1209ヒストリックブロール禁止改訂について

0.序文

みなさんこんにちは。バーチャルPWの重寝 累花です。

アルケミー:イニストラード発売楽しみだなぁ!
と心待ちにしていたところ、驚くべきニュースが入ってきました。

なんとヒストリック・ブロールで《精霊龍、ウギン》、《死者の原野》、《裏切りの工作員》の3枚が禁止になるというのです。

面子としては正直納得の3枚。
なぜこれが驚くべきニュースなのでしょうか?
その説明をする前に今のヒスブロの禁止状況を理解する必要がある。
少し長くなるぞ。

1.これまでのヒストリックブロールにおける禁止カードについて

今回の3枚を除き、ヒスブロでは16枚のカードが現時点で禁止、2枚がかつて禁止を受けたものの後に解除されています。その大半は魔術遠眼鏡を初めとする「統率者への露骨なメタカード」です。

せっかくPWを統率者に指定できるフォーマットなのに、1,2ターン目に針や遠眼鏡を置かれたらどうなるでしょうか。
まずその対処から始めなければなりません。
最悪固有色の都合で殆ど除去ができないケースもあります。
こうなるとメタカードを置いた一方だけが統率者戦を楽しみ、置かれた側はただのハイランダーデッキでの戦いを強いられます。

このため、露骨に多くの統率者を妨害できるカードは環境の経過観察を待たず禁止になりやすいです。
「ブロールという、統率者が使えるフォーマットを楽しんでほしい」というWotCの考えが見て取れます。

他の禁止理由は割とそれぞれです。
《時を解すもの、テフェリー》はやり取りを減少させるプレイパターンがスタンダード・ヒストリック同様に問題視され、《呪文追い、ルーツリー》は相棒ルールこそ改訂されましたがイゼットカラーを含む統率者だけが何の制約もなく得をできます。
《王冠泥棒、オーコ》なんかはオーバーパワー×統率者クリーチャーの簡単な無力化×自身は統率者指定可と、凄まじい合わせ技ですね。

また、重み付けが整備されてからはゴロスとウィノータが禁止解除になっています。
どちらも大変強力な統率者ですが、強者同士でやりあうなら良いという判断でしょう。

2.今回の3枚の禁止理由について

では、今回禁止された3枚はどうでしょうか。
これが今回の禁止理由になります。

どれも非常に高いメインデッキへの採用率を誇り、

・特定の重要なパーマネント(統率者)への注目
・シングルトン(ハイランダー)でのデッキ構築
・色の制限(固有色)


の要素を悪用する・押し分けるのが禁止に至った経緯だと言われています。

メインデッキでの採用というのがなかなかミソで、メイン採用+カードパワーへの問題視は《悪魔の教示者》などミスティカルアーカイブ勢が該当しますが、今回は採用率とブロールの理念に強く触れられています。

特にどういうデッキにおいて採用が多い、という記述はありません。
逆にどんなデッキであっても、遅いゲームスピードで戦うデッキであるなら採用を検討できる、もしくは採用した方が良いレベルのゲームチェンジャーであったのが問題視されたのでしょう。

では1枚ずつ見ていきながらどれに該当しているのか見ていきましょう。

《精霊龍、ウギン》


《精霊龍、ウギン》

《精霊龍、ウギン》は強力なPWであり、リセットボタンです。
無色であるため固有色による制限を受けず、8マナを出せるゲームレンジのデッキであれば、常に採用を検討できるレベルのカードです。

重コントロールやフィニッシャー満載のランプ戦術のデッキはもちろん、《祝福されしエミエル》のようにパーマネントを並べるデッキであっても採用できます。
小マイナスの起動値が柔軟に選べるため、多少自分のパーマネントを吹っ飛ばすことになっても十分なボードアドバンテージ+ウギンという超強力なPWを得られます。

と、いうわけでこいつの罪は「固有色の制限なく、遅いデッキであれば大体入ってフィニッシャーを務める罪」でした。

《死者の原野》

《死者の原野》

スタンダード禁止、パイオニア禁止、モダン禁止の三冠王の原野くんです。
それでもヒスブロを定義するカード! ヒスブロなら原野も使える!
と思っていましたが、定義しすぎて禁止されました。かなしいね。

こいつは「シングルトン悪用罪」のカードです。
原野含め7種類の土地をコントロールしている必要がありますが、1枚制限によって色々な多色土地を採用せざるを得ず、簡単に条件を満たします。
主観ですが3色デッキなら満たさない方が珍しく、2色デッキでも「普通の基本土地」と「冠雪の基本土地」が別名のためだいぶ満たせます。

一度動き始めれば瞬く間に地上をせき止め、フィニッシャーにもブロッカーにもなります。
アグロデッキは原野やウギンが動き始める前に勝てるよう組まなきゃいけないのは有名な話でした。

《裏切りの工作員》

《裏切りの工作員》

スタンダード禁止、とはいえスタンダードではウィノータとかルーカとかで踏み倒して出てきたのが罪でしたので、今回はちょっぴり事情が違います。

コントロール奪取は工作員だけに限った話ではなく、統率者対策として非常に強力です。統率領域に戻させるわけでもなく除去し、なんなら強力なパーマネントを得られます。

その中でも工作員は、工作員を除去されてもコントロールを返さない、奪うパーマネントを限定しないという特徴があります。
コントロール交換ではないコントロール奪取でなんでも奪えるのは、他には《キオーラ、海神を打ち倒す》のⅢ章ぐらいしかないです。

統率者を奪うことが強いのはもちろん、とりあえず暇なときに土地を奪うだけでもそれなりの差をつけることができます。
ヤロクやヨーリオンなどとは特に好相性ですが、相性が極端に高くないキナンやボーラス、再誕ミゼットなどでもただただ便利なので採用されることがあります。

何かコントロール奪取系から1つ禁止を出して不快度を軽減しよう、とした結果こいつが選ばれたのかなと思われます。

3.おわりに


悲喜こもごもの禁止改訂ですが、「牧歌的でオリジナリティのあるヒストリック・ブロールを目指した環境整備を行うつもりがある」という点で相当衝撃的な禁止改訂だと思います。
とりあえずシミックランプ系のデッキなら原野とウギンと工作員がなんとなく入っている、という状況へメスが入ることで、様々なデッキのオリジナリティを考える機会となったのではないでしょうか。

高Tier環境についてはゴロスが一人負け気味だと思います。
原野とズッ友でしたからね。

てっきり《魔術遠眼鏡》《ダブリエルの萎縮》のように、統率者をめぐるやり取りを歪めるカードだけ規制するのかと思っていたので驚きました。
愛用していたデッキ・プレイヤーには残念なお知らせですが、何を基準にヒストリック・ブロールを面白いフォーマットにしたいかを開示してくれたので今後の禁止改訂を見るときの参考資料にもなるでしょう。




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