拝啓

最近私について、「バラバラ」を扱ってコラージュしているように見えて、
実は、「背景」を作っているのではないかと思っている。

背景は、地面、地盤でもいいのかもしれない。

少し前、は、「プラットフォーム」だと思っていた。
いや、もしかすると背景を制作することで、プラットフォームを作っているのかもしれない。

を書いたように、田中さんの「生態系」という言葉を持ち出して、門脇さんの自邸を整理してみたことに近い。
ただ、私にとって生態系は、生き物の進化なんかの現象によって現れるように思えていて、やはりそれをどう直接的に作るか、ということに持っていきたいと思っている。

だから、バラバラなものの「扱い方」に興味はあるものの、その方法論自体の構築に興味があるのかと言われれば、最近(特に修了後)は違う。
バラバラなものがバラバラなままでいられる背景をどう作るかに興味がある。

例えば、昨年洋服店のために制作した[omoshi]というハンガーラックは、https://ruitoile.wixsite.com/home/stv

ハンガーの機能である服を引っ掛ける部分と、それを立たせる脚を違う物質で作ることによって、
ディスプレイの持つ洋服と支持体の主従関係をぼやかしたいと思った。

これには、この店の持つ特有の空気感が考えのベースにある。商品となる洋服だけではなく、アンティークの什器や非売品のポスターや子供の遊ぶスペース絨毯などの、ふぞろいのオブジェクトが一つのムードを作り上げている。そこに、従来は既製品(百貨店からの払い下げ)のハンガーラックが立っており、店主自身その異物感に違和感を抱いていた。

しかし、私はそのふぞろいのオブジェクトの作り上げる一つのムードに「合わせる」デザインをしようとは思わなかった。そうすることは、「ふさわしい/くない」という基準をより強めてしまうことになり、排他的な姿勢になりそうだったからである。

個人店ならではの基準なき統一感を、デザイナーによって、基準を分析し解明、凝縮した一品を制作することは、「わかりやすく」すること=深み・興味を無くさせることに繋がってしまう。

そんなことを考えていたのかもしれないと、今日やっと理解している。きちんと背景になれたかはわからないが、そこにあったムードを壊すことなく必要なものをデザインできたと思っている。

話が少しそれたかもしれないが、もう一度「背景」について考えてみる。

「背景」とは、一般的に
1.絵・写真の題材の、背後の景色(や様子)。また、舞台の奥に描いた景色。
2.ある人や事件の背後にあるもの。
を指すが、

食卓にとってのランチョンマットであったり、
少しひねると、ファッションやダンスにとっての人体(チェルフィッチュの振り付けなんかにてそう思う)でもあるかもしれない。

乗っかるものそのものとは別のルールでできているのにも関わらず、その背景に乗っかった瞬間に、全くそれらは違う現われになる。

傲慢かもしれないが、そんなものを作りたいと思う。くるっと見方が変わるような、器を変えたら料理が美味しく見える(詐欺ではなく)ような制作をしたい。

それを支えるのは、丁寧な観察だと、思えてくる。設計には直接的には見えなくとも、制作の一部だ。

「背景」もしかしするととてもいい言葉かもしれない。英訳すると、何になるんだろう。
やっぱり[background]しかないのかな。
さっきの1と2の意味を兼ね備える英単語、誰か知っていたら教えて欲しい。