特別な馬『ドウデュース』への想い
皆さんにとって"特別な馬"とはどんな馬ですか?
特別な馬=強い馬、可愛らしい馬、カッコいい馬、出資されている馬、白毛やネーミングなど個性のある馬、という感覚でしょうか。
勿論、私もこれまでの競馬人生の中で特別な馬は数頭います。例えば、パッと思いつく馬だとフィエールマンやシャフリヤール、エフフォーリア、サートゥルナーリア、リオンディーズなど。この5頭に共通して言えることは、素直に色んな面で惚れてしまった馬です。そして、今現在もこの5頭に対する印象は変わっておらず、レースでの走り、静止から動作をする過程、色んな方向から自分好みの馬だと認識しています。
そんな中、上述した5頭とは違う意味で、"特別な馬"だと感じる馬が1頭います。
その馬の名は、
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『ドウデュース』
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何故、この馬を特別な馬だと感じたのか?
→それは、"私の固定概念を覆してくれた馬"、"私に競馬の色んな見方を教えてくれた馬"だからです。そして、この馬を分析していく内に、この馬の異常なレベルのポテンシャルの高さを感じ…現役最強馬エフフォーリア、タイトルホルダーに匹敵する…いや、それ以上かもしれない逸材だと私自身が素直に感じています。
その私が感じたこの馬への想いと新馬から現在まで流れるストーリーをこれから話していきたいと思います。
※あくまで、各々色々な見方や考えがあると思います。
少しでも共感してくださった方やドウデュースへの見方が変わったと感じた方は、イイねやRTなどリアクションしていただけたら嬉しいです。
※少しマニアックな内容とストーリー性のある構成となっていますので、お時間ある時にゆっくりご覧いただければと思います。
〜新馬から現在までのストーリー〜
Ⅰ 新馬戦
時は遡ること1年前。当時キラーアビリティが破格のラスト1F10.8という異次元ラップを計時し、クラシックはこの馬が中心だと感じた次の週に"ドウデュース"がデビューする。
POG関連で毎週、調教動画をチェックしていたが、彼の馬体写真はなく、また過去の動きを示したものもなく、芝コースとCWで追い切りを行った動画2本しかなかった。「パワフル」、「ボテっと見える」、「時期を重ねれば脚の回転は更に増す」、そんな調教動画の感想だった。
そして、当日のパドック。
494キロで出走してきたドウデュースは、馬体重以上に重厚さを感じさせ、パワーと筋肉質のダブルパンチが効いた馬体で登場。正直、緩いのか?柔らかいのか?紙一重な要素であるが…当時は、緩い>柔らかいという印象だった…と同時にいまいち身体を上手く使えていない動きが今後、どのように変化していくのか、も注目ポイントだった。つまり、私のデビュー前のドウデュースに対して、「スピードとキレを求められるクラシックは厳しく、多少タフさの要求値が高い馬場質で能力全開」という所感だった。
レースでは、スタート後に多少引っかかり、鞍上の手綱が緊張する場面が。実は、スタート直後鞍上がオーバーに右側を確認する場面が2回。陣営から事前に燃えやすい気性の持ち主だと聞いていたのか?マークする馬でもいたのか?定かでないが、事実"内目に入れたかった、前に馬を置きたかった"のだろう。
ただ、向正面では落ち着き、3コーナーからピッチの上がるレース展開に。
→ラスト4F目から12.2ー11.8ー11.4ー11.1の綺麗な加速ラップをマーク。しかもラスト1Fは、ガイアフォースを捉える必要があったので、11.1よりも速いラップを刻んだ。これは推定10秒台は突入しただろう。そう…つまり、キラーアビリティと同等のラスト1F数値を新馬の時点で出したということだ。
また、2着馬ガイアフォースは先日に超破格レコードをマークし、菊花賞候補として名を挙げ、3着馬フェーングロッテンはラジオNIKKEI賞覇者。
ラスト1F数値がGI級と同等に競った馬の個のレベル自体も高かった"伝説の新馬戦"と評するに相応しい。
当時、「小倉の馬場が高速化していたから、速い数値を計時しても評価できない」という意見や実際に私のツイートのコメント欄で言われたこともあった。
ただ、とても走りやすい陸上競技場のトラック馬場で一般人が100m10秒を切ることができるだろうか?限りなく答えはNoだろう。
つまり、高速馬場だったからこそスピード(速いラップ)が出たのでは無く、絶対的なスピード能力があるからこそ高速馬場でも速い数値が出るという仕組みだと私は考える。
この認識なので、ドウデュースが出した数値という価値は相当高いものがあると感じた。
レース後、ドウデュースへの印象は正直複雑なモノだった。前提に本来パワー系の馬のはずが、速いラップをラスト1Fで出せたということは、速い馬場とタフ馬場両方こなせる二刀流か?それとも、パドックで感じたあれは、"緩さ"ではなく、"柔らかさ"だったのでは?
となると、成長段階で徐々に"柔らかさ"も発達していけばスピード能力に絶対対応できるかもと。まぁ今だから言えるかもしれない。あれは、"柔らかさ"だったな…と。
Ⅱ アイビーS
新馬戦から約1ヶ月半後。4つの小回りコースから、ワンターンの大箱東京コースへ姿を現したドウデュース。
パドックでは、短期間で+12キロの馬体重増へ更にパワーアップした姿があった。
そこで、新馬戦から変わり身を感じた点が2つ。まず1つ目は、"歩様スピードが上がっていた"こと。強いサラブレッドとは、この歩様スピードが絶対条件とも言えるほど重要な要素。速く歩くことができる=速く走ることができるということを前提に、速く歩くことができる馬=部分部分のパーツがひとつに連動した結果、速く歩くことができると私は考えており、人間で言えば腕を身体にテープで締め付けられれば、不自然な感覚となり、きちんと歩くことさえ困難であるように…部分部分のパーツがしっかりと働く→ひとつの連動性を成す→速く歩くことができる→強い馬という図式が成り立つ。
ドウデュースも新馬戦から速く歩くということについて、大きな成長を魅せてくれた。
2つ目は、"筋肉の質が上昇した"こと。+12キロは、確かに太い。ただ、その余分な脂肪が全て外側の皮膚についただけではなく、内側の筋肉部分へのパワーアアップに成功していた。流石は、名門"友道康夫"厩舎。短期間で友道流の筋肉の輪郭が分かるようになり、光に当たれば尚更一発で「友道厩舎の馬」だと判別できる造り。間違いなく小回りで走らせるよりか大箱の東京や阪神向きだと感じた。
と同時に、大箱コースへの適性は高いが、キレ(一瞬のスピード値)が求められるレースだと分が悪いし、暴大な筋肉量のせいで、スピードという名のスタミナを殺してしまう可能性さえあると感じた。
レースでは、新馬戦同様にスタート直後鞍上の手綱が緊張し、引っかかり状態。ただ、ずっと引っかかるのではなく、道中折り合いがピタリと付く。これは、新馬戦でも見られたこと。ある程度の馬は、新馬戦で色んなことを覚え、次戦のレースでも同じことをする。彼も同様だろう。
3.4コーナーも中団辺りに位置し、あとは追い出すだけの競馬。直線は、鞍上が始動をワンテンポ遅らせ、他馬がムチ連打の中、ラスト200mでムチを使い、もうひと伸び。
レース後半5Fラップ→12.9ー13.2ー11.5ー11.2ー11.8。
究極の瞬発戦となり、2着馬にクビ差凌いで1着。
レース後の私の印象は、思った以上に"伸びなかった"。勿論、馬体からキレや一瞬のスピード値が求められるレース質だと分が悪いと思っていたため、納得のレースでもあったが…個人的に2着馬グランシエロに最後追い詰められていた点に納得がいかなかった。
明らかに、筋肉量や新馬戦で魅せたポテンシャルの高さはメンバー中No.1なのに、自分自身が感じた後味悪い競馬となった。
アイビーS終了後も、「クラシックのスピードレースには対応できないかも」これが率直な感想。
ただ、縦の比較で成長も感じられたのがこの馬へのクラシック評価に繋がるひとつの道筋だったのは間違いない。
III 朝日杯FS
レースパフォーマンスに疑問を感じたアイビーSから約2ヶ月後の12月に3戦目の朝日杯FSに出走する。
武豊J×キーファーズ(松島オーナー)悲願の初GI制覇になるか、各メディア注目した一戦で3番人気の支持を受けたドウデュース。
私は、このレースには、当時の絶対的マイル王者のセリフォスを始めとする…後の皐月賞馬ジオグリフやNHKマイルC馬ダノンスコーピオンらが名を連ね、ハイレベルな戦いになると予測していた。
当レースの週中にフォトパドックを確認。そこで更にこの馬の成長度合いが分かるほど"ある部分"が群を抜いていた。それは、光沢のある肌質、爆発しそうな筋肉量である。それは、新馬から感じていたことだが、更にパンプアップし、小学生から高校生になったような劇的成長を遂げていた。
実際に、パドックでもアイビーS以上に筋肉部分の柔軟性、可動域の広さ、ハーツクライ産駒らしい骨量と馬格を持ち合わせる馬だと再確認。ただ、気になる点が1つ。それは、まだ部分部分を全体使って動かすことができていない。これはほんの僅かな部類だが、アイビーSの際に述べた"歩様スピードの速さ"の前提に部分部分のパーツが連動性を成すと述べたが、実際にまだ完璧に連動されていないという印象。言語化しづらいが、"ネジがどこか1つきちんと締まっていない状態"と表せればよいか。あと「もう少しなのにな?」が素直な感想だった。
また、1600mは若干本質的にも短いと感じた。前半から速いペースになりやすい朝日杯のレース質に過去2走共にSペースの1800m戦を使っていたドウデュースにとって、ペースへの対応力と馬体適性から比例する距離適性へのズレも懸念点だった。
唯一の推し材料としては、"12月のパワー馬場適性"。
↑豊富な筋肉量から繰り出される馬力は、12月のパワー馬場にも負けないぐらいのレベルの持ち主だと考えていたため、セリフォスらにどう対抗するのか非常に見物だった。
レースでは、新馬とアイビーSの際に懸念視したスタート直後の折り合いは問題なくクリアできていた。友道流の馬の仕上げ方が功を奏したのか、馬自身がレースを覚えることができていたのか、まあ1番は、朝日杯のレース質(前半ペースが流れる)にマッチしたことが最大の要因だろう。
そして、ペースに戸惑うことなく…しっかりとレースの流れに乗れたドウデュースも素晴らしいが、鞍上武豊Jの手綱捌きも絶妙だった。
3コーナー付近で、鞍上が数回左後ろを確認。すぐ外に出すための安全確認で後ろを振り返ったのもあるが、ドウデュースは、過去2戦Hペースへの経験がないのと同時に3.4コーナーを外から他馬に被された経験もなかった。鞍上はオーナーのために、自分のために絶対勝ちたいGIという場面で揉まれる経験をさせる必要はない。鞍上の頭の中は、「被されないようにすること、自分のスペースをしっかり確保すること」だっただろう。
もし仮に、外から被されてもすぐ対抗できるように、すぐ動けるように前のスペースを確保している。自分が前へ進めるようにスペースを空けておく一流ならではの乗り方であろう。このような乗り方は、よくルメールJもする。だから、この2人の乗り方は俗に言う"どん詰まり"が少ないのだ。
話を戻すが、上手くドウデュースは直線末脚を繰り出せる位置を取ることができ、あとは伸びるだけの競馬に。
そして、この馬のポテンシャルを認めざるを得ない場面に遭遇する。
それは"ラスト2F目の数値"と"伸び方"。
レースラップ→12.6ー10.6ー11.1ー11.9ー12.1ー11.9ー11.2ー12.1
5F目12.1と多少ラップが緩む箇所があるが前半ー後半(34.3ー35.2)は、朝日杯らしい前傾ラップに。そして、冬の馬場差を考慮すれば、スピードの下地にスタミナを保持していないと克服できない馬場質とレース質がマッチし、根底に"能力のある馬"しか来れないレースとなった。私は、以前から朝日杯FS組は超ハイレベルと述べているが、それは7ヶ月経った今でも変わらない。
また、後半部分で一番ラップが速くなった箇所がラスト2F目11.2秒地点。この地点は、全馬が1番速い脚を出せた地点でもあり…前半流れたペースのおかげで乳酸が溜まっている状態の中、速い脚を繰り出さないといけない地点でもあるため、この地点で伸びた馬は素直に評価しなければならない。そう…この地点で1番速い脚を使った馬が"ドウデュース"である。
これ、皆さんそれぞれ色んな考え方があると思うが、私は、恐怖さえ感じたレースでもあった。
最後に言わせてほしい。朝日杯というレースは、近2年(2020、2019年)の傾向から…1400mの転戦馬や先行で持ち味を発揮してきた馬が多頭数出走する。
となれば…必須条件は、序盤引き締まった展開での好走歴や経験値。
逆を言えば、マイルや1400m未経験で1800m戦onlyの馬は序盤のHペースに戸惑う可能性があるわけだ。
実際に朝日杯FSにおいて、マイル未経験で勝った馬は"リオンディーズ"のみ。リオンディーズが勝った2015年は800mー1000m(12.6ー12.7)通過60.0秒のマイルGIとなれば超Sペースに入る部類で…マイル〜1400m的なスピードレースにならなかった事が好走の大きな要因であり、こうした未経験の馬はペースへの対応力も必須となるのだ。
ローテーションの観点からも…近5年で距離短縮馬は馬券内1頭のみで、距離短縮馬の成績が圧倒的に悪く、道中の追走スピードによる不慣れさがローテーションにも大きく関係しているのが朝・日・杯というレース質なのだ。
→ドウデュースは、未経験のマイル戦、1400m的なHペースへの経験値不足、本質的に1600mは短い馬体、セリフォスをねじ伏せた競馬、ラスト2F目地点での伸びと速いラップ数値、これ"異常"だと思わないか…?
ここから、この馬への魅力値が私の心の中でどんどん上昇していくことになる。「普通の馬ではない、異常な馬」だと言うことをこれから更に細かく述べていく。
IV 弥生賞
劇的な朝日杯FS優勝後、皐月賞直行ローテではなく…弥生賞を挟むローテを組んできた陣営。これには正直、意外だった。なぜなら、キーファーズの代表が「武豊Jとダービーを勝ちたい」と常々コメントしていたからだ。要するに、私の頭の中では、ダービーを逆算したローテを歩んでくると思っていた。近年流行中の皐月賞直行→ダービーのように。ただ、蓋を開けてみれば、弥生賞からの始動。ドウデュースは栗東所属の馬。つまり、弥生賞→皐月賞→ダービーだと短期間で3回長距離輸送をすることになる。これが唯一の懸念点だった。
そんな懸念や初の中山コース、2000mへの対応力など不安材料が残る中、当日のパドックにドウデュースが現れた。この日は、テレビでパドックを見ていたのだが…約3ヶ月ぶりのドウデュースは、馬が明らかに変わっていた。朝日杯時に感じた"小学生から高校生"のように成長したドウデュースが、今回は大学4年の卒業する前のような...もうすぐ社会へ飛び立つ前に色んな経験をした大学生のような威風堂々たる身体つきへ進化していた。
実は、私はこのドウデュースの馬体、歩様に惚れてしまい…私の中でこの馬に対する敬意と過小評価しすぎていたなと自分自身に情けを感じさせてくれた馬でもあるのだ。
是非、パドック動画がある方は見てほしい。馬への見方や感じ方は人それぞれあるが…躍動感溢れる馬体と歩様、身体を波打つように動かすことのできる身体能力と備えている筋肉の質感などハーツクライ産駒の中でも中々いない部類の馬がドウデュースという馬。
そして、改めてドウデュースのはち切れんばかりのガッチリとした鋼のような筋肉は、"硬い"とは思わせない動かせると圧倒的な"柔軟性"を感じさせる馬体ポテンシャルの塊は、古馬GI級で"こんなに凄い馬だったのか"…これが当時の感想。まるで筋肉ムキムキのマッチョな人が、いざ喋ってみると…とても愛嬌よく温和な性格のような"欠点のない人"がドウデュースと表そうか。
兎に角、いち競馬ファンの私の眼からは、この馬の凄さをこの弥生賞で学んだ。
レースでは、前走の朝日杯で経験してしまった前半速いラップ→弥生賞特有のSペース戦になるのと中山コース2000mの対応力に注視していた。
少し話を戻そう。何故、陣営が弥生賞を使ってきたのか?→大型馬だから馬体を絞るため、体調が良かったから、弥生賞の賞金狙い、まぁ全て間違ってはいないと思うが…やはり一番は、"2F延長の中山2000mのトリッキーコースでどんな走りをするのか見定める"のが目的だったのではないか?と私は考える。
元々掻き込むようなパワフル感満載のダート馬かと思わせるほど、ダイナミックな走りは距離が伸びてプラスに働くとは言い難く…今回1600m→2000mの2F延長×独特のパワフル走法が故に…内回り中山コースに適性があるのか否かをしっかり判断するために弥生賞を使った。となれば、"する"レースは前哨戦らしい折り合い重視と試しの競馬。
不安は見事に的中した。馬は、走る距離を知らないので前走のペースが基本ベースとなる。朝日杯で前半飛ばした経験が見事命中し、スタートしてからずっと鞍上の手綱が緊張しっぱなし。外めの枠ということもあり、馬込みの中に入れることができない状況が続いた。逆を言えば、"引っかかってくれて良かったな"とも感じた。なぜなら、""馬が賢い""と判断できるから。前走のペースをある程度覚えている="学習能力が高い"ということに繋がる。ここで新馬戦とアイビーSを思い出してほしい。ドウデュースは、スタート後引っかかっていたが道中はピタリと落ち着いた。しかし、弥生賞時は終始手綱が緊張しっぱなし。これは馬が朝日杯のマイル的スピードレースを覚えたからであろう。つまり、頭がいい。怖いことを言うのなら…憶測だが、友道師はこの馬の頭の良さを知っていたため、逆算した思考の中でわざとペースの遅い2F延長ローテを経験させた可能性が高い。もしこれが的中しているのなら、本当に"名門"に相応しい厩舎力であろう。
レースに戻る。3コーナー手前からロジハービンが進出したことでコーナー時に被されてしまい位置を落としてしまう。
その弥生賞のレース内容は、3コーナー付近で約2頭分位置を落とす→その時のラップが11.8ー11.5ー11.4と加速していく中…位置を落としたドウデュースは、減速せざるを得ない状況に→直線、ボーンディスウェイと大きな接触により、スピードに乗りづらい場面があった中での2着は流石GI馬。
ドウデュース自身、"瞬間的な加速力"よりも"持続力"に長けている馬でもあるため、位置を落としたかつ直線も接触してスピードに乗れなかったが、最後末脚を伸ばしている点は非常に評価しなければならない。要するに、負けて強しの競馬で…この2着に悲観することはなかった。寧ろ、その逆でこの馬へのポテンシャルの高さを知ることができた、教えてもらったことは本当に感謝したい。
そして、アイビーS終了後に感じた「クラシックのスピードレースには対応できないかも」という考えは、半分以上無くなった。この時点では、「ダービーはキレ負けするが…皐月賞のスピードレースには対応できる」が感想。
Ⅴ 皐月賞
課題の距離延長ローテかつトリッキー中山2000mの弥生賞をステップに順調なローテを組んできたドウデュースの5戦目、皐月賞。
全てが完璧なローテだった。大型馬で1回叩いてレースに出走できた、輸送慣れ、同コースを1回経験できた、2F延長という大きな壁がなくなった。まさに針の穴を通すような狙い済まされた臨戦過程と言えよう。
そして、圧巻だったのは、CWでの追い切り。
※以下、当時の追い切り評価コメント⤵
弥生賞では"歩様"の成長、皐月賞では"走り"に成長を感じ、やっと完成形に近づいてきた印象を持った。気づけば…この馬は、5月7日の遅生まれ。並大抵の馬なら、2歳からクラシック間は、成長力の差が生じる。この馬は、5月生まれながらスピードレースの朝日杯を制した絶対的な能力値は、やはり世代間でも群を抜いているのだろう。
レースでは、弥生賞のパドックで感じた"凄さ"を超えるようなパフォーマンスを披露する。
まずは、序盤。元々、先行するタイプではない馬。ただ、皐月賞においては、最後方に近い位置取りを取った鞍上の意図を組みとる必要性があった。なぜなら、皐月賞というレースは、先行馬や4角5番手以内で競馬をした馬が圧倒的に有利であるから。コース形状や皐月賞のレース質に関しては、日本トップレベルの騎手なら頭に入っているだろう。では、何故、後方の位置を取ったのか?→鞍上のレース後コメント「ペースが速くなることを見越して後方の位置を取ったが、ペースが遅すぎた」との事。レースと鞍上のコメントを見れば、完全なる騎乗ミスと感じる人は多かっただろう。ただ、裏を返せば、後方の位置を取った=ドウデュースに"距離不安があった"とも言える。
だから、弥生賞の際でも述べたように…馬を距離という壁に慣れさせるために弥生賞という皐月賞と同舞台の2000mを使ったのだろう。
では、少し話を違う視点から考えてみる。そもそも陣営や鞍上は何故、ドウデュースを距離不安だと思ったのか?これに関して、個人の考えだから…そもそも距離不安なんて陣営は思っていないかもしれない、ただこれまでのレースを振り返った時に間違いなく1つ声を大にして言えることが、"ドウデュースは前半必ず手綱が緊張する"こと。馬体的な距離不安というよりも精神的な距離不安と言いたい。ましてや、鞍上は今年の皐月賞のペースが速くなると想定していた。速いペースについて行けば、自滅の可能性すら頭にあったのだろう。だから、後方の位置を取った。当時、掲示板にて鞍上の乗り方に皮肉なコメントがいくつもあったが、決してダメ騎乗ではなく精密に考えられた"神騎乗"だったのだ。
レースの話に戻す。
ドウデュースは、後方の位置から3コーナーまで我慢し続け、4コーナー手前から徐々にスピードアップしていき、最後の直線。アスクビクターモアが作るSペースに、ドウデュースを除く1.2.4.5着馬は、4角3番手以内。対してドウデュースは、4角14番手で33.8秒の上がり最速をマーク。ここで、強調したい点が2つ。1点目は、直線オール右手前で中山急坂時点をハイラップでまとめている点。大外ぶん回しかつオール右手前、先行有利展開であの末脚を繰り出せるドウデュースには、正直驚いた。
強調材料2点目は、皐月賞における「4番人気以内×4角10番手以降×上がり最速34.3秒以内」に該当した馬のダービー成績がえげつないということ。もう、ダービー馬になるための答えをこのデータが表していた。
※【訂正】・マカヒキ⇒1着
ダービー成績⇒【4ー0ー1ー0】馬券内率100%
ドウデュースがダービー制覇したことで、この最強データは、【5ー0ー1ー0】に。来年以降も使えるデータなので、是非参考までに。
このデータは、かなり本質を突いており…皐月賞はスピードの持続力戦になり、4角10番手以降の馬は序盤のペースについていくためだけに脚を使う+後半前の馬を捕まえるために脚を使わなければならない…そして、コース形状、春の高速芝が牙をむいてしまう。その中で、皐月賞で有力視され、しっかり脚を使うことができた馬は、皐月賞の着順関係なしに…直線距離の長い東京コースで真価を発揮するというカラクリなのだ。付け加えるなら…上述したように、今年の皐月賞は完全Sペースの先行有利レースで、前が速い脚を使っている中での上がり最速という現実は、紛れもなく本物。本当に凄いことだよ…これは。
皐月賞終了後、当時私は、ドウデュース陣営が待ち続けたダービー制覇へ向けて、レースを重ねる毎に、時間を重ねる毎に、鞍上と信頼関係を重ねる毎に、友道流の訓練を重ねる毎に、パフォーマンスが上昇し続けているこの馬への期待度は、相当高いものがあった。そして、ダービーを本命◎ドウデュースに決めた自分もいた。
VI 日本ダービー
私もドウデュース陣営も待ちに待った日本ダービー。皐月賞から約1ヶ月という長いようで短い期間を乗り越えた。そして、ドウデュースは一戦毎に急上昇し続けている…もはや私の常識の範囲外の馬という位置づけ。
弥生賞→皐月賞→日本ダービーの3連続長距離輸送という若駒にとっては、苦難の連続。
それでも、パドック時の体調の良さは光るものがあり、陣営の目標は、やはりこの"日本ダービー"だった。3連続長距離輸送でも堪えないタフネスさは流石と言うべき。
朝日杯、弥生賞、皐月賞で色んな経験とレースを共にしてきた鞍上・武豊Jは、「ドウデュースに関しては、不安が全くない」と口にしていたように…これがリアルな本心だったのだろう。なぜなら、全て経験をしてきたから。マイルの速いペースの経験、揉まれた経験、不利を受けた経験、輸送の経験、皐月賞で距離を克服した経験、全てのレースでドウデュースに跨った武豊Jとの信頼関係は絶大なものがあった。
本当にこの馬は安定している。毎回、常に高いレベルでパドックを周回できるムラがない馬。
ただ、どうしてもドウデュースの馬体について…個人的に引っかかることがあった。それは、豊富な筋肉量から繰り出されるスピード能力が高すぎる…ダノンベルーガ、イクイノックスらと比較した時の馬体フォルム…特徴のある踏み込みの際の、重心の位置から瞬間的な加速がしづらい点などから、距離延長かつ切れ味を求められる"東京2400m適性"は、疑問を感じた。まして、ドウデュースは朝日杯優勝馬でもあるし、マイル質がかなり求められたレースでの好走からも必然的にダービー適性への評価は与えられなかった。そして、皐月賞の競馬から…ダービーも同様に後方待機策を取ってくると想定の元、ダノンベルーガやイクイノックスらに切れ味を示して差す競馬は厳しいと考え、3番手評価に落とした。つまり、馬体ポテンシャルは認めつつも…「東京2400m適性」という枠組みの中で、比較をした時にダノンベルーガ、イクイノックス>ドウデュースという位置付けは絶対に変わらなかった。
ドウデュースの日本ダービー見解⤵
レースでは、皐月賞の乗り方(後方待機策)を、日本ダービーでも完璧に騎乗してきた武豊J。スタート後、鞍上は進路を若干内へ切り替え、ダノンベルーガの後ろの位置を取ろうとした。本来、以前からの課題でもある距離への壁がある中で、鞍上の意思は"前に馬を置く"ことが最優先だった。ベストは、ダノンベルーガ、ジオグリフを見ながらの競馬をすること。トップジョッキーたる"強い馬の後ろ"を当たり前のように取ることができるからこの騎手は凄い。
実際にレースの内容は、前半1000m58.9秒。過去10年で3番目の速さ。
レース後半5F→12.0ー11.8ー11.5ー11.7ー12.0。
昨年のような超加速力勝負ではなく、ドウデュースにとって、"瞬間的な加速性能"を求められなかったのが功を奏した。
本質的に"スピードの持続力"は、一級品で…外枠からダノンベルーガらをマークしながらスピードを徐々に加速していく見事に適性とレース質がマッチ。適性の範囲内だったからこそ、距離への対応力も増し、皐月賞同様の脚を繰り出すだけの競馬となった。鞍上は、勿論ダノンベルーガ、ジオグリフをマークしていたはず。すると、イクイノックスは後方の位置を取っていることも武豊Jの頭に入っていただろう。ただ、私は、「イクイノックスから差されるという不安は鞍上の頭の中にはなかった」と推測している。なぜなら、ドウデュースは、過去5戦の色んなレース質でも他の馬に"差された"ことがないからである。勝負根性、スピードに乗った時の持続性能は、1番であると武豊Jは認めている。これが新馬戦から培ってきた馬と人との信頼関係であり、最高のパートナーと言えるべき存在であろう。
それがダービーの最後の直線で垣間見える瞬間があった。その前にドウデュースは、皐月賞のラスト100mで右にかなりきつくモタれる場面があった。
体幹が強く、走りにも力強さがあるため、強く地面を捉え…真っ直ぐ走ることができるこの馬にとって、珍しい右へのモタれ具合。
競走馬がよくゴール手前でモタれるシーンがあるが、主な原因として、①鞍上の体重バランスが合っていない②ムチ連打による進路修正の遅れ③馬が遊んでいる④脚の限界(疲労)など。
皐月賞のドウデュースは、④の脚の限界が原因だったのでは?と推測している。直線オール右手前で走った最後の反動が坂を越えてから一気に押し寄せてきたのだろう。
すると、鞍上の頭の中では、「最後かなりヨレてしまった」というイメージがつく。決勝戦手前だから尚更。だから、ダービーでもその点に注意しながら乗っていたと思う。
上の画像から、ドウデュースのモタれが皐月賞よりキツイこと分かる。しかも、最初は左にモタれ、最後に右へモタれる…これまでになかったことが起きてしまった。
しかし、上述した通り…"経験値"と"信頼関係"はこの18頭の中でも群を抜いているドウデュース×武豊Jコンビ。鞍上が最初に左へモタれるのを察知して、すぐに左ムチへ変更し、モタれを最小限に抑えた。ちなみに…ドウデュースは、生涯6戦目で初めて"左ムチ"を受けた。すると、機敏に反応し、次は右へモタれる。それも鞍上にとっては想定内で…すぐに右ムチへ持ち替え、進路修正へ。
この一貫性のある簡単のようで超難しいことを冷静に瞬時の判断でスムーズにできる鞍上・武豊という騎手は、本当に最高の騎手であり、改めてこの騎手への上手さを実感した。
これも全ては、これまでに起こったことを鞍上が頭に入れていたことで対処できたことでもある。だから、"日本ダービー"という日本最高峰のレースは、テン乗り騎乗馬は、勝てないのだろう。「日本ダービー=運がいい」という言葉は、本質であり…ドウデュースの日本ダービー制覇は、運要素を持ちながら…しっかり実力と各レースへの全力投球を積んできたからこその結果であり、ドウデュースが1番日本ダービーを勝つべき馬だったのだ。
Ⅶ 最後に
この勝利は、悲願のキーファーズ初のダービー制覇という最高のプレゼントができた。武豊J、陣営の努力、レース質が彼に向いた…改めてダービーを制するには、運要素も必要なのだと感じたし、ドウデュースの想像を超える能力の高さに脱帽したダービーでもあった。弥生賞で感じたドウデュースのポテンシャルを感じたからこそ、色んなことを彼から勉強ができている。私にとって「ドウデュース」という馬は、特別な馬なのだ。
そして、ダービーでは、3番手評価にした理由も…あの馬体で1番手(本命)に推せる自信はひとつもなかったから。でも、それを全て覆してくれた馬。だから、この馬…実は、今現役最強馬なのでは?とも思っているし、実際に私が分析した中では、間違いなく歴代最強クラスのダービー馬と言いたい。
最後まで読んでくださった皆さんへ、最強データをここでひとつ。
→「皐月賞で4番人気以内×4角10番手以降×上がり最速34.3秒以内」かつ「日本ダービーで4角10番手以降×上がり2位以内で1着」に該当した馬とは……
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ディープインパクト
オルフェーヴル
ドウデュース←New
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GI6勝以上の超名馬ディープインパクトとオルフェーヴルに肩を並べることができた。これだけでもドウデュースがどれだけ凄いことをこれまで成し遂げてきたのが分かるだろうか?もう私は、この馬に夢中である。
次走は、未定だが…凱旋門賞へ向かうことはある程度決まっているだろう。適性という高きハードルを超えてしまったドウデュースは、凱旋門賞適性がなくても超えられるだけの逸材であるし、それを信じている。
何度も言うが…この馬から沢山のことを学び、それを今の分析に活かすことができている。そんなドウデュースへの想いは、誰にも負けたくないし、負けない。私の競馬人生の中でもトップクラスの馬だと確信している。これからも「ドウデュース」ファンとしてこの馬と共に向き合いたい。
凱旋門賞、◉ドウデュース✨
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