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第46回 コードネームに触れてみよう

📚[🎶コード理論]コード理論全般、メジャートライアドコード、マイナートライアドコード、ディミニッシュドトライアドコード、オーグメンテッドトライアドコード
📚[🎼和声法]変位音(下方変位、上方変位)

 よく楽譜の上に、こんな感じの英数文字が書かれているのを見たことはないかな。

譜例_46_01

 これは「コードネーム」と呼ばれるもので、20世紀になって生み出された、和音をあらわす記号のひとつなんだ。現代の和声記号とも言い換えられるかな。
 今回は、この「コードネーム」の基本について、お話するよ。

 和声法の考え方はバロック時代の音楽家、ジャン=フィリップ・ラモーさんがまとめたものとされているけれども、コードネームのほうは誰が確立したのかは諸説あってよくわかっていない。
 和音をあらわす記号の歴史は古くて、何を「和音」と呼ぶかにもよるけれども、日本にも平安時代には和音をあらわす記譜法があったとされているから、考え方自体は決して新しいものではないのかな。それでも、標準化されて世界の誰もが使うほど広まったのは、やっぱりコードネームを置いてほかにはないんだよね。
 コードネームは、略して「コード」とも言うよ。ちなみに「コードネーム」という名前は日本での呼び方で、英語では「コードシンボル」とか「コードレター」という呼び方をするんだ。

 コードネームにもとづく音楽理論のことを「コード理論(コードりろん)」と言う。
 和声法と大きく違うのは、コードネームは和音の機能をことさらに考えることがないということ。例えば、和声法では長3度、短3度、短3度を重ねた、いわゆる属七の和音はドミナントの機能としてとらえることになる。調性が何であってもⅤとして考えるから、仮にC音、E音、G音、B♭音というような和音があったら、これはヘ長調かヘ短調のⅤ₇として読まなくちゃいけなかった。もしハ長調でこの和音がでてきたら、それはⅳ度調のⅤ₇だったんだ。
 これに対して、コードネームでは調性は何であっても属七の和音は「ドミナントセブンスコード」という和音でしかないという考え方になる。これがどういう意味を持つのかというと、例えば属七の和音が出てきたからといって、必ずしも何かの調のⅤとして使われる必要はなく、あくまでも和音の構成音や響きが属七の和音だというだけになるんだ。

質問_2020052103580000

 和声法は和声法として、作曲法や音楽理論のひとつではあるんだけどね。

 じつは、この音楽教室では、コードネームを35回目あたりで取り上げようと考えていたんだけど、さっきも説明したように、コードネームには和声機能という考え方が少なくて、調性に関係なく使えちゃう。これはつまり、C音、E音、G音の和音も、D音、F♯音、A音の和音も、同じものだということ。
 これを理解するためには、むしろ逆に、まず調性を理解していないとむずかしいんだ。C音が根音の長三和音と、D音が根音の長三和音、それぞれをすぐにイメージできるようになるには、ハ長調とニ長調のⅠがイメージできるようでないとむずかしい。

 それにコード理論も、和声法とは切っても切れない部分がたくさんあるんだ。第37回で紹介したドミナントモーションなんかはコード理論でもひんぱんに出てくる考え方だから、和声法から紹介していったほうがいいと、僕は思ったんだ。

 コードネームは、さっきも紹介したように、和音の構成音しかあらわしていない。つまり、コードネームを読んで音を鳴らすだけならば、トニックとかドミナントといった理論は知らなくてもいいし、楽器によっては転回形を弾くこともできないから考えなくてもいい。この単純明快なところが、世界的に広まった理由になっているんだろうね。
 でも、これって逆に言えば、コードネームを使いこなすには、やっぱりもっといろんな音楽理論を知らなくちゃならないということにもなるんだけどね…。

 さて、そんなわけで、今回は「トライアドコード」と呼ばれる基本のコードを4種類紹介するよ。

譜例_46_03

 「トライアドコード」とは「三和音」のこと。「トライ」は「3つの」という意味だよ。三角形をした楽器のことを「トライアングル」なんて言ったりするよね。
 左から順に、「メジャートライアドコード」「マイナートライアドコード」「ディミニッシュドトライアドコード」「オーグメンテッドトライアドコード」。それぞれ「トライアド」を省略して「メジャーコード」「マイナーコード」のように呼ぶほうが一般的かな。

 これらの三和音は和声法でも勉強したように、「メジャーコード」は「長三和音」、「マイナーコード」は「短三和音」、「ディミニッシュドコード」は「減三和音」、「オーグメンテッドコード」は「増三和音」のこと。
 「ディミニッシュド」「オーグメンテッド」の「…ド」は「…した」「…している」という過去形や過去分詞形をあらわす英語の語尾で、日本ではこれも省略して「ディミニッシュコード」「オーグメントコード」と言うほうが多いかもしれないね。「オーグメント」は「オーギュメント」と言う人もいるよ。

 譜例で紹介しているように、コードネームではそれぞれ「C」「Cm」「Cdim」「Caug」と書く。
 表記の仕方が「dim」や「aug」だから、「ディミニッシュ」や「オーグメント」でも長いと感じる人はさらに縮めて「ディム」「オーグ」と読む人もいるね。

 「C」というのは根音のこと。
 だから根音がD音の長三和音ならば「D」、短三和音ならば「Dm」になるんだ。
 ♯や♭のついた音が根音のときは「B♭m」「G♯aug」のようになるよ。

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 それから、コードネームにはいくつかの書き方があるんだけど、「dim」や「aug」は「m-5」「+5」と書くこともある。

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 次回に、あらためて説明するけれども、「dim」は「m-5」と書いたほうが望ましいと言えるんだ。
 この場合の「-5」とは、つまり第5音が半音下がっているよってこと。「+5」は半音上がっているということだね。
 和声法ではこういったものを「下方変位(かほうへんい)」「上方変位(じょうほうへんい)」なんて呼んだりもして、この言葉はコード理論でも出てくるから、覚えておくといいかもしれないね。

 というわけで今回はここまで。
 次回はコードネームの四和音について紹介していくよ。

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