まほ僕 第17話 「合同合宿③」
合宿最終日
今日は合宿成果を見せる試験の日。
みんな不思議と目に力が入っていた。
ピッーガガッーー
「アナウンスします。30分後にグループ特別試験を開始します。」
久保:みんな、準備は出来た?
〇〇:はいっ!
筒井:できてます
早川:勝つでぇ!
山下:さて…勝っておいで
さくら:もちろんです
清宮:はーい!
伊月:〇〇…待ってろよ…
試験会場は体育祭でも使われた、「時の樹林」という森になった。
川や滝などが流れ、道に迷いやすいことからそう名付けられた。
始まりのアナウンスと共に、俺たちは「時の樹林」へとワープした。
合同合宿、最終テスト
相手フィールドに設置された旗を奪取する、もしくは相手チーム全員を戦闘不能にすると勝利となる。
もちろん、自チームの旗を取られないようにする必要もある。そのため、チーム内での連携が鍵となる。
ーー時の樹林ーー
〇〇:さて、誰がここに残る?
筒井:私が残るよ、2人は前線に出て
早川:頼んだで、あやめん!
筒井:うん、2人も頑張って
間もなくして、アナウンスがなる。
最終テストがスタートした。
俺が東側から、早川が西側から攻めることに。
森の中で特訓していたこともあってか、スムーズに進むことが出来ていた。
相手チームはさくら達のチーム。
別のフィールドでは他のチーム同士が戦っている。
ドローンらしきもので俺たちの挙動は全て先生らや先輩達に筒抜けている。
不測の事態になっても大丈夫という訳だ。
体育祭での事件のこともあってだろう。
進んでいると、広く空いた草原に出た。
〇〇:こんなに開けた場所があったのか…
草原の中心を過ぎた辺りで、俺は自分が攻撃されかけている事に気がついた。
〇〇:…っ!
ギリギリのところでその攻撃を避ける。
〇〇:危ないじゃねぇか、伊月
伊月:やっぱ勘が鋭いな、〇〇
伊月がこっちと言うことは、早川の方は清宮かさくらって感じか
伊月:色々と考えてるかもしれないけど、僕達は全員で攻撃しにきてるんだぜ
まさかの全員一斉攻撃。
〇〇:そんな事教えてよかったのか?ここで俺が伊月を倒せば俺たちの勝ちになるんだぞ?
伊月:安心しろ、僕が勝つからな
そう言い切るとそれぞれ攻撃の体勢に入る。
〇〇:反式 壊
伊月:切式 弐番 烈火
壊で発生した魔力の塊を伊月は炎を纏わせた一振で消し飛ばした。
〇〇:なっ…!
爆風と同時に伊月は次の攻撃の体勢に入っていた。
刀の先が喉先をかすめる。
今までよりも速いその動きについていくので精一杯だ。
〇〇:このままスピードで押し切られたら面倒だな…
すぐに体勢を立て直し、次の攻撃の準備をするが…
伊月:遅いよ!
わずかに伊月の動きの方が速かった。
〇〇:がっ…はっ…!
モロに伊月の攻撃をもらった俺はそのまま近くの木にまで吹き飛ばされた。
背中が、お腹が、身体中が悲鳴をあげている。
立たなくては…
そう思っても体は言うことを聞かない。
伊月:今回は俺の勝ちだな
近づいてきた伊月は笑っている。
その瞬間ー
異質な魔力の気配に俺は…俺たちは気がついた。
伊月:誰だ…っ!?
「あーあ、バレちゃったか」
ふわっとした声からは想像も付かないほどの醜い姿。
鴉:俺はカラス、お前達を屠りに来たんだ
笑ってそう言う言葉には殺意だけが含まれていた。
すぐさま、攻撃体勢に入ろうとするが、今の俺は満身創痍。
伊月:三番 二輪三連
俺とは違い、まだ動ける伊月は攻撃体勢にすぐさま入る。
鴉:お、やるかぁ!
伊月の刀は円を2つ描くように鴉を切る。
鴉:ぐぅぅ…!やるじゃないかぁ!
防戦一方の鴉。
しかし、なぜ鴉は攻撃をしてこないのだろうか。
屠りに来たと言う割には、先制攻撃をしてこなかった。
分からない。分からないからこそ怖い。
伊月:二番 烈火
突き立てた刀から炎が舞い上がり、鴉の喉元を刺した。
鴉:ガハッ…
あまりにも一方的すぎる。
何も無策な訳では無いはずだ。
何かを待っている…?
伊月:終わりだ、六番…
トドメを刺そうとした瞬間だった。
鴉: 解刀 「光琳煉獄」
〇〇:伊月!!
これだったのか、待っていたのは。
だが、時は既に遅かった。
伊月がこちらにまで吹き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。
〇〇:伊月…
衝撃で気絶してしまった。
鴉:わざわざ、攻撃受けてやったのにな〜
解刀の条件として攻撃をしないという訳では無いのか…
遊びだったんだ。
こいつは遊びで俺たちを殺そうとしているんだ。
鴉:あ、やっと来た
前鬼:バレずにここまで来るのは大変なのよ
後鬼:ほんとにね、あんたは良いわよね、魔力消せるんだから
最悪の場面だな。
こちらはもう動けないのに、相手は3人。
しかも、全員がトップクラスに強いと来たもんだ。
〇〇:動けぇ…俺…
痛い体を無理やり立たせる。
恐らく、こいつらだけでは無いのだろう。
仲間が筒井さんたちのところにも来てるはずだ。
さくらは…大丈夫か、強いし。
久保さん達は、さすがに異常に気がついて動き出してるだろうな…
それでも、いつ来るかは分からない。
伊月はもう動けない。
俺も自由が効かない。
万事休すか。
鴉:お、立った
前鬼:だが、もう虫の息だろう
後鬼:さっさとトドメさそ
〇〇:反式 壊!!
俺は、一か八かの賭けに出た。
ーー早川サイドーー
早川:オラオラオラァ!
私は拳で木々を破壊しながら相手チームの陣地に突入していた。
さくら:そこまでね!
早川:さくらやん、もしかして私の相手はあんたなん?
さくら:そうだよ、多分〇〇くんは伊月くんと戦ってるんじゃないかな
ということは、守りはレイやな。
さくら:レイちゃんはあやめんかな
早川:は?
さくら:こっちは全員攻撃だからね、
早川:なるほどな、じゃああんたを倒せば私たちの勝ちやん!
さくら:そういうことだね、倒せたらだけど…ね?
その言葉を皮切りに戦闘が始まった。
早川:挙式!怒号ラッシュ!!
攻撃が当たれば当たるほど、その威力が高まっていく。
逆に外せば、威力は最初の状態に戻ってしまう。
そんな弱点がありながらも、余るほどのメリット。
私はパワーを全て乗せ、さくらを殴り続ける。
さくら:クッ……!
守りに入るしかないさくら。
早川:どうした!さくら!反撃してこないならやられちゃうよ!
近接戦闘は明らかに早川の方が上。
このままでは一方的な展開になってしまう。
受けて流す…
思い出せ、自分の体の細胞1つ1つを壊して、再生しろ。
さくら:反転魔法!
受けたはずの傷が綺麗に治っていく。
早川:なっ…!
さくら:天式 来弾!
すぐさまに攻撃をしかける。
早川:挙式!怒涛ガード!
来弾の攻撃が効かないか…
ならば…ガード出来なくなるぐらいぶっぱなしてやる!
何度も空気を固めて、せいらに向かって放つ。
1つ1つの威力は通常よりも弱いけど数が桁違い。
早川:やばいかも…
少しつづ、私の攻撃がせいらに当たり、彼女を追い詰めていく。
いける、いける!
さくら:片固め!
早川:足が…!
動けなくなった、この瞬間!
さくら:来弾っ!!!
数ではなく、1つの威力の底上げに力を入れる。
早川:ガハッ…!!
せいらはそのまま倒れ込む。
さくら:はぁはぁ…疲れた…
慣れない反転魔法に、無数の来弾での激しい魔力消耗。
思った以上に魔力を使ってしまった。
でも…それだけせいらが強くなったという事だ。
早川:やっぱすごいな、さくは
さくら:せいらもね
そう微笑む私たちのもとに、1匹のシキガミが舞い降りた。
「お前が…天空持ちの女か?」
さくら:さーね、確かめてみれば?
次回 合同合宿④「未知の脅威」
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