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まほ僕 第5話 「忘れられない過去」

私は昔から”天才”と呼ばれていた。

??:おおーい、早くー!

賀喜:待ってよ〜

??:遅いなぁ。かっきーは

賀喜:はぁはぁ、あんたが早いのよ、聖来

??:そうだよ、聖来

賀喜:柚菜もそう思うよね。

柚菜:うん

聖来:えぇ〜そうかなぁ

私たちはいつも3人で一緒に居た。

私の家は厳しくて魔法の事や式の事ばっかり教えられてきた。

周りからは天才だからと腫れ物扱いを受けることも多かった。

それでも小学生になると

聖来と柚菜の2人に出会い

私の人間不信は少しずつなくなっていった。

聖来は男子顔負けの強さがあって憧れていた。

柚菜は弱虫だけど、負けず嫌いで何度も魔法の練習をしていた。

私も2人に負けじと鍛錬を積み重ねて”最強”を目指していた。

月日が流れ、小学五年生の頃

悲劇が私達を襲った。

私たちの町が「シキガミ」に襲われたのだ。

なにせ小さな町だったため、大した式師が居なかった。

また、夜中ということもあって被害が大きかったのだ。

もちろん、私たちも例外ではない。

賀喜:はぁはぁ、

父:もっと遠くに逃げるぞ!

家を出て街の外れまで走る。

確かこの辺りに柚菜の家が…

きゃぁぁぁ!

この声は…

父:遥香!どうしたんだ!行くぞ!

考えるより先に体が動いてしまう

父:遥香!?

滝流れる汗を拭いながら柚菜の家まで走る

賀喜:柚菜!

家が崩れているのが分かる。

柚菜:かっきー…?

家の下敷きになっているのが分かる。

賀喜:お父さんとお母さんは!?

柚菜:助けを呼びに行ってるよ…

明らかに弱っているのが分かる。

賀喜:今、助けるから

瓦礫を持ち上げようとするが

微動だにしない。

柚菜:大丈夫…大丈夫だから。

賀喜:くっ…

足は潰れているだろう

そうこうしている間に

柚菜:あ、かっきー、逃げて!

賀喜:え?

後ろに一体の「シキガミ」が姿を現す。

柚菜:柚菜のことはいいから!逃げて!早く!

無理だ。柚菜を置いて行くなんて…

でも、闘う勇気もない。

「シキガミ」が私たちを襲う

その時だった。

??:待たせたね。

目の前が光で包まれる。

ゆっくり目を開けると

賀喜:あれ?

目の前に居たはずの「シキガミ」が消えて人の女の人が立っていた。

??:怪我はない?私は白石麻衣。よろしくね。

賀喜:はい…

小さくそう呟く

賀喜:あっちの女の子を助けて欲しいんですけど…

麻衣:あの子?

賀喜:はい

柚菜に近づく

麻衣:これは…酷い

賀喜:柚菜は助かりますよね?

不安でいっぱいだった。

麻衣:……ここまで損傷が酷いと…もう…

小学生ながらその表情で手遅れだということを悟った。

柚菜:かっきー…

賀喜:柚菜、ゆなぁぁ…

私は泣き崩れた。

柚菜:かっきー、こっちに来て?

私は泣きながら柚菜に近づく

柚菜:私の為にありがとうね?

柚菜にギュッと抱きしめられる

その温もりが今でも忘れられない。

賀喜:そんなこと…

柚菜:ううん、かっきーが居たから私はまだ生きてるの…

賀喜:うぅぅ…

柚菜:だから、ありがとね、本当に

賀喜:柚菜…

柚菜:ふふっ。もうそろそろかな…

手を握られる。

賀喜:待ってよ…

柚菜:かっきー、なってよね。私の分まで”最強”になって生きてね。

賀喜:うん…うん。

柚菜:うん。

彼女はそう微笑むと静かに息絶えたのだった。

それから二年が過ぎて中学生になった。

その間、私は聖来と一緒に鍛錬に励むようになった。

ひたすら、”最強”になるために。

中学生になり、転機が訪れた。

賀喜:賀喜遥香です。よろしくお願いします。

中学生も変わらない、優等生でいようと思っていた頃

??:えぇと…え、遠藤さくらです…

私は運命の人と出会った。

賀喜:さくー!

さくら:どうしたの〜

私たちは自然に仲良くなった。

聖来も含めた、新たな三人組だ。

結局私は柚菜に縛れられているのだ。

それは今すらもそうだ。

さくらはお世辞にも強いとは言えなかった。

柚菜と似た性格で、魔法自体は二属性と特殊だったが使えこなせない。

一方で私はⅢ類になり、学年の中では”最強”になっていた。

さくら:かっきーはやっぱりすごいなぁ〜

尊敬もされるほどになっていた。

賀喜:さくも強くなれるよ

さくら:そうかな…?

賀喜:なれるよ、きっと。

それでも抜かれることはないだろうと思っていた。

高校生に上がる頃

さくらが適正テストをもう一度受けたいと私を連れて

再検査をしに行った。

結果は特Ⅲ類。何かの間違えではないか?

ただ目の前で喜ぶさくらを見つめることしか出来なかった。

高校に入ってからは

○○くんに負けた。

悩んだ。私は”最強”にはなれない。

どう努力しても叶わない。

どうすればいいのか。分からなくなっていた。

________________

○○:おい、賀喜?

賀喜:……え、あ、は、はい!

さくら:大丈夫?かっきー

賀喜:あぁ、うん。大丈夫!

○○:次は賀喜の番だからな、頑張れよ!

さくら:かっきー頑張って!

賀喜:うん

さくらは勝った。一年生で唯一先輩に勝ったのだ。

私も……勝たないと…

今でも私は柚菜の言葉に囚われている。

To Be Continued…

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