ピアノの鍵盤は見たことがある_2019123017320000

第13回 ドレミの感じられる音と感じられない音

📚[📖楽典]楽音、噪音
📚[⌁音響物理学]波形、正弦波
📚[⚡電子音楽]正弦波、合成音声

 音楽の基礎的な用語などがまとめられたものを「楽典」と呼ぶのだけど、これが書かれた本の一番最初には、基音や倍音のことが書かれていたりすることが多いんだ。そして、その次に書かれているのが「楽音(がくおん)」と「噪音(そうおん)」という言葉。
 「楽音」というのは、漢字からも何となく想像がつくかもしれないけれども、簡単に言えば音楽的な音のこと。そして「噪音」はそれ以外の音のこと。うるさい音の「騒音」とは字も意味も違うから注意してね。
 今回はこうしたことについて勉強していくよ。

 今、音楽的な音と言ったけれども、より正確に言うと「音階を感じられる音」のことを「楽音」と言うんだ。じゃあ「音階が感じられる」とは、一体どんな音を言うんだろう。
 例えばピアノの音には当たり前だけれども、ドレミの音階があるよね。絶対音感と相対音感のどっちの音感を持っているかには関係なく、鍵盤をドレミと弾いたら、ほとんどの人は「ドレミ」と聴こえる。これは「ド」の鍵盤を叩いたとき、きちんと「ド」の音が鳴るからだよ。当たり前じゃないかって思うかもしれないけれども、これはじつはとっても重要なことなんだ。

 倍音成分の含まれ方によっていろんな音色が生まれるという話は第11回で説明したけれど、おおざっぱに、この倍音成分が豊富に含まれているほど、音は輝かしい響きに感じられると言われているんだ。具体的には鉄琴とかチューブラーベルのような金属音がそういった音になるよ。

チューブラーベル

 あ、チューブラーベルっていうのは「のど自慢」とかで鳴らす鐘の音、あの楽器のことだよ。

 ところで、2倍音や4倍音といった倍々の数の倍音はオクターブ単位の同じ音だけど、それ以外は違う音だよね。つまり極端な倍音成分の含まれ方をすると、基音の音とは違う音の成分が混じって鳴り響いているということになる。これはわかるね。
 鐘の音なんかは、このオクターブ以外の倍音成分もたくさん含まれていることが多く、だからどことなくドレミとはズレたような音に聴こえたりするんだ。

 そして、純粋な倍音だけではなく、ほかにもばらばらな音の成分が混じってくると、ますます音階が感じられなくなってくる。
 シンバルの音は、鳴らしてもドレミの音階で言ったときの何の音が鳴っているのか、わかりづらい。たぶん、はっきり聴き取れる人はいないんじゃないかな。これは、倍音以外の音もいろいろと混じって鳴り響いているからなんだ。そして、こういう音を「噪音」と言うよ。

 もちろんシンバルにもいろいろあって、高い音の鳴るシンバルもあれば、低い音に聴こえるシンバルもある。これは基音や含まれている音の成分にも、高いか低いかの違いがあるからなんだけれども、それでもやっぱり何の音なのかはわからない。
 逆に言うと、音階が感じられないから、ほかの楽器がどの音を奏でていても、ハモるかどうかを気にせずに鳴らせるわけなんだけれどもね。

 じゃあ、倍音成分がまったく含まれない音、基音だけの音とはどんな音なんだろう?

 じつはそんな音は自然界には存在しないんだ。どんな物でも、叩いたり擦ったりすれば、基音以外の音が鳴ってしまうからね。
 でも電子音ならば、それを再現することができる。そして、その音を「正弦波(せいげんは)」と言うんだ。英語で「サインウェーブ」と呼ぶこともあるよ。
 音は振動で波のようなものだって前に説明したけれど、正弦波の波のかたちをあらわすと、こんな感じになるんだ。高校生以上の人ならば「三角関数のサイン曲線」と言えばわかるのかもしれないけど…、じつは僕にもよくわからないや、あはは。

波形_13_02

 こうした、波のかたちのこと全般を「波形(はけい)」と言うよ。正弦波は波形の中でも特に単純なもので、ただ上下に波を打っているだけなんだ。そして、その波の大きさは常に一定。常に一定だから混じりっけのない音になる。
 ちなみに、この混じりっけのない「正弦波」と呼ばれる音は、少し前の時代まではテレビの時報で聴くこともできたんだけど、今では聴く機会が減ってしまったね。耳の聴力検査で使うピーとかポーというあの音も正弦波。余計な倍音成分が含まれていないから、耳の検査には打ってつけなんだね。

 そして、倍音とは、この「常に一定な波形」に対して2倍、3倍の速さで波を打つ波形のことなんだ。

波形_13_03

 こうした倍音が重なると、波形はどんどん複雑になっていく。この仕組みはちょっと難しいから、まだ説明はしないけれども、例えばこんな感じになるんだ。

波形_13_04

 ここで気付いてほしいのは、倍音成分が含まれて波形が複雑になっても、その波のかたちは周期的だということ。実際の楽器の音の波形はもっともっと複雑だけど、それでもピアノでもオルガンでも、トランペットでもフルートでも、波形はほぼ周期的なんだ。そして、それが人間の耳には音階的な音に聴こえる。これが「楽音」の正体なんだ。

 ということは、「噪音」はそうじゃないということ。つまり、波形はぐちゃぐちゃで周期的ではないということ。
 周期的じゃないから音階的には聴こえない。ザーッていうノイズ音もじつは同じ。音成分が定まっていなくて、だから波形も一定にならないから、人間の耳には何の音が鳴っているのかわからなくなるんだね。

波形_13_05

 というわけで、今回はここまで。「楽音」「噪音」、そして「正弦波」という言葉を覚えたよ。少しずつドレミの音階とは何なのかが見えてきたよね。
 次回もまた、音階について、お話してみたいな。

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