【声劇台本】当て馬なんて言わせない【不問×2】

本文

A「あ、また小説?」
B「げ。今日も来た。君も変わらないねぇ」
A「今日も一人で教室の隅っこでイジイジ小説なんか読んで。相変わらずもここまでくると大したものだよねぇ。感動を覚えるよ、逆に」
B「こっちも感動を覚えてるよ。このやり取り何回目?毎度毎度懲りないねほんと」
A「せっかくの眩き青い春。二度とは戻らぬ輝かしき時間。教室の隅っこで終えることになってもいいわけ?」
B「別に。これはこれで退屈しないから」
A「小説なんかの何がいいんだか理解できないよ。文字だけでよくわかるよね、私にはさっぱり」
B「……そうだね。ひとえに想像力。作者が描き出した文字から情景や感情を感じ取る読み方をしないとただの文字列だろうさ」
A「絵付けてほしいよね絵。やっぱり漫画は偉大だよ、人類の叡智の結晶だねこれ」
B「うちの学校漫画持ち込めないじゃん」
A「ブラックジャックとかなら許されたかな?」
B「いや図書室に置いてあるけどさ?別に読みたいとは思わないかな、ブラックジャックは」
A「ふむふむ、やっぱり読むなら文字だけで追いたいタイプ?」
B「いや?別になんでも構わないんだけど」
A「あ、こだわらないタイプ?」
B「そうだね、ぶっちゃけなんでもいい。ジュブナイルでも純文学でもラノベでも、なんなら辞書でも論文でもいい」
A「いや辞書はおかしいでしょ。文字を摂取してないと死ぬわけ?」
B「そういうわけじゃないけど、でもそうしないと意味がないもの」
A「へー、おすすめとかある?私でも読めそうなのとか」
B「ない」
A「そんなバッサリ」
B「漫画じゃないとわかんない、なんて文句をつけてくる人に薦められる小説なんかありませーん」
A「いやいやいや、冷たくない?君みたいな文学オタクの役目ってさ、読書が苦手な子にも薦めやすい本を紹介してさ。それを読んだ感想なんかを語り合ってさ。それで親交を深めていくもんでしょ?」
B「興味ない」
A「がっくし。まったくー!いいのかい君はそれで!ただでさえクラスでちょっと浮いた存在なのに、そんなんじゃ寄ってくる異性もいないだろうに!」
B「誰が寄ってこようが気にならないよ」
A「そんなこと言っちゃって。知らないのかい?読書に勤しむミステリアスな雰囲気がいいよね〜とか言って一部では評判なんだよ君って!」
B「へ、そうなの?」
A「そうだとも!そんな風に君のことを気にしてる素敵な異性が話しかけてきたとして、君はそんな塩対応で温情を邪険にするつもりなのかい?」
B「温情て……心配ないよ、もし本当に誰かがそうやって話しかけてきたとして。その人の性格とか好みとか何となく考えて本薦めるくらいはするよ」
A「ほほう?そうかそうか、見損なうところだったよ危ない危ない……って、ん?じゃあなんで私には薦めてくれないわけ?」
B「別に読みたいなんて思ってないでしょ」
A「うん」
B「そら見ろ。それに、そんなことする必要もないでしょ」
A「たしかにねー。あ、じゃあ誰か声かけてきてあげようか?」
B「いらない」
A「そう言わず!どうする?1組の斎藤さん?それとも2組の小林さんか、山中さんか。それともそれとも」
B「別にいいよ。紹介なんてそんな当て馬みたいなことしなくても」
A「だって、いっつもそうしてるでしょ?気になるんだよ、恋人どころか友達も居なさそうだし」
B「随分な言い方するね。否定はできないけど」
A「ほらー。だからせめて、素敵な異性とお近付きになれるよう取り計らってあげないと、っていう私なりの優しさだよコレは」
B「心配しなくても、目当ての人はもう来てるから大丈夫だよ」
A「なんだって!?いつの間に!?」
B「……はぁ、やっぱりもうちょっと読解力上げるべきだと思うよ?」
A「何が?」
B「何を勘違いしてるか知らないけどね、僕別に文学オタクじゃないよ?」
A「え?でも毎日そうやって本読んで」
B「ここでこうやって本を構えておけば、絶対に声をかけてくれる人がいるんだよね。不思議だよね、どういうつもりか知らないけど」
A「え、へ?……うん?」
B「だから別に、次また話すために本を薦める必要なんてないんだよ。こうやって適当な本さえ持ってれば、こうして勝手に向こうから来てくれるんだから」
A「あ、あのっ。まさか、まさかなんだけどさ」
B「なに?」
A「君の、お目当ての人って……もしかして」
B「うん、君だけど。当て馬みたいなことしなくても、もう目当ての人と毎日会えてるんだよね」
A「っあ、そ……そうなんだ。へー。そう、なんだ?」
B「ねえ……明日もまた軽口叩きに来てくれる?」
A「……ばか、じゃないのかな?意味、わからないんだけど」
B「そっか。漫画しか読まないから察するとか難しいか。読解力ないもんね」
A「滅茶苦茶言うね!?言っとくけど、私だってーー」
B「だからはっきり言うね。好きだよ、付き合ってくれる?」
A「……あ、えと。その……よろしく、お願いします」

あとがき

なんか急に振ってきたので。
男女のカップルを想定して書いてますが、NLでもGLでもBLでもどう料理していただいても楽しいと思います。故の不問。
あなたの萌えをぶち込んでください。

後付

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発行元:-ボイスドラマサークル- ルイは鷹を呼ぶ
発行日:2024/03/14
脚本家:嵩音ルイ
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