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まほ僕 第16話 「合同合宿②」

〇〇:こうやってやり合うのは初めてだな

筒井:だね、いつもチーム組んでたし

私は君に憧れていた。

どんな時だって諦めない君が、その後ろ姿がかっこよかった。

でも今日、私は君を越えていくから。

バイバイ、過去の私。

そして…

筒井:内式”引”

はじめまして、新しい私。

〇〇:引…?

周りにある木々が〇〇を襲う。

〇〇:なっ…!?

今までの内式による効果は、自分と対象物の間でのみ発動が可能であった。

しかし、内式は2種類の能力が存在する。

今、筒井が使用した能力は対象物と対象物を引き寄せる能力である。

今までの能力を”寄” 新しい能力を”引”として使用する事が可能となった。

筒井:これが、新しい私だから!

木々を退けるが、既に彼女は俺の懐にまで近づいていた。

筒井:”寄”!!

〇〇:グッ…ハッ…!!

拳に引き寄せる力を纏わせていたからか、カウンターを受けたような気分になる。

〇〇:ま…まだだぁ…!!

筒井はまだ近くにいる…!ここは逆で魔力を発散して距離をとる!

式を唱えようと構えるが…

筒井:もう遅いよ

〇〇:え?

「ゴン」と鈍い音と共に目の前が真っ暗になった。

久保:先に木の丸太を引き寄せていたのね

早川:あやめんすごーい!!

筒井:えへへ、ありがとう

久保:今回はあやめちゃんの勝ちだね、とりあえず〇〇くんは保健室に連れていこうかな



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さくらサイド

伊月:切式!峰切り!

山下:遅いよ〜

伊月:ぐへぇ…!

やすやすと刀を受け止める山下先輩。

山下:もっと腰を入れないと

伊月:はいぃぃ…

合宿が始まって既に4日が経っていた。

その間、私たちは特別な事はしていない。

ひたすら山下先輩と一対一をしていた。

伊月はもちろん、私もレイちゃんも誰ひとりとして先輩を倒せていない。

さくら:やっぱり強い…!

クリスマス前哨戦で強くなったと思ってたけど、甘かった。

私たちよりも1年多く、経験や知識を身につけていることは分かっている。

それでも、ここまで差があるとは思っていなかった。

山下:………さくらちゃんさ

さくら:…なんですか?

山下:本気出してる?

さくら:え?

何故か、胸がドキッとした。

悪いことはしていないはずなのに、先生に呼び出された時のような感じ。

さくら:出してますよ

山下:うーん…なんて言うかさ、さくらちゃんってもっと強いだろうなって思うんだよね

さくら:それは…

山下:傍から見れば、本気で戦っているように見えるよ

先輩は一息つくと、言葉を続けた。

山下:でも、拳と拳をぶつけ合うと分かるよ、本気かどうかぐらいね、先輩だし

さくら:………………っ!

言葉が出てこなかった。

無意識に私は本気というものを抑えつけていたんだ。

さくら:本気…出しても大丈夫ですか?

笑って私はそう言う。

すると、山下先輩も笑って返す。

山下:いいよ、ボコボコにしてあげるから





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誰かが人を救うヒーローに憧れるように、僕は平和な世界をぶっ壊すような魔王に憧れた。

誰も助けてくれなかった。

誰かが辛い時に手を差し伸べるのがヒーローで、この世界で言う正義で、それが式師だって大人たちは言ってた。

でも、手を差し伸べてくれたのは誰もいなかった。

憎い。

憎い憎い。

憎い憎い憎い。

憎い憎い憎い憎い。

心の底からこの世界が憎い。

与えられてきた者には分からないこの気持ちを抑えることが出来ない。

そうだ。

全てをぶっ壊そう。

何もかも始めからにしよう。

何も無い世界を僕が造るんだ。

だから、今からこの世界をぶっ壊そう。

蒼草:や、元気してたかい?

凶谷:白狐か

蒼草:もう白狐じゃないけどね…どんな気分だい?

凶谷:気持ち悪い…けど…

蒼草:けど?

凶谷:サイコーの気分だ…

蒼草:くくっ…そうか、それはよかった

凶谷:準備は出来てんのか?

蒼草:出来てる…って言いたいところだけど、まだまだ不安要素はあるよ

凶谷:そうか

蒼草:どうする?もうホムラも戦うかい?

凶谷:あぁ…全部…ぶっ壊してやる…

僕達にとって長い戦いはこの日、始まった。

次回「合宿成果を見せつけろ!」

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