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作品集

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ネット物書き・御子柴流歌が書いたモノを集めてみました。
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#創作

『プロポーズ』 #140字小説

「その言葉を待っていたの」  彼女は晴れやかな笑みを浮かべて、プロポーズをした俺に向けて続ける。 「コレでようやく、あなたにサヨナラができるのね」 「え」 「『誰か良い人が見つかるといいな』」  まさか。 「貴方にそう言われて逝ったあの娘の気持ち、少しでも理解出来たらいいわね」 #140文字小説 #140字小説 #小説 #即興小説

『ヌーヴォーとヴィンテージ』【#短編小説】

 ――むしろ『超短篇小説』かもしれない。  っていうか、そうだね。  1000文字すら行ってないです。 『ヌーヴォーとヴィンテージ』 「んーっ! うぉいしーっ!」 「『うぉいしい』の?」 「そ。ただの『美味しい』との差別化、的な?」  食後のバニラアイスに舌鼓をうつ彼女の頬は、アイスよりもよく溶けていた。   お気に入りのそれは、乙女のなんとやらなどを考えた上で週3回を限度にしている。  毎日食べるよりも喜びが大きくなるらしい。 「なによ。その顔」 「なにが?

『眼鏡越しのあなたと私』【#短編小説】

あらすじ  暮れなずむ空、教室。  イイ雰囲気、のはず。  ――「カワイイなぁ、って思って」  そんなことを言う彼の視線は、やっぱりちょっとメガネに行ってる。  これは生粋のメガネ女子と生粋のメガネフェチによる、夕暮れ時のひとコマ。 その想いが ちからをくれる 「ちょ、ちょっと待って」 「ん? 心の準備?」 「あの、えと……。うん、そんな感じってことで」  小さい頃から、私は視力は悪かった。  そのおかげで小学校に入るかどうかという頃から、眼鏡は私のパートナーだった。

『珈琲は月の下で』【#短編小説】

貴女と飲むのは、これがいい。 「ふぅ……」  ちょうどお客様の流れも途切れた、カフェスタイルのバー。お昼とされる時間はコーヒー系をメインに、夜とされる時間帯はお酒をメインに提供するスタイルのコーナーだ。  カウンターのやや奥まったところで、鋭く、だけど小さく一息つく。傍からは気づかれない程度に背筋を伸ばしてみれば、関節も何度かぱきぱきと一心地つくような音を立てた。  かれこれ一週間もこうしていれば、朝も昼も夜もよくわからなくなってくるものだ。それはこうしてカウンターの内

げんきをだして 〜「好きな人に『好きだ』と言わずに『好きだ』と伝える短篇集」〜

『げんきをだして』       なんだか、今日はとくにいそがしそうに出ていった。  お勤めはボクの方が遅いので、たいていは見送る役目。  いってらっしゃいの声は届いただろうか。  せめて、できる限り、今夜はゆっくりできるようにしてあげよう。                    ○      もう真夜中。  1日は短い。  小さな足音。  間違いない。  帰ってきた。  いつもやさしいあなたに、今日はちょっとだけサプライズをあげる。  目の

恋の味 ~超短篇~

『恋の味』  この恋は、たとえて言うなら、ショートケーキの上にあるいちごのようなものだ。  真っ赤に染まったいちごは、見る者をひきつける。  可憐な姿に引き寄せられる。  けど、その実態は――さらにクリームの化粧を施していなければ、その酸味をごまかせない。  蛮勇ながらその実に触れて、痛い目を被ったことなんて数知れず。  だけれど、僕は。  そんないちごに恋をしてしまった。      to be continued...?       あとが

東雲システマティック 〜超短篇〜

東雲システマティック     東の空からは夜明けの報せ。  春の朝は次第に足早。  時々聞こえる大型トラックのクラクションは、それでもどこか眠気を纏っている。  そんな壊れ気味の時計にしたがって、まだ数少ない街ゆく人はいつも足早。  出始めた太陽に背を向けて、歩く先は駅とかだろうか。  こんな時間にどこへ行くの、ってそれは人それぞれ違うだろうけど。  少し冷えた部屋の中から、何も纏わずにそんな光景を眺めてみた。  ため息をひとつ、東雲に溶かす。  そのあたりに影が落ちた