「メンテ失敗でサービス終了」M2神甲、その裏にドラマを見た話。
ネットゲーマーの皆さん、こんにちは。
突然ですが、「M2神甲綺譚」というゲームはご存知でしょうか?
知らない?なら、「メンテ失敗でサービス終了したゲーム」といえばわかるでしょうか。そうです、それがM2です。
ネトゲに限らずソシャゲなどの他ゲーム界隈でも、未だに緊急メンテがあるたびに「メンテ失敗してサ終すんのかな?」「M2かな?」と話題に上ってきます。それくらいインパクトのある字面ですよね。
でも実は、メンテに失敗なんかしてなかったんです。このゲーム。
では何故突然サービス終了したのか?どうしてそんな情報が出回ったのか?騒動から8年が経った今、ADHD特有の衝動に駆られて調べてみたら、裏にはかなり熱いドラマがあったので、少しまとめてみました。
メンテ失敗事件の発端―ハンゲームのお知らせ
この騒動の始まりは、ハンゲームが発表したお知らせでした。
このお知らせはリリースから何回も更新されていますが、有名な「メンテ失敗」のくだりは、2011年11月10日に投稿された初版のものでした。以下に内容を一部抜粋します。
要約すると、
「お伝えしなければならないことがございます!!!!サーバーが死んだ!メンテしたけど息を吹き返さないし、バックアップデータもない!よって運営続行不可と判断しました!ゴメン!!!!」
ってことですね。
「お伝えしなければならないことがございます」ってなんやねん。その言語センス好き。
あまりにもあっけない終わり方と、随所に運営の焦りが出ている文章のおかげで、無事M2は各掲示板でお祭りとなりました。
メンテ事件の進撃―ハンゲーム、真実を見失う
さながらドリフの大爆笑ような最期を遂げたかに見えたM2でしたが、ここからが本題です。このお知らせに登場する「Sankando株式会社」、こいつはいったい何者なのか?
この謎は11月11日更新分で明かされますが、その内容は更に混迷を増していきます。
つまるところ、ハンゲームは最初から事態を全く把握できていなかったのです。メンテ失敗なんてとんでもない。共同の運営元であるSankando株式会社からの連絡が無かったため、メンテの結果がどうなったのかすら分かっていませんでした。シュレディンガーのメンテです。明けるまでは、サービスが終了している事象とサービスが継続する事象が半分ずつ内包されているメンテ。
さすがに困ったハンゲームは、Sankandoが運営する公式サイトを見に行きました。するとそこには何と「サービス一時休止」の文字が!あまりの驚きにハンゲくんも「突然」なんて表現を使っちゃっています。
もはやSankandoのDokudanjoと化したメンテ騒動。運営同士が意思を疎通できないようではサービスの継続は困難と判断したハンゲームは、ついにサービスの終了を決定します。それが11月10日の初版のお知らせでした。彼らはわからないなりに上手い理由をつけて、サービス終了への道筋を立ててくれていたわけですね。やさしいぞハンゲ。
しかし、それを受けてSankandoは「データは残ってるし、サービスが復旧したらまたそのデータで遊べるよ」とお知らせを打ちました。
お前ハンゲがせっかく気をまわしていい感じにオチをつけたのに根底からひっくり返すなや…とか、それを直接ハンゲに教えてやれよ…とか言いたくなる所ですが、そこまで言うならサービス再開の目途が立っているのかもしれない!と、ハンゲームは一縷の望みを抱えて連絡を取り続けることにしました。
つよいぞハンゲーム!がんばれハンゲーム!きっと君なら…!
うんとこしょ、どっこいしょ。
それでもSankandoは連絡が取れません。
以下は同日11日に更新されたお知らせの内容です。
もはやSankandoの生死が気になったハンゲームは、とりあえず同社運営の「ストラガーデン」が稼働していることを確認しています。こんな何の進展もないお知らせを先のお知らせと同日に出しちゃうあたり、かなり焦っているようです。
この流れを見るに、ハンゲームは相当な電話攻勢やメール攻勢をかけたのでしょう。もしかしたら本社凸までしたかもしれません(憶測です)。
その熱意を受けて、ようやく事態は動き出します。後ろめたさMAXでハンゲームと連絡を絶っていたSankandoが、ついに岩戸を開いて出てきたのです。
メンテ事件の真実―ハンゲーム、キレた!
さらに同日11日、お知らせが更新されました。
そこにはようやく真実にたどり着いたハンゲームの安堵と、クソ運営ムーブをかまし続けるSankandoに対する怒りがつづられていました。
まずは、Sankandoからのお知らせが載せられています。
何とSankandoはM2の運営移管を目指してサービスを停止していたのです。
緊急メンテはあくまで口実で、実際サーバーに致命的なエラーがあったかどうか怪しい感じです。これによりSankandoの信用度はがた落ちになりましたが、同時にデータが無事であることの証明にもなりました。だってサーバーが原因の緊急メンテじゃないんだもん。
これを受けてハンゲームは以下のお知らせを出しています。
Sankandoと連絡がとれて大喜び(ブチギレ)のハンゲーム。これまで滞っていた分の連絡を開放するかのように、毎週火・金でのお知らせ更新を約束しました。恐らくはSankandoに対し定期的な連絡の重要性を相当強く説いたのでしょう。
実際、この定期更新は12月のサービス終了まで続けられることになります。
メンテ事件の終焉―Sankando、暁に斃れる
時は過ぎ、12月。
Sankandoは運営移管先として3社と交渉を行いましたが、いずれも遅々として進まないまま。交渉内容が書かれていないので実際何がダメだったのかは分かりませんが、「電話とメールでやり取りしました」を繰り返すお知らせを見るに、どこも本腰ではなかったのでしょう。面と向かっての打ち合わせを行わない限りは、オンラインゲームを1か月で移管するなど不可能です。
ハンゲームもさすがに状況を察し、12月末という期日を待たずにSankandoを招集。ここでの交渉内容も伏せられていますが、後日のリリースを鑑みるに「今後どうするか台湾の開発元とよく話しておいで」という結論に至ったのだと思われます。最初は天下のハンゲームを相手に無視を決め込む肝っ玉を見せつけてくれたSankandoも、ここにきて完全にハンゲームの言いなりです。相当こっぴどく怒られたんでしょうね…
そして運命の12月11日、お知らせは最後の更新を迎えます。
期日を待たず、M2のサービス継続は断念されました。
お知らせの更新を重ね続けた結果、「お伝えしなければならないことが」というぎこちない表現を使っていたハンゲ運営も、「皆様に重要なお知らせがございます」とこなれた表現を使うまでに成長しました。私は悲しいよ。
こうして壮大な早とちりから産まれた騒動は、半ばSankandoが逃げ出す形で幕を閉じました。これがメンテ失敗事件の一連の流れです。
しかし、物語はこれでは終わりません。裏では一人の熱い男の戦いが繰り広げられていました。その名はラテ、M2にてGM(ゲームマスター)に就いていたSankandoの元取締役です。
外伝―Sankandoの勃興と、一人のゲーム屋の想い
実はM2というゲーム、台湾から日本に上陸したのは二度目の出来事でした。
最初は「M2~神甲演義~」という名称でガイアックスが運営を開始。ただ、日本でのサービス開始時点ですでに台湾におけるM2のサービスが終わっていたこともあり、ほとんど開発のリソースが提供されない状況でした。
そんな中で何とか運営が続くも、やがてガイアックスの事業再編などによりM2~神甲演義~はサービスを終了することになります。ではなぜ、もう一度名前を変えてM2がサービスインしたのか?
それは、先に挙げたラテ氏の働きによるものでした。
2011年12月30日、メンテ失敗事件の騒ぎが冷めやらない中で、ラテ氏が「2011年を振り返る。」というタイトルでブログ記事を書いています。
この記事には、彼がM2にかける想いのすべてが書かれています。僕の駄文ではなかなか表現できませんので、ぜひご一読を。
詳細は伏せますが、Sankando設立から、その没落までの経緯が詳細に記録されています。
そして何と、M2は再び彼の手によってサービスが開始されていました。
Sankandoを退職したラテ氏は、新たに設立した株式会社シフォンでもう一度台湾の開発元たるInterServと交渉。日本におけるサービスを常に見守ってきた人物だけに、InterServから彼にかける信頼は非常に大きいものでした。
あのネトゲ界隈を震撼させた大事件を乗り越えて、今もなお続いているM2。
ゲームシステムも刷新され、前2作よりも長く運営されるまでになりました。これを機に、M2をプレイして往時の熱気に思いをはせてみてはいかがでしょうか?
※2024年3月15日追記:ラテ氏ご本人が語る、事件の真相
なんか記事が唐突にバズったので、久しぶりの追記です。
2021年11月、株式会社シフォン代表の長谷川氏(記事内のラテ氏)ご本人が騒動について語る動画をYoutubeにアップロードされました。
記事より詳しく正確な内容を赤裸々に語っていらっしゃいます。
こういう運営体制のごたつきによるサービス終了が増えている中、その体験談を本人から聞く機会もなかなか無いかと思います。お時間のある方はぜひこちらもご覧くださいね。
というか、2024年まで運営が続いてるとは正直思いませんでした。
ラテ氏の熱意と、M2ファンの愛情に、最大限の敬意を!
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