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審査組織の本来の機能と存在意義の是非について考える。

・皆さん、お元気ですか?今回の三連休もあっという間に過ぎ去ってしまいましたね。

・さて、本日のテーマは、「与信管理」のど真ん中の議論について、熱く語らせて頂きたいと思いますので、どうぞ宜しくお付き合い下さい。

・会社内で与信管理業務に携わっている方々には絶対に読んで頂きたい内容になっておりますので、宜しくお願いします。

・さて、商社機能を有する会社には、中堅規模以上であれば必ず「審査」という業務を担っている部署があるはずです。審査部という名称もあれば、法務機能と併せ持った組織として審査法務部というのもあるでしょう。また、管理部、リスク管理部(リスクマネジメント部)等の名称であるかもしれません。さらには、財務部や経理部の中に課として存在する会社もあるでしょう。

・審査という組織は一体何をする組織なのか、それは、営業部が日頃利益を稼ぐ為に行っている取引全体、並びに与信対象先の販売先の信用力の是非・問題点等を細かくチェックする機能を持つ部署という意味です。他方で、当然営業の取引推進をサポートする機能も併せ持っています。私の理想を言わせて頂けば、牽制70%、サポート支援30%という比率になると考えています。あくまでも牽制の比率の方が大きくなります。

・さて、そうなりますと、取引を拡大したい、前向きにガンガン取引を進めていきたいという意気込む営業部と最も対峙する部署が、まさにこの審査組織になるのです。営業にとっては実に面倒な、煙ったい存在なのです。

・私が若い頃、ある個性溢れる営業課長から以下のような言葉を吐かれたことを今でもよく覚えています。「この世の中に(社内に)、審査がなければ、のどけからまし。」つまり、社内に審査組織がなかったら、ストレスがなく、どんなにのんびりとした気持ちで過ごせるだろうか、という意味です。

・当時の若手審査マンであった私自身にとっては、とても屈辱的な言葉に聞こえましたが、そんなことにもめげずに、その後30年間、審査業務を全うしていくことになるのです。

・何故、その言葉に悔しい思いを持ったかと言うと、それは審査業務が商社という業種の会社経営の中で、非常に重要な役割を担っていると思っていたからです。例え社内の嫌われ者であってもいい、会社に不測の損失を蒙らせないように、常に厳しい目で営業部の動向や客先の動向に眼光鋭く目を光らせることの大切さを、審査業務を通じて強く実感していたからです。会社の為に、審査業務を行う、営業部の顔を窺うことではない、事の真実を見極め、正論を主張し、それを貫き通す、と言う信念が自分の心の中に生まれていました。そうでなければ、審査の仕事を30年も続けることはできなかったと思います。

・私の尊敬すべきある大先輩(当時審査部長)の方から、入社後のある講義で拝聴したお話の中で、最後に語られた言葉が非常に記憶に残っています。因みに、まだその時点では、私が審査部へ配属されることが決まっていない時期でした。

「審査業務は孤独、自分に厳しく、絶えず勉強と研鑽が必要、との後の最後の件で、「目明き千人、盲千人」」と仰られたのです。一部不適切な表現を使用しておりますが、当時自分が耳にした言葉をそのままお伝えする為に記しました。この点、どうかご容赦願います。

・要は、「自分の仕事を、社内の半分の人は評価・理解してくれない、でも、しっかりと勉強し地道に業務を行なっていれば、社内の半分の人は、評価・理解してくれる。」。その方は、ご自身の長い審査業務経験を踏まえて、最終的にそう実感されたとのことでした。だからこそ、流れに飲まれるのではなく、自分をしっかりと持って、強く、そしてブレずに今後の仕事に当たっていって欲しい、という重い言葉でした。目から鱗が落ちた瞬間でもありました。そして、何とその後の配属発表で、決して自分が当初希望はしてはいなかった審査部にめでたく配属となったのでした。これも、ご縁だなあ、とつくづく感じました。

・「自分の考え方を強く持って、常にブレない姿勢で業務を行うこと」の難しさは、誰よりも私自身が感じております。でも、審査業務を行う者にとっては、この姿勢は絶対に欠かすことができない重要なポイントだと思うのです。

・但し、矛盾するようなことを申し上げますが、審査の仕事の成果というものは、大抵のケースではすぐには現れません。自分が部署を去った後に、転勤した後に、退社した後に、最終結果を耳にするケースがよくあります。『あの会社が倒産したよ。当社は幸いにも焦付がなかったみたいだ。」この言葉に何度となく喜びが溢れてきたことか分かりません。一見、報われないような仕事に見えて、後々自分の仕事の成果をしみじみと認識し、言葉に表せない喜びを得る。地味な仕事ですが、審査の本筋の仕事とはこんなものです。その時その時の営業部からの手厳しいご批判やご意見を頂くのは日常茶飯事、滅多に誉められることがない不遇のポジションですが、そんな仕事があってもいいのではないかと、私個人では思っています。

・本題の「審査組織の本来の機能」について問われれば、経営補佐機能として、常に冷静沈着に全社的な観点から与信リスク(貸倒リスク)の回避・軽減(ミニマイズ)を図ること、であると考えます。

・審査組織の存在意義の是非について申し上げる前に、私の如く審査経験者が軽々しく申し上げるべき事項ではありませんが、「与信リスクを軽んじる営業マンに碌な営業マンは一人もいない」という事実だけは、まず伝えさせて頂きます。逆に言えば、優秀な営業マンは、審査組織を巧みに上手く活用し、自分のリスク管理に役立てているということです。反駁するより、活用せよ、ということです。

・そして、もう一つの本題「審査組織の存在意義の是非」については、「是」であると考えます。社内の意思決定過程の中で、必ず、悪役、嫌われ役は「必要悪」として、求められるということを忘れてはいけません。全員がイエスマンになってはいけないということなのです。

・いついかなる時も、社内で建設的な議論が公明正大に行われることが最も大切なことであり、審査組織と営業組織が議論を真正面から戦わせることができる土壌があることが重要なのです。その意味では、結論として、「審査組織は、与信取引を行なっている商社業界にとって、絶対に欠かすことのできない重要な組織である」ということになります。

・現在、審査組織で働いている全ての皆様に改めて申し上げたいのは、業務遂行上、気分が落ち込むこともあるでしょう、ストレスを抱えることもあるでしょう、やる気をなくすこともあるでしょう、でも決してそこで職務放棄だけはしないで下さい。あなたの周りで必ずあなたの仕事振りを見ておられる方がおられます。例え、半分の人がネガティブな評価をされたとしても、残り半分の人はポジティブに評価して下さる人がいるということを、絶対に忘れないで下さい。

・「目明き千人、盲千人」、聞けば聞くほど、非常に重たい言葉であります。と同時に、審査業務に携わる者にとって、いつまでも励みになる言葉だと思っております。どうか審査組織に所属される皆様、正々堂々と、上を向いて歩いて行きましょう。

Rユニコーンインターナショナル株式会社 

代表取締役 髙見 広行