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まほ僕 第9話 「赤点回避なるか?」

校舎から少し離れた場所にある競技場。

ホログラムを使ってよりリアルなシキガミを再現することが可能である。

また、体育祭や文化祭などでも使用される。

そんな場所を使って技能テストを行うのはうちぐらいらしい。

深川:じゃあ始めるよ〜

先生が機械を操作すると目の前に「シキガミ」が姿を現した。

改めて目の前にするとその大きさや纏う雰囲気に思わず息を飲んでしまう。

前と同じように念じるが何も起きない。

たじろいでいると「シキガミ」が襲いかかってきた。

○○:っ!

ギリギリで避け、剣を取り出す。

大陰:逃げるのか?

○○:うるさい…!

動きながら大陰と話す。

○○:使えないからだよ!

大陰:使えないなんて言い訳するな

○○:なんだと?

大陰:一度出来たのにもう出来ないとでも言うのか?

○○:……

大陰:何の為にここまで練習を積み重ねてきたんだ!

何も成長してない、自分だけが取り残されている。

そんなこと分かっていた。

でも、目を背けることしか出来なかった。

やってきた努力に裏切られるのが怖かった。

シキガミ:うがぁ!

重い衝撃が俺の身体を襲い、吹き飛ばされた俺は壁に激突した。

ドンッ!

○○:くっ!

身体中が痛みに襲われる。

○○:……

前もこんな感じだったな。

腕から流れ落ちる血を見つめながら式を使えたあの時の事を思い返していた。

○○:そうだ…分かったかもしれない…

今まで式を使おうと意識し過ぎていた。

意識するんじゃない、感じるんだ。

魔力が弾で式は銃そのものと考えればいい。

あくまで武器でしかない。

使いこなすのはいつだって自分自身なんだ。

○○:式、反式! 壊!

シキガミ:うがぁ!

式を使うと同時にシキガミが襲いかかってきたが、

○○:遅せぇよ

目の前に魔力が集まり、その魔力で作られた大きな弾が生成された。

それは前よりも規模を小さかったが、威力は恐らく前回の比では無く、跡形もなくシキガミを消し飛ばした。

深川:うん、終了〜

○○:ふぅ

魔力量が多いのが救いだ、体力を無駄に使うことがなくて済む。

式を使うのに慣れないのか、頭がボーッとする。





競技場を出ると、伊月達が待っていた。

試験という事もあって中の様子を見ることが出来ない。

しかし、近くの魔力を多く使ったのに気がついた賀喜と遠藤が話しかけてきた。

賀喜:すごい魔力消費してない?大丈夫?

〇〇:大丈夫、俺自身の魔力は全然使ってないから

ほとんど周りに存在する魔力を使っているのは事実。

遠藤:流石だね、私も頑張らないとな〜

賀喜:さくはもう終わったじゃん笑

遠藤:あ、たしかに

笑い合いながら話していたからか、後ろから話しかけてきた2人の存在に俺は、俺らは気がつけなかった。

生田:ねぇねぇ、君たち1年生?

〇〇:わっ…!

賀喜:び、びっくりした…

遠藤:えっと…あ、生田さん!それに飛鳥さん!

飛鳥:ついでみたいな言い方だな?さく

笑みと怒りが混じったような表情を浮かべ、遠藤が慌ただしくなる。

遠藤:す、すいませんっ!飛鳥さん!

飛鳥:よしよし、いい子いい子

生田:君は初めてだね、よろしく!生田です!

普通はフルネームじゃないのか?

テンションについていけない俺はあたふたしながらも自己紹介をする。

〇〇:白石〇〇です、生田さんとあ、飛鳥さん?は3年生の方ですか?

飛鳥:そ、あと苗字は齋藤ね

〇〇:あ、齋藤さん

飛鳥:飛鳥でいいよ

〇〇:じゃあ飛鳥さんで

飛鳥:ん

生田:なんでちょっと仲良くなってんの!?

飛鳥:いくちゃんがしつこいからじゃない?

生田:何よそれ!?

遠藤:飛鳥さんは特Ⅲ類で生田さんは上Ⅱ類だよ

〇〇:へぇ、特Ⅲ類と上Ⅱ類か…

飛鳥:君も特Ⅲ類でしょ?全然式を使えないって噂になってるけど笑

〇〇:最近特Ⅲ類になったんで

飛鳥:そっか、さくと同じだね

〇〇:そうなんですか?

遠藤:私も中学の終わりに特Ⅲ類に上がったからさ

〇〇:なるほど…

飛鳥:あ、そろそろ行かないと先生怒るんじゃない?

生田:え?あ、ホントだ!やばい!

〇〇:え?

生田さんはものすごいスピードでどこかへ行ってしまった。

飛鳥:はっや笑じゃあ私も行くから、またね

飛鳥さんも手を優雅に振って去っていってしまった。

残された俺達の周りにはもう誰も居なかった。

〇〇:伊月達ももう教室かな?

賀喜:多分ね、じゃあ戻ろうか

俺たちは足並みを揃えて教室へ帰っていった。






全日程を終え、テストの結果が出た。

深川:じゃあ結果発表します!

全員:えぇ……

深川:とりあえず10位から一瀬。9位白石。8位掛橋。7位田村。以上4名

○○:9位……

深川:今呼ばれた人は筆記か実技のどちらかに赤点がある人ね

○○:赤点か

恐らく筆記の方がダメだったのだろう。

深川:残りいくよ、6位西野。5位清宮。4位早川。3位筒井。2位遠藤。1位は賀喜。以上!

賀喜:やった!

さくら:負けたぁ〜

清宮:あやめん、やったね!

筒井:うん!

深川:あ、そうだ、1位と2位の二人は体育祭で個人競技に出てもらうから

賀喜:はい

さくら:わかりました

○○:2人ともすごいな

さくら:そうかな?

賀喜:○○くんは赤点だったね笑

○○:うるせ

早川:図星やんな

○○:むしろ、伊月が高得点って所に腹たってる

伊月:こう見えて勉強できるんで

早川:アホっぽいのにな

伊月:やかましいわ!

近くに仲間がいることがどれだけよかったのか、この時の俺はまだ知らなかった。

夏休みに入ると、俺は補習に没頭していた。

遊ぶ約束も全て白紙になり、涙した。

補習がない時は大陰と式の練習でいっぱいいっぱいだった。

夏休みが終わり、残暑が厳しい中で、俺たちはビッグイベントとも言える、乃木高校”学校祭”に向けて準備を始めていた。

波乱と想いが交差する、体育祭が幕を開ける。

To Be Continued…

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