ITストラテジスト合格までの道~午後Ⅱ論文の攻略編~
X(Twitter)で投稿していたITストラテジスト合格までの勉強方法がある程度まとまったのでnoteにも転載してちょっと解説加えます。
ゴールを把握する
どうすれば午後Ⅱ論文で合格できるか。
私はこう考えています。
1と4ができるようになるトレーニングをこの記事で書いていきます。
2は当日のテクニックなのでまた別に書きます。
3は、エンジニアがITストラテジスト受けるときはめちゃくちゃ注意しないといけないポイントですが、また別に書きます。
ITストラテジスト午後Ⅱ論文のトレーニングおよび準備の仕方
まずは勉強方法の全体像を説明します。ITストラテジストに限らず高度情報処理の午後Ⅱ論文に共通する勉強方法です。
基本的には過去問だけで十分だと思います。全く同じ問題は出ませんが、似たようなことを聞かれるので過去問の対策をすれば十分に準備ができた状態になるからです。5年(10問)~10年(20問)もやれば十分かと。
過去問に対して、丁寧に以下ツイートの①②③④を実施するのが勉強(対策)方法です。まずは1年分やってみてやり方を把握しましょう。R4年の問1で解説していきます。
問題をダウンロードし、照らし合わせながら読んでください。
https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/gmcbt80000009sgk-att/2022r04h_st_pm2_qs.pdf
①設問解釈をする
まず問題を設問から読みます。問題文も短いので先に読んでもいいけど、設問から読んだ方が問題文を効率的に読めるので、時間短縮になる。
設問に書いてある語句には何一つ無駄なものはなく、すべてが「論文に書かないといけないこと」です。なので、設問に何を書いてあるかを丁寧に読み解く必要があるのです。
読み流さずにしっかりと読み、設問で「要求されていること」にマーカーを引いていきます。ただし試験本番ではマーカーは使えないので、あくまでもトレーニング時のみです。アイウで色分けしてマーカーを引いておくと、あとで問題文解釈がしやすくなります。
マーカーを引いた文章を箇条書きにしていきます。手書きじゃなくWordがいいです。(私はNotionに打ってます。)
②問題文解釈をして設問と対応付けする
次に、設問と同じく問題文も読み解いていきます。
問題文には一般論が書いてあるのでさらっと読み流してしまいがちですが、とんでもないです。設問に関する特大ヒントが山ほど書いてあります。いかに問題文の解釈が上手くできて書くべきことを想起できるか、が午後Ⅱ攻略のカギだと思っています。
問題文を丁寧に読み、アイウの各設問で聞かれていることのどこに結び付く内容なのか、を意識して情報を拾っていきます。
①で作った設問解釈メモの下に、インデントして情報をメモしておくといいでしょう。
この問題ではかなり具体的な例が問題文に記載されています。
「問題解釈をしよう」と思って読まないと、「保険会社の例書かれたって、同じようなこと思いつかない」と諦めてしまいます。もしくは問題文の例をそのまま論文に使っちゃうか。
④のところで述べますが、「具体と抽象をいったりきたりするスキル」を使えば、問題文に書いてある具体例から大量のヒントを得て論文が書けるようになるのです。
まずは②の段階では抜き出すだけでOKです。
③論文骨子を作成する
設問と問題文の解釈をしてメモを作ったら、その材料だけで骨子を作成していきます。
たいがい、①で作ったメモが見出し2(1.1.のレベル)になり、それらを繋げた文章が見出し1(1.のレベル)になります。
文字数稼ぐために全文章を繋いでもいいけど、あんまりスマートじゃないかな。多少要約したり省略した方が読みやすいですよね。
さらに、問題文から抜き出したメモからも、要求事項(論文に書くべきこと)と思われるものがあったら小見出しに採用するといいです。
これは特にイで使えるテクニックで、設問で「〇〇を踏まえて」や「〇〇を含めて」の優秀な回答例になることが多いです。
「例えば以下のような事項を検討する」に続く内容を論文に書きなさいよ、と言われているので、その内容を小見出しにしておくのです。そうすると、採点者から見ると、「要求事項が書いてあるな」と識別しやすくなります。
ここまではその分野の知識やスキルがなくとも機械的にできる作業だと思うので、早い段階でやってしまいましょう。
ITストラテジストの試験勉強の一番最初に、この設問・問題解釈作業をやっておくといいです。そうすれば、午後Ⅱの準備として午後Ⅰの勉強を使えるようになります。
「午後Ⅱで何を聞かれるのか、どんなことを書かないといけないのか」を把握した上で午後Ⅰの勉強に取り掛かると、午後Ⅰの問題文を読みながら、「あ、このケース午後Ⅱのあの答えに使えるやん」とネタを溜めていけるわけです。
④骨子の中身を準備する
ここまでで、「何を書かないといけないか」が分かりました。
本番までに、書くべきことを準備する、が次にやることです。
同じ問題は出ないので過去問の答えを作っても無駄では?と思うかもしれませんが、無駄ではありません。一言一句同じ設問は出ませんが、たいがい似たようなことを聞かれているのです。
アは、事業概要、事業特性を聞かれる
イは、企画や構想や活動の具体例を聞かれる
ウは、イを経営層がどう評価したかとその改善策を聞かれる
アの前半とウは2~3パターン持っておけば使いまわせます。
アの後半とイも、過去問10問分も用意すれば十分な数のパーツが揃い、当日も利用できるデータベースになります。
かつ、本番実施するべき、「問いに対して解を思いつく」という作業を何度も繰り返すことがトレーニングになり、当日そのスピードが劇的に早くなります。これが過去問演習をやるべき理由です。
アの準備
アについては過去問ひとつひとつに対応した準備ではなく、どんな問題がきても対応できるよう作っておく感じです。
ネタに使う事業を2つ用意します。1つでもいける気はしますが、テーマによっては使いにくいかもしれないし。
一番思いつきやすいのは、今もしくは過去勤めた会社の事業でしょう。BtoBよりBtoCの方が書きやすいと思います。SIerだったりソフトウェア会社とかは事業を拡げにくいので、携わったお客さんの事業を使えばいいかと。
私は、過去いた会社(医療情報システム会社)と、プライベートで関わった葬儀屋の2本を用意しておきました。
今年義父が亡くなって、たった数日間ですが葬儀屋の事業に触れて、いろいろと事業や業務に改善の余地があるなと思ったのです。自分がITを使ってこの会社の事業を改善するなら何をするか、を想像してネタを作りました。
葬儀屋(葬祭業)は、仕事で関わったことは全くない業種です。何も知りません。軽くググって以下のようなことを把握して書き溜めておきました。
どういう事業なのか(誰を顧客とし、何をどのように提供して、どのように収益を得て、何が支出になるか、どこから何を仕入れるか)
事業環境は(競争状態はどうか、どのような競合がいるか)
事業特性は(売り上げ規模、客単価や客数、どの費用が高いか、顧客の属性や傾向)
加えて、実際の会社を数社調べ、イのネタになりそうなことも同時に調べて書き留めています。自分がその事業に触れて感じたこと(もっとこうしたらいいのに)も加えます。
シェアや利益を確保するために各社どのような策を講じているか(各社サイトを見ればどのような製品やサービスに力を入れているかは分かる)
ITの活用状況
事業にITを適用したら何がどうできるか
で、できたのがこのパーツです。
あくまでもITストラテジストの論文に書くために事業の概要を書いているので、IT化やIT活用に繋げられそうなことを書くのがポイント。
顧客とのタッチポイントをITで増やす、もしくは改善できるか
付加価値をITで向上して客単価やシェアを上げられるか(プラスのサービスをITで提供)
業務コストをITで削減できるか
業務コスト削減が書きやすいんですけど、それだけだとITストラテジスト視点ととられにくい可能性があるので(つい業務改善効果を書いちゃってシステムアーキテクト視点っぽくなっちゃう)、顧客との関係視点を必ず入れた方がいいと個人的には思います。
令和4年問1で言うと、
「顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画」がテーマですから、「ITを使って付加価値を向上する」ことを書ければいいわけです。用意したネタで十分対応できます。
「顧客満足度を向上させることが必要となった背景」も、事業環境(競争)が激しくなって付加価値を上げないと生き残れない、と書けばいけます。
それを当日書くためには、事前に書きたい事業を設定し、事業環境を調べておかなければ書けませんよね。
思いつかなければ②で作った問題文解釈メモを使いましょう。設問解釈・問題解釈メモを見ると、
・年齢ごとに保険料が一律であることに顧客が不満
・顧客との接点が少ない
・差別化を図るため新たな価値を感じてもらう新商品が必要
と書いてあります。
顧客が不満足を感じる理由として、料金が一律であることとあるので、それがこの事業に適用できないか考えます。
顧客の接点はどんな事業でも適用できるはず。顧客との接点が少ないことを背景に採用すればいいでしょう。
差別化~はそのまま使えますね。
イの準備
イは過去問に対応して用意していきます。作った設問解釈・問題文解釈メモを参考に、用意した事業に当てはめていきましょう。
これは最後にまとめて書くことにします。
葬儀屋の顧客なので、亡くなった人の遺族です。
接点はなんだろうと考えると、チラシがよく入ってるなとか、商店街に相談窓口みたいなのあったなとか、そういや互助会ってあったな、とか色々思いつきます。思いつかなければググります。ChatGPTに聞くと早いです。
葬儀屋なんてリピートするもんじゃないから関係性って難しいな~と思いましたが、葬儀屋との接点は遺族だけじゃないと気づきます。葬儀に参列するときも接点です。参列した葬儀会社の印象が良ければ、自分が遺族となったときにも想起するなあ、と思いました。また、参列しなくても弔電送ったり献花頼んだりも接点です。関係性向上施策をこれで考えてみようと思いつきます。
さすがにスマートデバイスの活用は思いつきませんでしたw
遺族や参列者に提供する(ITを使った)新たな価値はなにか、を考えました。
(IT使って)料金を割り引く例はないかな?
・・・わざわざ亡くなったその日に葬儀屋に行かされて、パンフレットで写真見せられながら見積りしたなあ。あれ、ただでさえ忙しいのに嫌だったなあ・・・。遠方からだとどうすんねん。葬儀屋だってそこに2時間くらい時間使わないといかんし、あれオンラインでできるんちゃうか。オンラインで見積りすれば料金を割り引く。よし、オンライン見積りサービスを作ろう。
ITでアドバイスできる例はないかな?
・・・見積り、わけわからんかったなあ。祭壇のサイズとかそんなん見な分からんし、相場がどうなんかも分からんし、予算言ってるんだから決めてくれよって思ったなあ。質問に答えていったらお勧めの祭壇サイズとかアドバイスしてくれたらええのにw
よし、それにしよ。オンライン見積り、予算と希望でAI見積り、や。
あと、自分が感じた「顧客不満足」「顧客視点の問題」をITで解消する例はないかな、と考えました。
・・・通夜や葬儀の案内する電話、お義母さん大変そうやったなあ。PCも使えないから、電話やFAXで住所や駅伝えるのも70代には辛いよなあ。献花しますって言ってくれる人にも、じゃあどこにいくらの、ってやりとりを葬儀会社としてもらうの大変そうやったなあ。スマホで葬儀屋のアドレス送れて申し込みサイトとかあったら解決するのになあ。
よし、それで書いてみよう。
扱うデータは、
見積りのインプットデータとして予算や希望、AI学習用の過去の葬儀の実績データ、見積りデータ。あとそのデータを発注にもシームレスに使えたら業務改善もできそうやな。発注データ。
あたりでいいか。
って感じで想起していって作ったメモがこれです。ここではメモというか文章書いちゃってますが、もっと箇条書き程度にしか書いてない年もあります。
こっちは別の年の過去問イに対応するメモを書いたものです。
こんな風に、一つか二つの事業で、過去問に対応した内容を考えていくのです。
イの内容を考えるときに活用したいのが「具体と抽象をいったりきたりするスキル」です。
令和5年の問題文には、「その新たな価値 」の例として「データにより保険料を割り引く」「健康アドバイス」とありました。これを具体のままにしておくと、他の事業に使いにくいですよね。保険料なんて保険業にしか使えないし、スマートデバイスで健康アドバイスなんてスポーツジムくらいしか適用できそうにない。
でも、軽く抽象化してげれば幅広い事業に適用できます。「保険料」じゃなく「料金」にしてしまえばいいし、「健康アドバイス」じゃなく「顧客へのなんらかのアドバイス」とすればいい。
そうして、用意しておいた事業に当てはめて、今度は具体化するわけです。
そんなの当たり前やん、と思われるかもですが、本番の時間のない中だとこの単純な変換ができないものなのですよ~w
ってことで、普段からパッと変換できる思考訓練をしておきましょう、ってのにお勧めの本がこちらです。
ウの準備
ウは作りやすいです。毎回同じようなことを聞かれているので、数回過去問に沿って作ればほぼいけます。
イに書いた企画やシステムを、経営層にどう提案して、どう評価や指摘されて、どう改善したかを書いていきます。
令和5年だと書いてほしいことがヒントにあるので、これに沿って考えたらいい。
「顧客満足度を図る指標」は、葬儀屋だと単純にアンケート結果かな~。さすがにリピート率は取れんww
投資効果は、AIで結果的に高い見積り取れれば収益UPだし、献花の価格帯を上げたり、献花の件数が上がることも見込めるとしてみようかな。
などと考えて作成したウのパーツ(というかこれも文章書いちゃってるけど)がこちら。
ウについては、「書けん!」と思ったらサンプル論文から使えそうなネタもらっちゃうのが早いです。
サンプル論文はなんといっても「うかる!ITストラテジスト」の購入者特典Webですね。全年度全問文あるので。
という感じで10年分(20問分)ほど用意すれば、まあまず本番も書けます。
あとは時間との闘いなので、そのタイムマネジメントはまた別に書きますね。
でも、こうしてちゃんと準備のために思考を繰り返していることが、当日の書く内容の思い付きを速くするんですよ。トレーニングあるのみ、です。
ではまた!