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第32回 長三和音は和声への入口

📚[📖楽典]和音、主音、属音、下属音
📚[🎼和声法]二和音、長三和音、和声記号、TDS、カデンツ、根音
📚[🎶コード理論]メジャートライアドコード
📚[🧩様式論]調性音楽

 音の動きを「旋律」と呼ぶということは勉強したけれども、一方で音には「重ねる」という鳴らし方もあるよね。
 音の重ねたものを「和音(わおん)」と言うんだ。ふつう、和音と言ったときにはユニゾンやオクターブユニゾンは除くことが多いかな。

 2つの音を重ねた和音を「二和音(にわおん)」と言うよ。この言葉を使う機会は少ないと思うけど、例えばこんな和音があったら…、

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 これは長3度音程だというのはわかるよね。二和音は、そのまま音程として解釈することができるんだ。

 2つの音の和音が「二和音」ならば、3つの音ならば「三和音(さんわおん)」。でも「二和音」とはちょっと違っていて、「三和音」には2つの意味があるんだ。
 ひとつは今も説明したように、3つの音を重ねた和音全般のこと。ユニゾンやオクターブユニゾンを除けば、どんな音を重ねても「三和音」と呼べるんだ。

 そしてもうひとつは、3度音程の音を重ねて作った、3つの音による和音のこと。ふつう、「三和音」と言えば、こっちのことを言うんだ。英語で「トライアド」と呼ぶこともあるよ。

 一番簡単な三和音はドとミとソを重ねた、こういう和音。

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 これはドとミが長3度、ミとソが短3度になっている和音だね。
 どんな音が使われているのか、その音全体のことを「構成音(こうせいおん)」と言うんだけど、つまり、この和音の場合ならば、構成音はドとミとソ、C音とE音とG音、またはⅰ度とⅲ度とⅴ度ということ。

 重ねた3度音程の、一番低い音のことを「根音(こんおん)」と呼ぶよ。これはすごく大事な言葉だからしっかり覚えておいてね。
 この場合の根音は「ド」、C音だね。

 構成音を順に並べて根音から3度の音を「第3音(だい3おん)」、5度の音を「第5音(だい5おん)」と言う。この和音の場合、第3音は「ミ」、E音で、第5音は「ソ」、G音になるね。

 そして、この和音のように根音と第3音が長3度、根音と第5音が完全5度になっているものを「長三和音(ちょうさんわおん)」と言うんだ。

 覚える言葉がたくさん出てきたけど、これから何度も出てくる言葉だから、少しずつ覚えていくくらいでもいいので安心してね。

 さて、長調の音階の音をそれぞれ三和音にすると、こんな感じになるよね。

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 「ⅠⅡⅢⅣⅤⅥⅦ」というのは「和声記号(わせいきごう)」と呼ばれるものなんだけど、これはまだ覚えなくてもいいよ。今は和音の番号くらいに思っていてね。

 最初のⅠと8番目のⅠはオクターブが違うだけで構成音はいっしょだから同じものと考えるとして、この中で長三和音になっているのはⅠとⅣとⅤの3つだというのは、わかるかな?

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 和音の勉強をする上で、一番重要になるのは、この3つの長三和音なんだ。なぜって、簡単な曲ならば、この3つの和音だけで伴奏が作れてしまう、もっとも基本的な和音だからなんだよ。

 例えば『きらきら星』のメロディーに、ⅠとⅣとⅤの和音だけで伴奏を付けるとこんな感じになるんだけど…、

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 伴奏としては単純すぎちゃうかもしれないけど、でも、ちゃんと伴奏になってるよね。

 音階のⅰ度の音のことを「主音」、ⅴ度の音のことを「属音」と呼ぶことを第17回で紹介したのを覚えているかな。これに加えてⅳ度の音のことを「下属音(かぞくおん)」とも呼ぶんだけど、そしてそれぞれの音を根音に持つ三和音を「主和音(しゅわおん)」、「属和音(ぞくわおん)」、「下属和音(かぞくわおん)」と言うんだ。

 これはそれぞれ「トニック」、「ドミナント」、「サブドミナント」を訳した言葉で、旋律や和音の性質を考えたり説明したりする上では、とっても重要なものなんだ。
 「トニック」、つまり主音と主和音は、その調や旋法にとって根幹となる音や和音で、曲が終わった感じや安心感、安定感を持つという特徴があるんだ。これはさっきの『きらきら星』の旋律が「ド」、ⅰ度で終わっていることでもわかるし、ⅣやⅤの和音をあててみると、とたんに中途半端な感じになっちゃうことからもわかると思うよ。

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 「ドミナント」は属音や属和音のことで、これは次の音がトニックになることで、ひじょうに安定感を得られる特徴を持つよ。逆に言うとドミナントはすごく不安定な音ということにもなるね。
 「サブドミナント」はドミナントほどではないけど、トニックにくらべると安定感は薄い音で、つまりドミナントにもトニックにも進めるという特徴を持っているんだ。
 調を感じられることを「調性(ちょうせい)」、その調性のある音楽のことを「調性音楽(ちょうせいおんがく)」と言うんだけど、調性音楽は基本的に、このトニック、ドミナント、サブドミナントの3つの要素が連続することでできていると言えて、この連続が一巡することを「カデンツ」と呼んだりするよ。つまり、音楽っていうのはカデンツがいくつも連なったものと言い換えることもできるね。

 今回は新しく出てきた言葉が多くて大変だけど、これから何度も出てくるから少しずつ覚えていくことにしよう。特に覚えておいたほうがいいのは「トニック」、「ドミナント」、「サブドミナント」かな。
 次回は「トニック」とは実際にどんなものなのか、その特徴にせまってみようと思うよ。

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