【超過死亡の分析】札幌市、旭川市の死亡数の推移(〜2020年6月)

北海道の2都市、札幌市と旭川市の2020年6月中までの死亡数が発表されたので、超過死亡を調べCOVID-19の感染拡大について分析する。

データは札幌市、旭川市によって公表された統計データを用いている。各都市、各月中の1日あたり、人口10万人あたりの死亡数(死亡率)のグラフと表は次のようになる。注目すべきは、赤い実線の2020年データと黒の点線の2013年-2019年の平均のグラフである。

札幌市

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旭川市

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まず、これまでの分析では各月全体の死亡数の推移を見てきたが、月による日数の違いの影響を排除するために、1日あたりの平均をとった。
さらに各月1日の人口で割り10万にあたりの死亡率を計算した。これは人口の変化による影響を排除するためである[1]。また、これにより都市間の比較も可能になる[2]。

さて2020年の死亡率(赤の実線)では、札幌市も旭川市もともに3月、4月で平年(黒の点線)を上回っている。その後5月には平年並みになり、6月には再び死亡率が増加している。この増加分は2013年−2019年の各月ごとに計算した標準偏差を上回っている。さらに人口規模も大きい都市を扱っているため統計誤差も小さく、この超過死亡は今年に特有のものと考えられる。
今後、感染症研究所などにより死亡原因の調査が進みこの超過死亡の発生の原因が明らかになると思うが、現状ではCOVID-19による影響と考えるのが妥当であろう。
また、5月に死亡数が抑えられているのは外出自粛要請の結果であると考えられる。この傾向は多くの大都市に見られている。

6月には感染者の報告が減っていたにも関わらず、すでに死亡数の報告が増加していることは不気味な兆候である。
これはすでに6月には感染が広がり始めていて、それが検知されなかった可能性が考えられる。ごく最近のように若年層の場合症状が出た場合、比較的よく検知される可能性が高い。そう考えると高齢者の間ではすでに6月中には感染が広がっていた可能性ある。死亡数の増加は10−20%程度であるから、体感ではなかなか気が付きにくいかもしれない。
現状PCR検査は治療の目的での利用が最優先であるが、検査数を充実させて死亡原因の調査に利用することで感染の広がりを迅速に検知できる可能性があると考えられる。

7月になりPCR検査によって検知された感染者の増加により感染の拡大に対する警戒感が高まっているが、超過死亡を見る限り6月中にはすでに3月、4月並に感染が拡大が広がっていた可能性が考られる。
これから更に調査を進めていくが、同様の傾向はすでに6月中の死亡数が発表になっているいくつかの都市にも見られている。

すぐに対策を行わなければ、思っているよりも早期に急激に重症患者が増え、再び医療体制を圧迫すると可能性が高い。まして政府は緊急事態宣言の発出を避けたいのであれば、それなりに強い対策を一刻も早く行う必要があると考えられる。


[1] 札幌市は推計人口を用いて、旭川市は住民基本台帳の人口を用いている。これは各市で発表されている人口データを利用しているためである。また、旭川市は2013年は前月末日の人口を用いている。
[2] 札幌市と旭川市では死亡数のことなる




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