育ちがいいね

子どもの頃の話をすると高い確率で「育ちがいいんだね」と言われる。
それは本は好きなだけ買い与えられてきたこととか、家族で出掛ける先が美術館や博物館であることだったり、幼児向けのアニメ映画を観に行くこともなく、バレエやオーケストラのコンサート観賞で育てられたから。

でもわたしはこれらの環境を「高尚に育てようと」与えられてきたわけではない。もちろん一部は親にとって好ましくない子どもにしないために意図的に与えられてこなかったのだけれど。
本を好きなだけ与えられてきたのは、ゲームが禁止されていたから。ポケモンが流行り、どれだけねだっても「ゲームは男の子の遊びだから」と一蹴された。一人娘だった子どもの私は、性を持ち出されると反論の余地がなく諦めざるを得なかった。一度、親がダメならサンタさんにお願いしよう!と手紙を書き、ワクワクしながら起きると枕元には綺麗にラッピングされたエンデの「はてしない物語」が置かれていた。「サンタさんも教育方針には逆らえないのか……」と思ったことは未だに忘れられない。
アニメ映画もディズニーとジブリ以外は殆ど見ることがなかった。親も漫画は好きなのでアニメ自体を禁止されることはなかったが、クレヨンしんちゃんやコナンの映画を映画館でみる経験はない。大きくなりコナンは多少観るものの、未だにクレヨンしんちゃんは一作たりとも観たことがないままだ。

殆ど遊園地などに行ったことがなく、美術館や博物館、コンサートばかりだったのは親が病弱で体力がなかったからだろう。ディズニーシーが出来たばかりの頃連れて行ってもらったが、母が体調を崩したため昼過ぎにはホテルに戻った記憶がある。子どものための遊び場というのは親の体力も奪う。だから静かに鑑賞するような場所が多くなったのだと思う。

ゲームを禁止されて育った子どもが大人になってからゲーム中毒になるような話もよく聞くが、わたしは大人になってもあまりゲームをすることはない。ゲームをするよりは本を読んだり、映画を観る方が好き。オーケストラを聴きに行くことはなくなってしまったけど、美術館や博物館は相変わらず好きだ。

親にとって好ましく無いものはある程度排除されて育ったが、家の本棚にはFBI心理捜査官があり、家族旅行で人魚や河童のミイラを見にお寺に行くというどこか破綻した家で育った。そりゃあこの仕上がりになるというものよ。


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