきの人追っかけてきたりしぃひんよな?
ピ:...今は気配を感じない。
それを聞いて少しホッとしたけん、ホントに何だったの...?御伽噺の次は怖い話?私怖いの苦手やねんけどなぁ...
そんなことを考えながら私と天は帰路に着く。
事態が自分たちの想像を遥かに超えていることを知るのは、もう少し後になってからだった...
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??:...妾の結界に無断で入っただけでなく、あっさり出ていくとは...何者じゃあの2人...それにもう1つ気配はしたが姿を見せぬ...何にせよ久しぶりに楽しめそうじゃの...フフフ...アッハッハッハッハッ...
___誰もいない神社に"彼女"の笑い声がこだまする...
_____________be continued.
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