見出し画像

あまぬま

天沼のひかりでこれを書いている きっとあなたはめをとじている

穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』

「天沼」を「あまぬま」と読むのだと、つい先週知った。この歌集を初めて手に取ってからもう10年経つ。

 ずっと「てんしょう」と読んでいたんですよね。天国にある沼のことだと思ってた。たぶん「ひかり」に引っ張られてそういうイメージを持っていたのだと思う。地名なのか、しかも杉並区、と知って、なんか夢っぽかった風景が、とつぜん現実らしくなった。(とはいえ杉並区には阿佐ヶ谷と西荻窪にちょっと行ったことがあるだけなので、自分からはまだなんとなく遠い、ところなんやけど)

 福井と東京を行き来して生活している友達が短歌に興味を持ってくれて、そんなら私の一番好きな歌集を教えるよ、といつものバーで話したらその場でAmazonで注文してた。
 で、「あまぬまが出てくるのがいいよねー」(だったか、どういう文脈だったか忘れたが)と感想とともに話してくれて、えっ?!?!アマヌマ?!あれアマヌマって読むん?!とびっくりしたんですわ。

 いちばん好きで、そして最も繰り返し読んでいる歌集であるにもかかわらず、10年経って初めて知ることがあるというのはなんかとてつもないことに思える。歌集に限らずどんな本でも、なんか勘違いして読んでることが本当はたくさんあるのかもしれん。そして勘違いしてたことを知るには、勘違いしてたことを知るしかない(?)。どうしようもなさにめまいがする。

 自分としては、10年親しんできた天国の沼「てんしょう」を大事にしたい気持ちもあるけど。まみの世界は冷たく澄んだ光に包まれている感じがするから。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?