#03 missing link
そもそも人通りの多い駅じゃなかった。地下道の先にはエレベーターがある。重そうなコンクリの塊が口を開け自転車ごと人間を出入りさせていた。荷台に取り付けられた椅子の上で泣き、父親の背を叩き続ける女の子がいた。地上に出て川沿いを歩いた。晴れた夜だった。道脇に雑多なゴミが捨てられていた。
よく見たところで、よくわからないものばかりだった。意味がありそうで全然無いものばかり。フェンスは穴が空いてるし、唐突に突き出たコンクリは壁にも階段にもならない。縄は放置され乾燥し触ったら崩れる。引っ張るどころじゃない。
枯れて誰にも構われない草をちぎって投げたし、コンクリのオブジェを思い切り蹴ったし、廃車のバンパーも蹴ったし、道路で歯ぎしりしながら何度もコートを叩きつけて髪の毛を引っ張って泣いたし、すごくあーあって思った。全部やだ全部やめたいばかり言ってた。自分でも何のことかはっきりはわからない。
もうどうしようもなかったことは、どうしようもなかったと認めるしかないし、どうしようもないものは今でもこれからも多分ずっとどうしようもない。しこりのように一生抱えていくんだね、ととっくにわかっていただろう事をお互い確認し合って、でも、これからも何度も各々確認が要るのもわかっている。
photo by manimanium
2020年1月5日 記す
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