ピアノの鍵盤は見たことがある_2019123017320000

第28回 調号をおぼえよう

📚[📖楽典]調号、異名同音調
📚[🖋記譜法]五線譜(調号)

 いきなりだけど、こんなふうに、左端の音部記号の次に♯や♭がまとめて書かれていたりする楽譜を見たことはないかな。

譜例_28_01

 音部記号の次にまとめて書かれる♯や♭のことを「調号(ちょうごう)」と言うんだけど、これまで、僕の音楽教室には、こういったものは出てこなかったよね。
 僕の音楽教室では、今までは、音階には♯や♭の付いた半音が含まれない「ハ長調(ハちょうちょう)」や「イ短調(イたんちょう)」といったものを使ってきたんだけど、つまり♯も♭も付かないから調号が付かなかったんだ。

 この「なんとか調」という言葉は、すぐに覚えるのは難しいかもしれないから、今はまだ頭のすみっこに覚えておくくらいでもいいんだけど、でも、調号の読み方や書き方は知っておかないと、いろいろな楽譜を読んだり書いたりすることもできなくなっちゃう。
 そこで、今回はこの調号について、簡単に説明していくことにするね。

 まず、この「なんとか調」というのをまとめて「調(ちょう)」と言うんだ。どの「調」であるかをあらわす記号だから「調号」、そのまんまだね。
 第3回で、音階にはそれぞれ12種類あるってことを勉強したのを覚えているかな。つまり調には12種類あるってことなんだけど、もちろん、そのうちの1つが調号の付かない「ハ長調」や「イ短調」。そうすると、それ以外の11種類があるってことになるよね。

 ところで、最初に紹介した楽譜だけど、♯が6つも付いた調号であることに注目してほしいんだけど、じつはあの楽譜は、よく知られている『ねこふんじゃった』の曲なんだ。

 それはそれとして、第3回でも勉強したように、半音ずつずらした音階があるってことは、♯や♭も1つずつ増えていくってことだし、同じだけ種類があるとしたら♭も6つ付く調号があるかもって思うよね。♯も♭も6つ、そして調号のない「ハ長調」や「イ短調」も含めて、全部で13種類…、あれ…? 1種類、増えちゃった?

 そのことはちょっと置いといて、最初に紹介した『ねこふんじゃった』の楽譜は「嬰へ長調(えいヘちょうちょう)」という調で書かれているんだ。
 これは次のような音階になるよ。

ピアノの鍵盤_28_02

 ひさしぶりの「ピアノの鍵盤」の図だね。そして、第4回で勉強した「音名」がいよいよ出てきたよ。これからはこの「音名」がどんどん出てくるから、早く慣れるようにしてね。

 「①」の音、つまり「ド」にあたる音は「F♯」だ。これは「G♭」の異名同音だというのはわかるよね。
 ということは、F♯じゃなくてG♭として書く記譜法もあるってことなんだ。

 つまり、こういうことだね。

譜例_28_03

 ♭が6つの調号で、これは「変ト長調(へんトちょうちょう)」と呼ばれる調だよ。

 ここからわかることは、じつは♯が6つの「嬰へ長調」と、♭が6つの「変ト長調」は、同じ調だということ。これを「異名同音調(いめいどうおんちょう)」と言うんだ。♯が6つの調と♭が6つの調が異名同音調なんだから、調が1種類減って、ちゃんと12種類になったね。

 でも本当は、調号といった場合、♯や♭は最大で7つまで付くんだ。つまり♯が7つの調は♭が5つの調と、♯が5つの調は♭が7つの調と、異名同音調。ふつうは調号の少ないほうで書くのが一般的だよ。

 なんだか、すごく難しいことを勉強しているみたいだけど、じつはそんなに難しいことじゃなくって、じつは調号には法則性があるんだ。
 まず、調号の増え方だけど、こんなふうになっているよ。

譜例_28_04

 ぱっと見ただけだとわかりづらいんだけど、たとえば♯系の調号の増え方。どこかで見たような気がしないかな…?

五度圏_11_06

 第4回で「固定ド」や「移動ド」について勉強したけど、「固定ド」で読んだとき、♯の増え方は「ファ」→「ド」→「ソ」→「レ」→「ラ」→「ミ」→「シ」で、この音楽教室で何度も出てきているこの表と同じになっているんだ。

 そして、♭系の調号はその逆で「シ」→「ミ」→「ラ」→「レ」→「ソ」→「ド」→「ファ」。
 つまりそれぞれは5度、4度の関係になっているんだよ。

 こんな調号の増え方を、僕の知り合いの人が、覚え歌にしてくれたよ。

譜例_28_06

パーティー呼ばれて フラっと来たけど
とっくに時間は 終わってて
締められ外は シミラレソドファ

はとはとぽっぽ シャープなくちばし
豆が欲しいか そらやるぞ
鳩それらめし ファドソレラミシ

譜例_28_07

 息をつげるところもないし、音が上下に動くのが激しくて、実際に歌うのは難し過ぎるんだけど、語呂合わせで覚えられるといいかな。

 そして、こんなふうに増えていった調号の、どこが「ド」にあたる音になるのかだけど、じつはこれも簡単な法則があって、♯系の場合、調号で一番右側の♯の位置が「シ」にあたる音になるんだ。
 たとえば♯が4つの「ホ長調(ほちょうちょう)」の場合は、ト音譜表ならば第4線に♯が付いている。ということはD♯が「シ」にあたる音。つまり、Eが「ド」にあたる音ってことだね。

譜例_28_08

 ♭系の場合は、調号で一番右側の♭の位置が「ファ」にあたる音になるよ。
 たとえば♭が1つの「ヘ長調(ヘちょうちょう)」は、ト音譜表ならば第3線に♭が付いている。だからB♭が「ファ」にあたる音。つまり、Fが「ド」にあたる音になるということ。

譜例_28_09

 これも覚え方があって、「シャープのシ」「フラットのファ」と覚えられるよ。
 シャープやフラットはそれぞれ英語で「とがった」「たいらな」という意味の言葉で、グイード・ダレッツォさんが作ったイタリア語に由来する「ドレミファソラシド」の階名とは何の関係もないと思うんだけど、よくできてるよね。

 というわけで、今回は調号について紹介したよ。
 次回は…

質問_2020030515020000

 …あはは、こんなところで質問が入っちゃった。

 そうだね、調号で最初から♯が付いているのに、その音がさらに半音上がったりしたらどうなるのか。そのことを勉強してみようね。

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