直感探偵1
冒頭(シーン①) 刑事さんに呼び止められるの巻き
「おはよう。昨日のサッカー日本代表の試合おもしろかったなぁ」と後ろから声を掛けられる。
「おっす。昨日の試合って引き分けだった試合だろ。おもしろかったの?」なんともさえない顔の高校生。どこにもいそうな風貌の少年。
「あいかわらず、なにごとにもあんまり興味なさそうだな、アキラは。」 ちょっとあきれたように声を出すもう一人の高校生。高橋栄斗(エイト)。アキラと呼ばれた少年よりも背が高く、運動部なのか姿勢がよく、明るそうな声で話をしている。傍から見ると、なぜこの二人が友達と思うような組み合わせの二人が学校への道を歩いていた。
もうすぐ学校につく最後の曲がり角を曲がったところで
「木下明来(アキラ)君ね」 と声を掛けられる。
「へ?」と声のほうを見ると、電柱によりかかり手を組んだままグレーのパンツスカートに身を固めた女性に声をかけられた。
「だ、だれ?」どもったように声を出していると
「おい、誰だよ、この美人な女性は」、さっきより声のトーンが上がったエイト。興味津々だ。
びじん?美人? びっくりが少し落ち着いてきて声をかけられた女性をじっくり見る。
ショートヘアの黒髪の女性。この人もなにか運動部だったんだろうなというような活発な印象を受けるスタイルの良い女性。だけど、まったくもって記憶の片隅にも存在しない女性。
「あの、どちらさまでしょうか?」かしこまった感じで聞いている。
「ま、そりゃ知らないわよね。。ちょっと少し時間ない?」自信満々に声をかけてくる女性。
「いや、これから学校なので、無理です。」さらっといって、学校を目指す。やばい人だと感じたようだ。
「いやいやいや、こんなきれいなお姉さんに声をかけられたら学校なんていけないでしょう」と、焦ったように声をかける女性。やはりやばい。
「先輩、警察が学生に学校サボらせようとしたらだめですよ。」 さらに隅に隠れていたのか、眼鏡をかけたずんぐりしたスーツ姿の男性。一緒にいる女性よりも背が低いが体重はしっかりしているタイプ。十中八九オタクタイプだ。
(警察?もっとやばい)
「わかってるわよ。冗談、冗談。」とひきつった笑顔で答える女性。
「おまえ、またなんかやったのか?」とエイト。
「また?」警察の二人が同じタイミングで声を上げた。驚いたのはこっちも同じ。
「いや、変な言い方するなよ。」とあきれたようにいうアキラ。
「じゃ、そういうことで。」早々に立ち去ろうとすると、
「ちょっと待って。これあたしの名刺。放課後なら空いているでしょ。そのころまた来るわ。今日は何時ころ終わるの?」
「今日は部活あるので遅くなりますよ。」
「いいわ、そのタイミングでもう一度来るから」
名刺をちらりとチェック、門脇凛という名前を確認して
「じゃ、六時にここでお願いします。門脇さん」
「またねぇ。お姉さんがおいしいものごちそうするわよ」楽しそうに手を振っている。
そういって学校に歩き出す。
ふたりから離れたところで、エイトが声をかけてきた。
「お前部活なんて入ってないだろう」
「なんとなくさ。」そう話しかけるアキラ。
「面倒そうじゃん。」
二人で学校に入っていった。
エイトは心配そうに後の警官に目を配った。
シーン② みつかった。
「あら、まだ学校終わっていない時間だけど、早退?」
びっくりして後ろを振り返ると、朝、嘘を言って撒いたと思っていた警察の二人組が朝と同じところに立っていた。朝にあった女性がそこに立っていた。もう一人の男性もいる。
「警察って暇なんですか?」
とりあえず平静を装っているつもりで話を返す。もちろん、さっきの質問に答えるつもりはない。
「正確にいうと、私たちは刑事。捜査に関するものであれば、自由はきくの。」
「捜査? 」
エイトの言うこともあながち外れてないのかも。
「本当に俺、なんかしました?」言葉が敬語に代わった。
「それを知りたいからあなたの話を聞きたいのよ。ちょっと時間ある?」あくまで選択はこちらという感じ。
「授業抜けてきたんで、たっぷりとありますよ。」あきらめた感じで、答えるアキラ。
「立ち話もなんだから、行きつけのお店でおごってあげる。」楽しそうに声をかけてくる女性刑事。事件の緊張感などみじんも感じさせない天真爛漫な声だった。
シーン③ 物語は動き出す@カフェ
流石に高校の制服を着て、学校近くの喫茶店に入るのはまずいので、隣の駅まで移動しレトロなカフェに入る。純喫茶と呼ばれているものらしい。
オレンジのライトのせいだけでなく、時間の経過が木の机や壁を優しい艶のある佇まいをしている。
人目につきにくそうな奥まった席に座っている3人。
「改めて自己紹介するわね。
私は門脇凛。本物の刑事よ。そしてこっちがトミー。あたしの相棒。私と違ってIT関係に強くてね。あなたが部活に入ってないのも、授業サボる可能性あるのも予想してたのよ。」
相方さんは、メガネをくいとして、軽く会釈をして、また、PCをたたきはじめた。
「自宅に押しかけなかったのは何も知らないからじゃなく、一応親御さんに心配をかけたくなかったからよ。」さっきに比べると、おちついた刑事ぽいしゃべり方に代わっている
「とはいえ、任意ってやつですよね。こんな回りくどい事するなんて。」
「そうねー。よく知っているわね。とはいえ、かなり重要人物だとおもってるわよ。わたしの刑事の勘がね。」テンションは先ほどの会話に戻ってきている。やっぱりこっちのほうが地のようだ。
クスッと笑う。相方のトミーさん。
何よ、と言う顔をしつつ、相棒にあれ出してと、支持している。
PCをくるっと回して、こちらにスクリーンを見せる。
「そういえば、タブレットとかじゃないんですね。」
ボソッと言うアキラに、
「あんなのじゃ、生産性バク下がりすぎて使えない。」
ほとんど独り言のような小さな声でトミーさんが言う。
「なるほどね。」と言ってスクリーンに映し出された二つの写真を眺める。
「2週間前の週末、あなたは太陽美術館と鷹縞屋の展示会にいったわね?」質問というよりは確認といった強い口調。
写真はそのイベントで目玉になっていた値打ちものの花瓶と宝石が散りばめらたペンダント。
「たしかに。いったかもしれないですね。」
ごまかしたように、そう言うと、
手を伸ばし、エンターキーを押すトミー。
写真が切り替わり防犯カメラの映像のような粗い写真が表示される。もう一回エンターキーを押すと、画像に処理が加えられ、アキラとわかる綺麗な写真になった。
「なるほど。これが生産性。」と、アキラが関心しながらいうと、
「そして先週の日曜日」と女性刑事が話すと、エンターを押すトミー。
最初から綺麗なアキラだとわかる写真が表示される
「スポーツカフェにいったわね。スポーツになんて興味ないのに。なぜ?」
朝のエイトとの会話をちゃっかり聞いていたらしい。待ち伏せしていたのかと思っていたが、つけられていたらしい。以外にやりての二人組なのかもしれない。
「サッカーのヨーロッパの有名な大会のトロフィーとスターのグッズが展示されるって聞いたからなんだけど。」 だんだん口調が不通に戻っていく
「誰に聞いたの?」
「誰? テレビとかでやってただろ。」
「なぜ土曜じゃなく日曜日?」だんだん質問の圧が強まってくる
「最初よりは2日目の方が空いてるかなくらいのもんだけど。」
「つまり、盗みに入りやすいってこと?」 凛と通る声で、女性刑事が言った
「はい? ??」
話の跳躍が、予想の2.5倍先を言っていて、言葉でないアキラ。
俯き加減に目頭をおさえながら
あー、うー、おー、あー と呟いている。
なんなん?って顔で見ているトミー。
そう言うことか。 アキラは正面を向く。
なんか話があたまのなかでつながってきたようだ。
「つまり、そのトロフィーが盗まれたんだ。」
と言い終わる前に、アキラの口にそれ以上話すなと言うように女刑事の指が突きつけられる。
「それだけじゃないでしょう。」と話を続けさせようとする凛さん。
「その前にふたつのお宝もね。ってことか。一応、確認だけど日にちもぴったりってこと?」揶揄うように笑うアキラ。
イライラ勘が出てきた凛は、周りに聞こえそうな大声で
「そうよ。あの3日全ての場所にいたのはあなただけ。」
と、立ち上がり、アキラを指さして言い放った。
周りの目線を感じたトミーは、
「あ、すいません。台本の読み合わせしてましてー。」とよくわからん言い訳の説明をしている。
一瞬の沈黙。
「さー、あなたの言い訳を聞かせてもらいましょーか。」ドスのきいたような声で問い詰める凛。
「うーん、その場所にそのひにいったのはさ」頭の上をポリポリと書きながら、一呼吸
「なんとなくなんだよね。」
場が凍った。
シーン④ 捜査開始@カフェ
どれくらいの時間がたったのか。我を忘れていた凛。
頭を振りながら「そんないいわけないでしょ」とまた大声でアキラを指さして罵倒する。
周りももう、演劇の練習だと思っているようだ。
「そういわれてもねぇ。理由なんてないんだからさ」そう答えるアキラ。
「たまたま、2か所ならあるかもしれないけど、3か所連続よ。あなたが怪盗ロジックなんでしょう」とさらに声が大きくなる。さすがにカフェのマスターが少しトーンを下げてほしいと言ってきた。
一瞬間があいた後
「怪盗ロジック?そんな名前ダサくない。俺なら絶対つけないけどな。」とコーヒーを飲みながらつぶやくアキラ。静かにうなずいているトミー
「そんな名前、本当にわかりやすい劇団みたいだよね」もう完全にタメ語で話している。
「本当にあなたじゃないの?」座ることなく、呆然とし始めている凛。
「あたりまえだろ。ネーミングセンス疑うレベルだぜ。」
「じゃ、あんたなら何て名前つけるんだ?」興味津々に聞いてきたトミー。
「なんかプロファイリングかけようとしている?」とトミーと会話を始めたアキラ。
「そうだなぁー。俺ならホームズとかコナンとか逆の名前をもじること考えるかなぁ。ロジックなんてそんなド直球なセンスない名前は付ける可能性ゼロ」言い切ったアキラを見ながら、パタリと座り込む凛。
そのまま、腕を机の上に置いて、顔を机におとし、
「えー、ジャー、犯人は誰なのよぉ」とぐずり始めた。
「とはいえ、意外に信じるの速いなぁ」
「だって、あなたロジカルじゃないし。多分どっちかっていうと直感派でしょ。初めに話した時からそう思ってた。」ぼそっという凛。
(それなら、最初から疑うように話すなよ)と声には出さずとも、顔に書いているアキラ。
トミーは急にパソコンをたたき出し、ちょっと驚いたように目をパチクリさせて、とんとんと人差し指で、凛の肩をたたく。
「なによ」と顔を上げて、トミーが見せたPCのスクリーンをのぞき込むと。
目を大きくしくした凛。やる気が出てきたようだ。すごい勢いでPCをひっくり返しアキラに見せる。
「これをみなさい。怪盗ロジックが予告場を出してきたわ」
「じゃ、俺じゃないこと判明したってことだろ。」
「ところがどっこい。犯行予告は来週。しかも場所が北海道。」
「いや、全然関係ないじゃん。」
「やっぱりあなた、いろいろ隠しているわね。もうばれているのよ。あなたたちが来週北海道へ修学旅行行くの。」また、探偵ぽくぴしっと指を突き刺していってきた。
また始まったと、トミーとアキラは顔を見合わせて、お互いに顔を振っている。
しかし、なんで、わざわざうちらが旅行行くタイミングで、そんな予告出すんだ。
「明らかに俺をはめようとしている感じなのか。逆に怪しすぎるけど。」そんなことを言いながら考えていると、
アキラのスマホがブルっとした。メッセージが来たらしい。
「やべ」とメッセージを確認したアキラは、「もういいかね。」と二人に聞く。
「とりあえず、来週まで事件起きないんでしょ。じゃ、いいよね。また」
「駄目よ。まだ容疑は晴れていない。そもそも、なんでそんなに急いでるのよ。もしかして彼女?」
「そんなものいねーよ。だけど、学級委員長からお呼びが。。」
「へっ。なんで? あんたが言ってただろう修学旅行の打ち合わせがあるんだよ。」
「じゃ、コーヒー御馳走様。おねーさん」そう言ってアキラは言ってしまった。
「どう思う、トミー」
パソコンを打ち込んでいるトミー。 ふーと息を吐き出し、スクリーンを見せる。
『分析結果、犯人につながる確率78%。』
トミーのパソコンがそう言っていた。
第2話へ。 いざ、修学旅行へ
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