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#41 新章のはじまり

1月5日19時過ぎ。
JAPAN RUGBY LEAGUE ONE開幕戦の中止を告げるニュースがタイムラインに落とされました。

事前情報に対するマルガオ(筆者)の不安は色濃く、望まぬ予測を敢えてして心構えを調えていたはずでしたが、そのニュースを目にした瞬間から視界も脳内も真っ白になり、心は激しく揺れました。
この動揺を我が手に負えず、何かにすがるように…身体の水分の最後の一滴を絞り出すように…枯れ果てた脳から言葉を紡いでいたとき、そのツイートは流れてきました。

このメッセージの放つパワー!!
わたしを混乱から解き放ち、ホワイトアウトしていた視野を再確保させ、「自分ができること」を考えることにフォーカスさせる、太陽のような強い光!!
まるで魔法のように一瞬で、わたしの心は変化しました。

この、呪文のような効力のあるメッセージを、速報レベルのタイミングでオレンジアーミーへと届けてくださった感謝を込めて。
本日のnoteはマルガオから杉本博昭選手へのファンレターです。

#DOUKI

杉本博昭選手がクボタスピアーズ(現・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)に入団したのは2011年度。

過去5年間の入団選手は、
2010年度 5名(うち海外出身選手2名)
2009年度 4名(うち海外出身選手2名)
2008年度 7名(うち海外出身選手2名)
 (日本人選手はこちら
2007年度 3名
2006年度 7名
(マルガオ調べのため、追加入団など見落としているかもしれません)

それに対して、杉本選手の同期入団は、
・学年ともに同期の日本人選手 7名
 (上記リンク参照)
海外出身選手        3名 +追加 1名
の計11名。
前年に比べて非常に多く、新しい風が一気にチームに吹き込んだことが想像されます。

ひるがえって、2022年にリーグワンに挑むにあたってのクボタスピアーズ船橋・東京ベイの強みの一つに「選手の入れ替えが少なかったこと」を推す方も少なくありません。
その観点から推測すると、杉本選手の入団した時期は、大幅なメンバー変更によってチームの醸成も容易でなかったのではないかと邪推します。

今でもSNSなどで絆の強さが伝わってくる2011年度生。
きっと、楽しいことにも、険しいことにも、共に本気で向き合った、素晴らしい仲間なのだと思います。

ROAD to 50 caps

2010年には、1勝1分、開幕からの3連敗を含む11敗を喫して13位に沈み、トップリーグから自動降格したクボタスピアーズへの入団を決めた11名の選手が、当時どのようにチームを見ていたのかを窺い知ることのできそうなエピソードが今野達朗コーチによる #たつログ で紹介されていました。
杉本選手ご自身による引用RTを引用いたします。

杉本選手の入団1年目は、トップイースト2位、トップチャレンジ3位となるも入替戦で敗退してトップリーグ昇格を逃したそうですが、翌シーズンはトップイーストを全勝優勝、トップチャレンジを2勝1敗の2位として自動昇格枠を勝ち獲り、トップリーグに返り咲いたそうです。
下位リーグへの転落でチームに漂いかねない停滞ムードを、11人のルーキーが許さなかったのかもしれないなと空想します。

杉本博昭選手の社会人選手としての記念すべきデビュー戦は、2011/11/26の第10節の東京ガス戦。
見事に勝利をおさめています。

その後は、9位、13位、12位、12位、11位(レッドカンファレンス6位)、7位 (ホワイトカンファレンス3位)と少しずつ順位を上げ、昨年はチーム初となる開幕5連勝を経てレッドカンファレンスを3位で通過、トップリーグ2021トーナメント戦の準々決勝ではコベルコ神戸スティーラーズを破り、最後のトップリーグを3位で終えました。

杉本選手ご自身のヒストリーとしては、2017年にバイスキャプテンに就任。
前年度に就任したフラン・ルディケHC、立川理道主将とともに、今日まで長期政権を安定させています。

さらに、トップリーグラストイヤーにトップリーグ50試合出場を達成。
第6節サントリーサンゴリアス戦の試合後には、タイムラインを祝福メッセージが飛び交いました。

ポジションチェンジ

特筆すべきは、チーム公式さんの50capを祝うツイートでも言及されていた、No.8からHOへのポジションチェンジ。
ご自身でも、今野達朗さんによる #コンノート の負傷離脱に関する記事を引用して、ポジション転向したエピソードに触れてらっしゃいます。

3年目の負傷を契機に転向を決意されたとのことですが、トップレベルに加わってからのポジションチェンジは並大抵の覚悟ではなかったはずです。
しかも一列目への転向。
三菱重工相模原ダイナボアーズで活躍した長兄・剛章よしふみさんがHOだったことが決断を後押ししたと仮定しても、想像に及ばぬ強い思いがあったものとお察しいたします。

ニワカラグビーファンのマルガオは、HOとは極めて専門性が高いポジションだと感じています。
例えばスクラムにしてもラインアウトにしても、他のポジションとは全く異なる動きをしているように見えるので、HOに特異的なスキルを求められることは間違いないでしょう。根拠はありませんが確信しています。だってかっこいいんだもの。

そのスキルを、プレーを、トップレベルのクオリティで自分の武器にしていく行程は、まさに血のにじむ努力だったのではないでしょうか?
もしかしたら、光を見失いかける心境になったこともあるのかなと容易に浮かんでしまいます。

杉本選手自ら、その当時を振り返ってらっしゃったのは、50capを達成した試合後。
トップリーグ2015-2016の第1節・東芝ブレイブルーパス戦の1capめから、1,968日、約5年5か月をかけての記録です。

想像だに目の眩みそうな経緯を越えて、今ではメンバー表に安定して名前を連ねている杉本選手を見ていると、目の前のチャレンジに全力で向き合うための底知れぬパワーが湧いてくるのはマルガオだけではないはずです。
一人じゃ持てない勇気をくださって、ありがとうございます!!

革命的資産運用

マルガオの生きる世界では「知識や経験は資産」と考えられており、教わる側になるときには最大限のリスペクトを示して教授をうことを心がけています。
そういう常識の中で生きてきた身として衝撃的だったのは、杉本選手の『資産』の運用方法です。

前段の通り、想像を絶する努力を重ねて獲得したであろうスキルを、杉本選手は惜しみなく動画公開なさっているのです。

初めて見たときには、(不適切な表現かもしれませんが)理解不能に陥りました。
ポジション争いをするチームメイトのみならず、場合によっては対戦相手に塩を送る行為なのではないのか、と眩暈めまいすら覚えました。

そのあまりの衝撃をどうにか消化しようと、杉本選手が繰り返し動画をアップなさるたびに、その意義を理解しようと努めてきたマルガオ。
あるとき、「もしかしたら」と一つの結論に至りました。

ヒントになったのは、わたしの驚きを引用RTしてくださったツイート。

何度読み返しても泣けるのですが。
同じ境遇の選手に対して温かすぎませんか?

この温もりに触れたとき、「マルガオが目の当たりにしたのは、究極の『利他主義』なのではないか」と思うに至ったのです。
それは容易に到達できない境地でしょう。
この懐の大きさこそが、杉本選手を杉本選手たらしめる才能であり魅力の一つであるのだ、と感動を深めました。

あくまでマルガオの憶測ですが、労苦を重ねる中で杉本選手が獲得したのは、その卓越したスキルだけではないでしょう。
例えば、周囲と比較せずに自分自身と真摯に向き合うメンタルコントロールも、獲得したものの一つだったのではないかと推察いたします。

一般に当てはめても、何かを高いレベルで達成・獲得しようとするとき、最もしんどい・・・・ことは、誰かに叱責されることではなく、自らの問題点をつまびらかにして、その課題に膝を突き合わせて徹底的に向き合うことだと思います。
なぜなら、自分にベクトルを向けるときには遠慮をしないという方も少なくないからです。

ひょっとしたら、杉本選手もご自身に強い気持ちをぶつけたくなることがあったのではないでしょうか。
大きな葛藤の最中さなかに大切にしたいものを見失いかけたこともあったかもしれません。

その中で、真のライバル、対峙すべき相手は、他でもない自分自身だというような悟りとも思える境地に達したのだとしたら。
他者の利益につながる情報の提供は、HOのレベルを底上げさせ、杉本選手ご自身をさらなる高みへと引き上げるための起爆剤へと姿を変えていくのかもしれません。

この『先行投資』の考え方は、マルガオの『資産』の運用の捉え方に一大革命をもたらしました。

なお、杉本博昭選手のnoteも発見しましたが、記事はアップされておらず。
「文章化にお困りであれば、お力になりたいです!」とアピールできるくらいの文章力がマルガオにあれば…と夢見てしまいます笑

この人がいるから強くなれる

強いチーム、強さを身に着けてきたチームには、「この人がいるから強くなれる」というキーマンのような存在が不可欠だと思います。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイにも何人かいるキーマンの一人が杉本博昭選手だというマルガオの主張に、反論する方はいないでしょう。

そう感じるエピソードは、皆さまの中にも星の数ほどあるでしょうが、マルガオが最も印象的だったのは「一個飛ばしのグリーンのビブス」。
ご存知、岩爪さんの名コラムに登場したエピソードです。

このエピソードは視覚的にも象徴的なものというだけで、特別なことではないのだと思います。
その芯を貫いているものは、練習中だけではなく、いつもどんなときも、チームの至るところで目にすることができるはずです。
この、バイスキャプテンによる細やかな配慮は、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのあらゆる場面で体験できるものでしょう。

そして、きっと、その気持ちを汲み取って力に変えることのできる、感度の高い選手たちが揃っているのが、クボタスピアーズ船橋・東京ベイなのだと思います。

杉本選手が仲間と築いた相互の信頼関係は、リーグワンでも観る者の心を揺さぶるプレーとなり、試合の結果を動かすでしょう。

New Chapter Has Begun

JAPAN RUGBY LEAGUE ONEへの期待の波は、1月5日のメンバー発表を起点に、1月7日まで急上昇していくはずでした。
そして、クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、1月7日に全国の、全世界のラグビーファンの脚光を浴びて、主役となるはずでした。

昨季までのレギュラーメンバー数名を様々な事情で欠くなか、輝かしい舞台への切符を手にした選手が開幕戦に懸ける想いは如何ばかりだったでしょうか。

メンバーが公表されることはありませんでしたが、昨季ポジション争いをした相手がチームに合流できていない状況の杉本選手も、第2節と同様に2番を背負うはずだったと推測します。
その意気込みは、メンバー表からも飛び出してくるほどの熱気を帯びていたことでしょう。

開幕戦に決定してからの約4か月、杉本選手の心のひだがどのように変化していったのか。
1月5日にどんな気持ちになったのか。
想像を試みただけでも鼻先がツンとしてしまいます。

その難しい状況の中で冒頭でご紹介したTweetを間髪入れずに投稿した杉本選手の胆力を思うと、マルガオの稚拙な言葉や拙い想像力は意味を無くします。

杉本選手のファンを想う気持ちに突き動かされるように始めた #エアリーグワン開幕戦 企画は、呼びかけたマルガオ自身が励まされるような賛同を得ました。
ご協力くださった方の多くは、マルガオと同じように杉本選手に救われ、感謝の気持ちを伝えたかったのだと思います。


杉本博昭選手の新たな章は既に始まっているのでしょう。
本日は、その順調な滑り出しを証明する様子を目撃できるはずです。


第2節にマルガオが最も応援したい選手へ。
55cap目は、準備してきたものを全て出し切れる、ラグビーへの喜びにあふれた試合になりますように。

大活躍して、昨季の不動の2番の座を脅かしてくださいね。
それが、杉本博昭選手の、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの、そして、オレンジアーミーにとっても、新しい、輝かしい章のはじまりとなるはずです。

さぁ!!
1週間蓄えたエネルギーを受け取ってもらう日がやってきました!!
ヒーローの勇姿を見逃すな!!

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