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オリオンの体験2

オリオンのどの星に移動したのかは
全くわからない。

おおきな手の上で必死に親指にしがみついた。
私をすくい上げたその巨人は他の2人を呼んだ。
「見てくれ。」
「何だ、興味深いな。」

巨人は私を親指から引き剥がし、
首根っこを捕まえて持ち上げた。
「こんな小さいのが。潰すか。」
「いや、待て。」
「そのあたりに置いておけば絶えるだろう。」

大きな目が私の目の前に近づいた。
「我々の子孫だ。」

手の平に降ろされた私は、巨人の巨大な手で頭を撫でられた。


あまりにも驚いて、
布団の上でガバっと起き上がった。
胸がはち切れそうにドキドキしている。

そして、目が覚めてるにも関わらず、
巨人の手が頭をなで続けている感触が
ありありと続く。


こんな夢を期間を空けて見るたびに、
巨人は捕まえても何もしない事を理解した。

ある時、手の上で頭を撫でられても、目を覚まさなかった。
すると、巨人は話をしてくれた。

かつての大きな戦争で全ての生命がついえてしまい、荒涼とした大地だけが残った事。

何も無い。そんな悲しい場所何だと思った。

巨人は続けた。


私達3人がずっと生命の種を蒔いて、
最近生命が発展してきたんだ、
君もそれを見ていくと良い。

巨人からすれば小さな気球だろうが
夜空に大きく膨らむバルーンを見上げ、
私は用意された気球へ何とか乗った。

「行っておいで。動物の群れが見れるようになったよ。」

薄っすらと光る大地に土煙が漂い、
鹿か何かが群れで走る様子が上空から見えた。
木が生え、草が風で波のように動いている。


星が、生きている。

そして目が覚めた。



この3人の巨人の夢は
何度か感覚を空けて体験をするが、
いつも同じシナリオだ。

もしかしたら、
私の様な子孫がやってきたときに見せるホログラムかも知れない。


どんなに荒廃しても
生命は繋がる事を伝え、
そして、
次の繁栄がまた素朴に
始まるという事を伝え続けるために。


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