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第45回 減三和音と減七の和音

📚[🎼和声法]減三和音、減七の和音
📚[🎶コード理論]ディミニッシュドトライアドコード、ディミニッシュドセブンスコード
📚[🧩様式論]ディミニッシュスケール

 第36回の頃からときどき出てくる「減三和音(げんさんわおん)」。
 これには、四和音になった「減七の和音(げんしちのわおん)」と呼ばれる仲間があるんだけど、今回はこの2つの和音を勉強していこう。

 C音を根音としたとき、「減三和音」「減七の和音」はそれぞれ、こんな構成音になっているよ。

譜例_45_01

 三和音の場合は「減三和音」なのに、四和音はどうして「減七の和音」と呼ぶのか、という質問が出てきそうだけど、「減四和音」とはあまり言わないんだ。
 「何何和音」と言ったとき、これは和音の日本語名であると同時に、和声的な機能をあらわす言葉にもなっていて、そのためか「長四和音」とか「短四和音」という言葉もあまり使われない。「長四和音」は和声の機能としては「長三和音」と同じ、「短四和音」も「短三和音」と同じで、それぞれ第7音が付いただけと考える。
 「属七の和音」と「減七の和音」は四和音の中でも特徴的な性格を持っているので、特に「属七の」「減七の」という言い方をするんだ。

 さて、「減三和音」と「減七の和音」を合わせて「減和音(げんわおん)」と呼ぶのだけど、この和音にはいくつかの特徴があって、まず、さっきの図を見てもわかるように、それぞれの音程差が短3度になっている。そして根音と第5音は減5度。「減七の和音」は第7音も減7度。
 これがどういう意味を持つのかと言うと、転回形を作っても減音程であることが変わらないということなんだ。

譜例_45_02

 G♭音とF♯音、Bダブルフラット音とA音は、それぞれ異名同音だけど、特に減和音に限っては、記譜上ではどちらで書いてもいいことになっている。読みやすいほうで書くのがいいよね。
 どうしてこんなことになっているのかと言うと、減和音は「ディミニッシュスケール」という、特殊な音階や旋法の上にあるからなんだ。

譜例_45_03

 一般的な音階は教会旋法も含めて7音音階になっているけれども、ディミニッシュスケールは8音音階になっている。このため、どうしても異名同音が生まれてしまうんだ。

 そして減七の和音には、その構成音上、3種類しか無いという特徴もあるよ。

譜例_45_04

 例えばC音を根音とした減七の和音は、第1転回形にするとE♭音を根音にした減七の和音になってしまう。第2転回形はE♭音=F♯音を、第3転回形はBダブルフラット音=A音を根音とした減七の和音。

 ここまで読んで、勘のいい人は気が付いたかもしれないけど、減三和音は減七の和音の根音省略や第5音省略のように考えることもできるんだ。ということは、減三和音と減七の和音は機能的にほぼ同じと見ることもできるということだよね。
 もちろんこれはちょっと大げさな言い方で、減三和音にどんな第7音を付けるかで実際には機能が違ってきちゃうんだけどね。

 それから、減和音はもともと倍音には無い短3度音程を重ねて減音程を作ったもので、特に減七の和音は減5度と減7度を重ねたものでもあるから、和音としてはひじょうに不安定な響きを持つんだ。
 もともと減三和音は属七の和音の根音省略と同じ構成音だから、ドミナントの性質がある。つまり、減和音は属和音の役割を担うことができるということ。

譜例_45_05

 おもしろいのは、属七の和音の根音省略からできる減三和音に第7音を付けると、構成音としては根音がⅴ度ではなくⅴ♯になるところなんだけど…、

譜例_45_06

 これがどういう意味を持つかというと、ふつうの属和音とは違って、どこにでも解決できてしまうということになるんだ。

 属七の和音は第3音ⅶ度が主音への、第7音ⅳ度がⅲ度への導音としての役割を持つことで強いドミナント性があった。これは属七の和音の第3音と第7音の音程が減5度であることから来る不安定感によって起きていたものなんだけど、減七の和音はほかの構成音でも減5度が作れてしまう。
 このため、本当のことを言うと主音やⅲ度に向かおうとする力がぼやけてしまって、属七の和音に比べればドミナント性は弱くなっている。でもそのぶん、どこに行っても解決を感じられる響きになっている。この結果、どの調にも転調できるという機能を持っているんだよ。

 ちなみに、さっき「ディミニッシュスケール」という音階を紹介したけれども、もしこの音階を旋法として使うならば、減和音は主和音になってしまう。
 使う場面としては限られているけれども、ドミナント性を持つ不安定な和音でありながら、トニック性を持つこともあるというのが減和音のふしぎなところなんだ。

譜例_45_07

 上の譜例は第29.7回で少し触れた、特殊な調号で記譜しているよ。E音とG音にだけ♭が付いている。
 それと、これは和音というよりも旋法のお話になるけれども、この譜例を弾いたり聴いてみたりするとわかるように、ディミニッシュスケールはこんな感じの、不気味さとか恐怖感といった印象の曲に合いそうな音階なんだ。ディミニッシュスケールで遊んでみるのもおもしろいかもしれないね。

 というわけで、今回は減和音とディミニッシュスケールを学んだよ。
 次回からは現代の和声法、「コードネーム」を始めてみよう。

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